見出し画像

Die Brücke/ブリュッケに寄せて

タイトルにある「Die Brücke/ブリュッケ」とは周知の通り、20世紀初頭、ドイツ・ドレスデンで結成された芸術家のグループである。

「青騎士」と並ぶ、ドイツ表現主義の一つとして知られているが、これまで絵画の世界で通説であった目に映るものを写実的に描く、あるいは19世紀後半から印象派と呼ばれる、外光の元で光や空気の移ろいなどを捉えて描く作風とも一線を画すものである。

表現主義=Expressionism、すなわち内側から現れる感情や情動など内面的・精神的な世界を表現するということであり、作者の私的な感情をその力強い線やタッチ、色彩などで表したのである。また、当時の時代背景から社会への不安・不満などを作風に投影しているのもその特徴である。

「ブリュッケ」のメンバーである、カール・シュミット=ロットルフ、それからエルンスト・ルードウィヒ・キルヒナー、初めて彼らの作品を目にしたのは10年ほど前、ベルリンのブリュッケ美術館を訪れた時である。確かベルリンの中心部から少し離れた森の中に位置するその美術館は、当時凍えるように寒い1月にも関わらず、建物の窓から垣間見える、雪を被った緑が印象的であった。ブリュッケの作品の緑もまた、一度見ると脳裏に焼き付いて離れない、どこか魔力的な魅力を秘めていた。

色彩とタッチ、そこには見るものを圧倒するエネルギーが渦巻いていた。プリミティブなモチーフや色鮮やかさに異国情緒が感じられつつも、20世紀初頭のドイツ社会の混沌やきな臭さも同時にキャンバスに投影されていた。

これは完全に後付けではあるが、最近収集し、オンラインストアに掲載し始めたアイテムたちが図らずもブリュッケの画家たちの色彩やタッチなどとリンクするところが多いのである。「力強さ」、「色彩のダイナミズム」、「造形的な躍動」がどうも私の知覚に働きかけてきているようで、潜在意識に、過去に鑑賞した作品の数々が私にヒントを与えてくれていたのかもしれない。

彼らのように社会に対するアンチテーゼが込められているわけでは必ずしもないが、少しでも固定観念を捨てて、自由な解釈で衣服を身にまとい、物を愛でる、そんなプレゼンテーションになれば良いなという想いを込めて、“Summer Expression-ism”というテーマを掲げてみた。

暦の上ではもう立秋を過ぎてはいるが、心持ちはまだまだ情動的な夏さながらに過ごしたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?