あの夢は今も続いていますか?
追いかけた夢を叶えることができた人はどのくらいいるんだろうか。
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学生の頃、友人とよくライブに行った。
ライブといってもプロのライブではなく、地元のアマチュアバンドがいくつか集まって行うようなライブだ。当時は小さなライブハウスや楽器屋の4階ホールでよく開催されていた。
バンドをやっている知り合いや先輩から「ライブのチケット買って~」と声がかかる。誰かのファンというわけではなかったけれど、ただライブハウスの空気が好きだったわたしたちは、喜んででかけた。
オリジナル曲を演奏するバンドもいたけれど、コピーバンドが多かったように思う。いわゆるバンドブームの直前で、とにかくバンドが多かった。たまに見かけた長渕を熱唱する人は、歌も喋りもうまくて客席をわかせていた。
わたしが何度か通ったライブの中で、やたらと完成度の高いバンドに遭遇したことがある。彼らはオリジナル曲を歌っていて、固定のファンも多かった。ソロライブもやっていて、デビューの声がかかっているといううわさも聞いた。
特に追いかけたわけではないけれど、やはり聴いていると楽しくて、そのバンドのライブはテンションが上がった。
社会人になってすぐ会社の人たちと飲みに行ったとき、盛り上がった他部署の先輩が急に歌い始めた。ほとんど話したことのない先輩。酔っているはずなのにやたらと歌がうまい。どうやら趣味でバンドを組んでいるらしい。
それにしてもうまい。ん…この声は…?あれ…?
そう、彼はわたしが何度か遭遇して少しテンションがあがってた、あのバンドの人だった!バンド名は知っていたけれど、後ろの方で楽しんでたからメンバーの顔なんて覚えてなかったし、もちろん名前も知らなかったのだ。
「ああああ、ライブ見に行ったことありますあります。〇〇さんのバンドと一緒に出てましたよね!!」
…いけない!あわあわしてしまった!!もう完全にヤバイファンがバンドマンに必死で話しかけている図である!!
特に気にせず普通に話してくれた先輩には感謝しかない。おそらくこういうやつには慣れていたんだろう。
ライブの話や共通の知り合いのこともあって、話は弾んだ。
仕事ではほとんど関わることはなかったけれど、その飲み会以降、社内ですれ違うたびに少し話をするくらいには仲良くなった。
それから半年ほどして、先輩は会社を辞めた。上京が決まったのだ。
デビューのうわさは本当だった。
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その後、彼らが本当にデビューしたのかはわからない。
インターネットも携帯電話も普及していない頃だ。音楽雑誌にも載っていないデビュー前のバンドの情報など全く入ってこなかったし、仲のよかった同僚にもその後の連絡はなかったらしい。
音楽が大好きでただただ夢と希望に満ちあふれていた彼は、あれからどうしているんだろうかと、ふとたまに思う。
追いかけた夢はどうなったのだろうか。
今も音楽に携わっているんだろうか…。
あの日、最後にみんなで飲んだ夜、ギターを片手に作ったばかりの曲を披露してくれた彼は、本当にかっこよくて輝いていて。
小さな居酒屋がライブハウスと化して、他のお客さんも巻き込んで盛り上がった。
彼の歌を聴きながら泣いたあの日のことは、今でも忘れられない。
大きな夢を追いかけるにはかなりの勇気と覚悟が必要だったろうと、今ならわかる。
いま、わたしは文章を書く仕事をしている。やるぞ!という意気込みで始めたわけではなく、何となく進んでたどり着いたのがたまたまWEBライターだった。
けれどふと思い出したことがある。授業中も夜中もひたすら本を読んでいた学生の頃、ぼんやりとではあるけれど、いつか書籍や文章に携わる仕事がしたいと思っていたんだ。
もしかして少しだけ、ほんの少しだけ近づいているんじゃないだろうか。
文章を書くことは好きだったけど、自分が文章を書く仕事をするなんて思ってもいなかった。0から1を生み出すのは得意じゃなかったし、今でもやっぱり無理だって、向いてないんじゃないかって思うことばかりだ。
でも、ほんの少しでもいつか見た夢に近づいているなら、もう少し頑張ってみてもいいんじゃないか。
あの日の彼のように、夢にむかって全力で走り出す勇気はないけれど、ゆっくりと歩くくらいなら。それくらいの覚悟なら。
なんてちょっと思ってみたりしている。
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