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「3.11」 と わたし Vol.15 元ビジネスマン、私の週末いいたてライフ

認定NPO法人 ふくしま再生の会 小原壮二さん

震災から10年の節目、
飯舘村に様々な立場から関わる人々が語る
自分自身の10年前この先の10年

今日の主人公は、会社を定年退職し、NPO法人ふくしま再生の会として飯舘村に通う、小原 壮二(おばら そうじ)さん。

趣味は山登り、若い頃はヒマラヤの7000m級を日本人初登頂。
測定器を担ぎ村中歩き回って、今や放射線の測定も手慣れたもの。
村の人や研究者と一緒になっていろんな実験をしたり、
ドローン飛ばして撮影したり、
近年は毎週末、神奈川から飯舘に通い、せっせと葡萄畑の世話をしています。
次はヤギとか飼えないかなあ、なんて、夢が広がる今日この頃。

淡々と、きびきびと、生き生きと、ワクワクと。
自分の楽しみがどこかの誰かの役に立ってる。
小原さんの週末飯舘ライフ。


”お役に立てる“モチベーション


ホームワーク・フレックスタイムで仕事をしていたので、東北大震災が襲って来た時は近くのスポーツジムで、ランニングマシンの上を走っていました。
目の前に据えられたテレビの画面には、国会中継の様子が映し出されていましたが、急に天井のシャンデリアが大きく揺れて、議員さんたちが右往左往し始めました。
そのうちにこちらも激しい揺れで、走ることが全くできなくなりました。
海から濁流の様に流れ込む水に、次から次へと家や自動車が流されて行く有り様、福島第一原子力発電所の水素爆発の有り様を、なすすべもなくテレビの画面にジイッと見入っていたことを思い出します。
ただ、当時は正面から震災に向き合う、ということはなかったです。

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それから2年経った2013年の春に会社勤めをリタイヤしましたが、ふくしま再生の会で活動していた大学山岳部の先輩の紹介で、再生の会に入り活動を始めました。
当時から高エネルギー加速器研究機構や東京大学大学院農学部などの協力を得て、高性能な放射線測定器と、GPS・地図データが連動した放射線測定記録システムが、再生の会には備わっていました。

また放射能濃度の測定は、そのサンプルを東京大学内で活動していたふくしま再生の会の“サークルまでい“に送れば、1週間後にはその測定データが表示記録されるシステムも備わっていました。
それで、私は放射能・放射線についての知識は全くなかったのですが、放射線量計を携えて村の中を動き回り、また必要なサンプルを採取すれば、それらの測定データが得られて”お役に立てる“、というモチベーションで、とにかく村内の道路や田畑・山林を走り・歩き回りました。

2017年3月に飯舘村に出ていた避難指示が解除され、徐々に村民が帰村し始める前後から、放射線や放射能の情報も日常的に入手できる様になったせいか、モニタリングの必要性も徐々に低下して来たのかなと感じました。

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ふ〜っと見上げると


村民のサポートとは別に、自分達で何か直接再生に繋がることができないかと考え、2年前からワイン用のブドウ栽培を始めました。
現在、佐須行政区の滑と佐須で二つの畑で、僅かですが300本のブドウの苗木を育てています。
自分の好きなもの、食べたいものを、種や苗から育てる。
夢、と言っては大袈裟ですが、飯舘の地を借りて自分ができることをやっています。

2年の短い間でしたが、多くの方達のお陰様でここまで来ることができました。
飯舘村の帯広畜産大学の卒業生の方達の伝でお会いできた、
十勝ワインで有名な帯広池田町のブドウ酒研究所の方達、
同じ福島県でワイン作りを震災の年から始めている東和町の「ふくしま農家の夢ワイン」のみなさん、
山形南陽町の苗木屋さんの「菊池園芸」の方達、
再生の会の仲間たち、
畑を提供してくれている菅野宗夫さん、菅野芳子さん、
そして、毎週の飯舘通を黙って見ていてくれるかみさん、ありがとうございます!

昨年は天候不純で、長雨の後に苗木に病気が出てしまい、畑で作業をする度に憂鬱になってしまうことが続きました。
でもその年も終わり、今苗木は冬眠中ですが、寒さの中に少しずつ暖かさが加わって来て、育ったツルの所々に新芽の気配が感じられる様になって来ました。
早く新しい芽が出てこないかな〜って、ちょっとワクワクしています。
畑作業の合間にふ〜っと見上げると
青い空、白い雲、たおやかに続く山々を見て、
何か身体の中から自然な身震いが湧き起こって、
スーっと甦生される様な時が、本当にたまにだけど、あります。

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美味しいワインと私の夢!


飯舘村も、発酵作用を用いて醸造を行って来た、昔からの歴史をお母さんたちが受け継いでいて、そんなお母さん達と若い人たちが一緒になって、今年もワイン造りに一所懸命!
飯舘の凍み料理に合った美味しい白ワイン、
飯舘牛に合った美味しい赤ワインをみんなで楽しめたら夢の様。
その輪の中に自分も居たら、夢のまた夢!

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関連リンク
http://www.fukushima-saisei.jp/
https://www.facebook.com/FukushimaSaisei

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