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シェアしたくない共感できない

彼女は古本屋で外国語の本を手に入れては、その本の気に入ったページを綺麗に切って、メモ帳や便箋として使っていた。その行為を初めて見たとき、非常に驚いた。だって本がとても勿体無いと思ったから。本を破って、それに何かを書くと言うことが、良くないことに思えた。罪深いような気がして、私には決して出来ない。

「それ、すごく勿体なくない?」

「そう?一人で持ってるよりシェアしたほうが良いかなって。どうせ古本屋の隅にいるくらいなら、私は誰かと共有したいかなって。…でもまあ、変だよね。」

確かに古本屋はもともとシェアする文化だし、そういうのもアリなのかなあ。誰かが読んだ本を、また誰かが買う。それをさらにシェアする彼女の行動に、とてつもなく納得したのであった。

ということで、私も彼女を見習って、一冊だけ英語の古本を買ってみた。英語の可愛い絵本。でも私は英語が理解できなくて、眺めてるだけ。彼女の真似をしようと思ったけど、私にはやっぱり勿体なくて、たまに眺めるだけ。私の部屋から出ることのないその絵本は、本棚の隅にすっかり収まっている。

私はあんまり、シェアしたいと思ってなかったらしく、彼女に共感できないのであった。でも別に、彼女も共感して欲しくてやっているわけではなかった。そうしたいからそうしてるだけ。私たちは誰とも同じ価値観を持っていなくて、誰かに理解されたくてやっていることなんて、何一つなかった。

彼女からもらった、お手製の古本便箋で書かれた手紙を、私は部屋にマスキングテープで貼って飾っている。なぜなら、私一人に向けられた彼女からの大切な手紙だから。

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