少年合唱のすゝめ
知り合いに「少年合唱団のコンサート行ってくる!」と言うと、100パー「ウィーン少年合唱団の?」と返ってくる。少年合唱団=ウィーン少年合唱団とステレオタイプがある方も多いのではないでしょうか。
筆者は随分と前、そこら界隈でブログを書いていたのですが周りのファンの方との方向性が合わず、ファンを辞めてしまった過去があります。今回はそんな私がまだ”少年合唱”というゾーンに足を踏み入れたことのない方に、この記事を通して少年合唱の魅力をお伝えできればと思います!
そもそも少年合唱とは....?
少年合唱団は非常に長い伝統を遡ることができる。中世・ルネサンスの聖歌隊や礼拝堂がその根源である。とりわけ教会においては、一部は19世紀になるまで女性が歌うことが許されなかったため、少年たちが音楽活動を引き受けてきた。それゆえこんにちの少年合唱団も伝統的に、典礼音楽や教会での演奏と深く結びついている。 出展:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%91%E5%B9%B4%E5%90%88%E5%94%B1
女性が歌うことが許されなかった時代に、教会で代わりに神を讃え歌うことを担ったのが変声期前の少年達だったのです。声変わり前の少年の歌声は女性の歌声とも違う透き通った声で、「天使の歌声」と呼ばれるほど神秘的で聖なるものであったとされています。
少年合唱団はそんな変声期前の少年たちで構成された合唱団であり、古くは13世紀から続いているところもあります。(昔はその歌声をキープする為に、去勢というものがありましたが、今は一切ございません!!)
となると、声変わりしたら合唱団は退団させられるの?と考えられがちですが、現代の少年合唱団(ウィーン少年合唱団筆頭に)では学校も兼ね備えているところが多く、変声後の少年も歌えるように低音パートがあるところがほとんどです。(声変わり自体は人種や、体格によっても異なるためだいたい12~15歳の間に起こる子が多い様です。)
※例外として伝統的な聖歌隊、イギリスのキングスカレッジ聖歌隊等は8歳から13歳(変声期前)を入隊条件としており、13歳になったら除隊。低音パートはケンブリッジ大学の学生が務めています。
じゃあ、実際少年合唱団ってどれくらいあるの?
結論:全世界にあります。
メキシコ、アメリカ、日本、スペイン、南アフリカ、オーストラリア等至るところにあります。特に盛んと言われているのが、ウィーン少年合唱団を抱えるオーストリア、教会専属の少年聖歌隊が多いイギリス、そして世界でもトップレベルの少年合唱団、聖歌隊を複数有するドイツでしょうか。
具体的にどんな少年合唱団があるのか、上記3カ国の有名な合唱団を紹介していきたいと思います。(簡単に独自の評価も付けてます)
オーストリア:ヴィルテン少年合唱団
先でご紹介した、ウィーン少年合唱団の基礎となった少年合唱団です。ウィーン少年合唱団はヴィルテン少年合唱団のメンバーで新しく作られた少年合唱団で、なんとその歴史は13世紀にまで遡ります。ヨーロッパでも最古と言われており、今でもその歌声のレベルは世界的に評価されています。ウィーンとは反対側のインスブルックを本拠地にしています。
ヴィルテン少年合唱団の歌声は統一されており、オーストリア民謡などが拍の強い歌が多い為力強さもあります。
(歌声の)力強さ:★★★ 透明度:★★
イギリス:ケンブリッジ大学キングスカレッジ聖歌隊
イギリスでは”オックスブリッジ”と呼ばれるくらい有名なケンブリッジ大学のキングスカレッジ(学寮)のお抱えの聖歌隊です。設立は14世紀で、クリスマスにはBBCというイギリスの国営放送で、彼らのクリスマス礼拝の様子が放送されるので知らない人はいないんではないでしょうか。彼らは毎日礼拝の時間に歌う為、レベルが高く国内外でも評価が高いです。聖歌隊員は礼拝の傍ら、キングスカレッジスクールで学んでいます。
キングスカレッジですが、良く伸びて澄んだ歌声が特徴です。特に、礼拝時はその教会の反響を活かすためにしっかりとしていて、かつ綺麗な歌声が求められます。そのため力強さはありません。
力強さ:★ 透明度:★★★
ドイツ:聖トーマス教会聖歌隊
あのバッハも音楽監督を務めた、伝統と歴史のある合唱団です。本拠地はドイツのライプツィヒにある、バッハが眠る聖トーマス教会です。もちろん、バッハの曲を得意としており、特に12月に歌われる「クリスマス・オラトリオ」のコンサートは国内外からの人気も高くチケットもなかなか取れません。
ドイツの合唱団はバッハのモテット等、強弱が激しくかつ長い曲を歌いあげないと行けないため、相当訓練を積んでいます。そのため、力強さはもちろん綺麗に歌いこなさないと行けない場面でもその力を発揮するので、オールラウンダーだと思っています。
力強さ:★★★ 透明度:★
以上、3つをご紹介しましたがこの3つだけ知っていてもだいぶツウですよ!
でも、宗教曲ばっかでとっつきにくいんだよなあ...
という方にはこちらの方々を。
イギリス:リベラ
多分少年合唱にハマった方の半分以上のきっかけになったであろう、イギリスのボーイソプラノユニットです。独特なPV作っちゃうあたり、ちょっと違います(笑)。元々は聖フィリップス聖歌隊を基にしておりますが、歌っている曲はプロデューサーのロバート・P氏が作曲した曲がメイン。イージーリスニング系の曲が多いので、初心者の方でも聞きやすいです。
また、コンサートでも曲ごとにフォーメーションがあったり、衣装が白いワードローブだったり、それぞれ違う歌声の子たちを集めてこの様な綺麗なハーモニーを奏でているという面では、少年合唱団と位置付けるのはちょっと違うかもしれませんね。現在も毎年日本でコンサートを行っています。個人的に一番お勧めのCDは「Peace」です。
リベラの歌声の特徴はその透明度であり、誰もが「天使の歌声」と例えるくらいの綺麗な歌声です。逆に強さを求める曲は苦手な傾向です。はかなさを求める人にはぴったりです。
力強さ:★ 透明度:★★★★★★★★
イギリス:Choir Boys
何故かこういうユニットはイギリスが多いのです。こちらは各聖歌隊のトップソリストをそろえた期間限定のユニットです。CDは1枚しか出ていませんが、ポップスや宗教曲も現代風にアレンジされており、手を出しやすい作品になっています。2枚目のアルバムは新たに別のソリストを集めて結成したものになります。
力強さ:★★☆ 透明度:★★★★★★★
他にもたくさんありますがキリがないので、今回は一旦ここまで。
最後に...
いかがでしたでしょうか。少年合唱の醍醐味とは、聞き比べて自分の好きな歌い方・歌声を見つけること、そして歌を通してその国の文化や伝統を知ることだと思っています。意外と奥が深いんです。
国内でも、ここでは紹介できなかったドイツのドレスデン聖十字架教会合唱団や、リベラ、チェコのボニ・プエリ、ウィーン少年合唱団等は来日の頻度が高いので是非コンサートにも足を運んでみてください。
ご質問や感想等はコメントいただけると大変光栄です。
それでは。
番外編
ドイツにはプロ集団と言われる「テルツ少年合唱団」という恐ろしい少年合唱団もあるので是非。
補足:こちらはモーツァルトの「魔笛」の中のクライマックスに近いシーンで、左の三人の童子は少年が歌うのでいいのですが、右のパミーナ役は通常はプロのソプラノ歌手が歌います。このレベルを歌える子達の集団がこの合唱団なのです....
力強さ:★★★★★★★★★★★★ 透明度:★★☆
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