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セルフ映画二本立て上映を試みる『透明人間』『WAVES』

イオンシネマで「ワンデーフリーパスポート」なるキャンペーンを実施している。

7月いっぱい、2,500円で一日映画見放題という、コロナ禍で経営難であろうシネコンのGOTOキャンペーン。
しかもドリンク飲み放題付!魅力的すぎる…

私も7月初頭からあれこれタイムスケジュールを組んでいた。
ただ自宅から電車で1時間程度かかる距離にあり、ここ数週間の感染者数の増加に伴い、家族の目も厳しくなり…二の足を踏んでいたところ、見たい映画がどんどん終わっていく…


ならば近場の劇場でセルフフリーパスポートをしようではないか!
(ただ通常価格で映画をみるだけ)

すると109シネマズでU-NEXTの無料登録をすると映画一本分がタダになるという。
来月は夏季休業もあるし、登録して二度おいしい。
映画二本でポップコーンを買っても、イオンシネマと同等くらいになる。

…とそのまま登録すればよかったが、U-NEXTのHPから申し込むとこのキャンペーン対象外だったようで、結局多少の割引が効いた程度であった…


とはいえ、『透明人間』と『WAVES』はどうしても観たい。
背に腹は代えられないと劇場に向かうことにした。


実践!セルフ二本立て上映

一本目は『透明人間』と決めていた。
ホラー映画は後を引くし、退館後、夜の闇のなか帰るの怖いじゃん。

劇場も徹底した感染対策をしており、座席もひとつとびになっていたが、
『透明人間』はひとり客が多く、ちょうど中段の席を一人占めできた。

ここのところ、後方席で見るとどうしても没入感がそがれてしまうので、中段の中央席がゲットできるなんて幸福至極!
とにかく『透明人間』は音響効果が恐怖を増幅させる。
没入感のある座席と劇場でしか味わえないサラウンド。
(※あまりの相乗効果で劇中何度も逃げ出したくなった)


続いて『WAVES』。

『透明人間』の出来があまりにも素晴らしすぎて、もうこれで帰ってもいいかな?とも思ったが、今日はセルフ二本立て上映と決めたんだ。

それに、「プレイリストムービー」と前評判がある。
これを逃したら、また公開終了してしまうかもしれないし、劇場で絶対見たい。

と、ギリギリまで悩んだ結果、座席数が残りわずかになってしまった。
できれば『透明人間』と同じように没入感を味わいたいので、残っていた前段の席を取った。


しかし!近すぎてしまった…

ちょっと画面の色身が変わってしまっている…!
『WAVES』は音楽だけでなく、映像美も楽しみたいところだったのに。

どうやらカップルの観客が多いようで、満席とはいわないまでも席の埋まりが早かったようだ。

(畜生…!リア充どもめ…!爆発しろ!)

と思いつつも、自分の責任ですし。
そんな八つ当たりをしていたら『WAVES』の劇中でリア充が爆発してしまった。申し訳ない。。


思わぬ共通点のある二本だった

『透明人間』、『WAVES』ともに見ごたえのある内容だった。
この時点でセルフ二本立て上映をしてよかった…と満足だったが、この二本、図らずもたくさんの共通点があった。


共通点① 支配的な男性の存在
『透明人間』では透明人間のエイドリアン、『WAVES』ではテイラーとエイミーの父親。
どちらも家族を”家族”という名のもとに支配している。
いわゆるモラハラ夫というやつだ。
特に『WAVES』の父親は『葛城事件』をも想起させた。

そして、その影響はまずは妻ー女性に向けられる。
直接的な暴力だけでなく、キャリアの構築を阻まれたり、性的にも弱者として扱われる。
その果てに、彼らの子どもたちへもその影響が及んでしまうのは仕方のないことなのだ。


共通点② 女性への社会的抑圧
『透明人間』の素晴らしいところは、その恐怖描写もさることながら、現代でもなお女性が抱える問題を抉り出したことだ。
同じく『WAVES』もその試みが感じ取れる。

ちょうど鑑賞前にTwitterで韓国のWEBドラマが話題になっていた。

「妊娠したかもしれない恐怖」というのはセックスに付きまとう。
「男性だって同じでしょ?」と思うかもしれないが、まず最初に妊娠に向き合うのは女性だ。
生理なんてサブスクでもあるまいし毎月遅れたり早まったりする。
その度に「妊娠したかもしれない」「どうやって子供を育てよう」「学校・仕事はどうしよう」「彼はその時どうするだろう」…

妊娠以外にも、二作とも全く異なる表現ではあるが、現代的視点で女性に関する問題を提起していた。


共通点③視線の行方

主人公・セシリアの愛称が「シー=SEE」であるように、『透明人間』は”見えざる視線”の表現が卓越していた。
異常な愛情のまなざしが、そこかしこで、じーーーっと見つめてくる。
見つめ返すことはできない、相手は”透明”だから。

一方、『透明人間』のように狂気的なものではないが、『WAVES』でもこの視線が重要になる。
特に、今まで「愛情」で支配してきた父親は、試合中にケガをしてしまうテイラーと目をそらしてしまうシーンは思わず涙がでてしまった。
大切な一瞬だったのに、するっと手を放してしまった。

二作とも、最後にその「視線」を交わすことで、ひとつの結論を見出す。
俳優たちの確かな演技もあって、この視線の行方が象徴的になっていた。


共通しつつも対照的な結末

他にも細かい共通点はあったが、この二作のベクトルは全く異なる。
とはいえ、それぞれ良作でいい時間を過ごせた。

特に『透明人間』は一人で見るにはSAN値をゴリゴリに削られるので、『WAVES』を後から見て正解だったよ…

一日に映画館で二作以上みるのは何年振りだろうか。
昔はシネコンなんてなくて、ぽつんと小さな劇場でアニメ映画を三本立てで見たっけな。
最後に見たのは『名探偵コナン』と『スパイダーマン』だった気がする。

コロナの影響で新作映画が軒並み延期しており、公開されるや否や観たい作品ばかりで困ってしまうほどだ。
とはいえ、興行収入の打撃は計り知れない。
感染予防にはよくよく注意して、引き続き劇場に足を運ぼう。

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