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約束はしないけど

毎年、父と初詣に行くと、必ず会う父の古くからの友人がいる。まるで約束をしているように会うが、行く日にちも時間も合わせていない。元旦に行く年もあれば、二日か三日に行くこともあるけれど、必ず会う。同じ街に住んでいるのに、お正月以外ではすれ違うこともない。なんとも不思議な縁だけれど、私はそれを毎年密かな楽しみにしていて、それはきっと、父も、父の友人も楽しみにしていることだろう。

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水で洗ったような、世界に人間がほとんど残っていないかのような冷たい街をフラフラと歩いている。耳が切れそうなほど寒い。私たちはどこへ向かっているのだろうか、などと哲学を考えるにはうってつけの空気。こうして歩いているうちに、またすぐに年末年始がくるのだろうという安心と途方もない繰り返し、私以外はきっと目まぐるしく変わって行くであろう不安と、それを眺めることの楽しみもあり、一歩ずつなぜか軽やかになって行く。

約束はしないけど、きっと何かが巡ってくる。そういう人間の不思議な能力を感じる街で生まれた私は、今日もまた行き当たりばったりの人生が始まった。約束は守ることではなくて、私が勝手に信じたい約束を信じることなのかしらん?

改めまして、あけましておめでとうございます。

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