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【町内会 顛末記】自治会長というのをやってみた 10

 今日は仕事で行けないわたしに代わってつれあいが「人権教育推進協議会総会」とやらに参加してきた(午前10時から)。先の「町内会寄付5割強の某神社」の 総会も金曜の夜7時だったけど、地元で自営業でもしてなければ行けませんわ。大体この自治会長の参加は、こんなふうにほぼ「引退してヒマしてるじーさん・ ばーさん」しか出れない曜日・時間帯を設定してくる。

 「で、どーだったの?」とまったく気乗りしない口調でいちおう訊けば、収支報告 と、それから人権ビデオを見る予定だったのが「先の地震のこともあったんで」と急に車座での「地震のときどーだった」話となり、学校管理者やPTAもいた ので「通学路の(学校以外のよそ様の)塀もチェックして欲しい」と保護者から要望が出たり、よく分からない集まりだったと。

 ところでこのときにうちの隣町の「自治会長エリア長」みたいな人から薦められて、つれあいが役所でもらってきた自主防災組織の「災害時の避難行動要支援者名簿」。つまり町内でヘルプが必要な人の個人情報なわけだけれど(高齢や障害、病気等で避難が困難な人。ちなみにうちの娘も以前、この情報を民生委員さんに提出してい る)、これの取り扱い規則がじつに面白いので、この乾いた笑いをぜひ多くの人と共有したい。

ここから寸劇(のつもりで)

 まずこの大事な個人情報の保管場所は「自治会館内スチール机引き出し」でしっかり「施錠して」、鍵は「自主防災会会長が保管」する。さて巨大地震がだれも予測していない頃合に突然、やってきた。(以下、面倒臭いので台詞のみ)

「わー えらい地震や。あちこち倒壊しとる。こりゃ、えらいこっちゃ」
「お父ちゃん、自主防災会会長でしょ。はやく「避難行動要支援者」を助けにいかなきゃ」
「お、そやった、そやった。鍵、どこいった?」
「そんなん、家ん中、これだけぐちゃぐちゃなのに、どこへいったか、分からへんわ」

 しまった。話が終わってしまったぞ。

 何とか散乱した家財の中から奇跡的に鍵を見つけ出して、自治会館へたどりつき、これも奇跡的にぐちゃぐちゃになった中で横倒しになっているスチール机の引き出しを開けて無事、「避難行動要支援者名簿」を取り出したとする。

「おお、山田さんも来てくれはったか、ちょうどいい、あんたの担当はこの家だわ。ここ、この紙を折った表面だけ、見てな」
「会長さんの指が太くてよう見えませんわ。どれどれ、ああ鈴木さんのおばあちゃんか。ほな、行ってきますわ」
「会長さーん。わしもたしか救出担当者だったわな」
「よう来てくれた。佐藤さんか。あんたんとこは、ここ、この紙を折った表面だけ、見てな」
「あー 富田さんとこのじーさん。去年、亡くなりましたよ。」
「あれ、そうだったかな。ところでもう一人の救出担当者、3班の加藤さんが来ないんだが」
「加藤さん、娘さんの結婚式で、たしかいまごろグアムですわ」
「あ、そやった、そやった。じゃ、佐藤さん。加藤さんの担当の家を代わりに見てきてくれはらへんかな。」
「ええですよ。はよ、行ってやらな。どのお宅ですか」
「えーっと、ここ、この紙を折った表面だけ、見て。いや、イカン! 「救出担当者には担当する名簿登載者の情報のみ閲覧するもの」と定められている。あんたには見せられんわ、やっぱり。」
「でも担当者がグアムなんですよ」
「いや、イカンイカン。グアムだろうとサイパンだろうと、これは「個人情報の取り扱いに関する協定書第3条第4項」にきちっと定められておる。見せるわけにはイカン。イカン。わしはぜったいに見せんぞー」
「どうせ、島田さんとこの車椅子の息子さんでしょ。難儀してはるだろから、ちょっと行ってきますわ」
「イカン、イカン。コラッ、行ってはイカン。わしが見せてないのだから、行ってはイカンぞー おーい。もどってこーい。」

寸劇、終わる


 というわけです。こんなもん、真面目な顔してつくって、配布して、平気な顔しているわけで、相変わらずアホですな。

 鈴木さんとこのばーちゃんと、富田さんとこのじーちゃんと、島田さんとこの車椅子の息子さん。みんなで何かあったら、行ける人でいいから頼むな、でいいじゃない。

 ※関西弁はテキトーです。すみません。

補足の説明

『避難行動要支援者の避難行動支援に関する制度』という舌を噛みそうな制度については「東日本大震災の教訓として」「平成25年の災害対策基本法(昭和36年法律第223号)の改正により」、避難行動要支援者名簿を作成することが市町村の義務とされ、また個別避難計画の作成が努力義務化された。

 以下に内閣府のサイトにある『避難行動要支援者の避難行動支援に関する制度的な流れ』というすでに舌を相当噛んでいる説明があるので、詳細はこちらを参照されたい。要は災害発生時に地域の手助けが必要な弱者の情報を、市と協定を結んだ自主防災組織が共有するというもので、よく分からないが「自主防災組織には、法律上の守秘義務が課されていないため、個人情報保護の協定を締結した後に名簿を提供することになっている」との説明である。

 前述の「寸劇」は、市役所で作成された『災害時避難行動要支援者 名簿活用の手引』にある協定書の記載例を基に書いたものだが、かように行政の出してくるものは形式ばって実用に難がハテナが付くため、それはそれでとりあえず提出したものの、もうすこし使いやすい要支援者名簿を別仕様で作成し各戸に記入してもらい、『災害・緊急時リスト』としてまとめた。

 75歳以上の高齢者と障害などの要支援者を色別に分けてヴィジュアル的に分かりやすくした町内マップも作成したが、ほとんどの家が該当者だらけだ(笑)

エクセルでつくった「災害・緊急時リスト」

以下の内容で、連載を予定しています。
第一部 【町内会 顛末記】自治会長というのをやってみた
第二部 【町内会 顛末記】町内会を殲滅し廃墟の中から真実の自治組織の出現を待とう
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