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純文学に挑み続ける(私と答え合わせをしませんか)

純文学とは何かーこの問いに答えを与えるために、私は小説を書いている気がする。新人賞に応募し続けていると、どうしてもそれらしきものを探り、それらしきものに寄せようと試行錯誤するからだ。文体に凝ったり、具象から抽象をねらったり(またその逆もあり)、人称や時制を駆使したり、人間ドラマを書いたり……挑み方は人それぞれ、そのときどきだろう。
セルフ出版した作品の、とくに『赤いドレスをめぐる、あなたと私の狂想曲』を書いているあいだは、その物語が必然的に要する文体はどんなものになるのか考え、感じ取れるイメージだけを頼りに悪戦苦闘していたように思う。とはいえ、敬愛する「金井美恵子」を意識して、あえて一文を可能な限り長くしてみるのは楽しかった。長いながらも的確な描写を探り、そしてリズムよく読めるよう何度も音読しながら書き進めていた。また、許容されるだろうギリギリまで漢字を平仮名にひらいたのは、幻想や妄想(小説世界の登場人物たちは、そう思っていないだろうがww)の雰囲気をかもし出すためでもあった。企みを評価していただけたのか、運がよかったのか、新潮新人賞の二次通過(最終候補作を選ぶ15作品中に残った)を果たせたのは大きな成果だった。何より、小説を書くことに立ち向かう主人公に自分を重ね合わせ、書いていてとても楽しかったのを覚えている。

(表紙だけ新しいデザインにしてみた。内容に更新なし)↓↓↓

同時に収録した『鳥神奇譚』は群像新人文学賞三次通過を果たした小説だ。群像の場合は選考段階が新潮よりも細かいので、四次選考まで行ったとはいえ、そこまで絞られたとは言えない。私はこの作品を紹介する際、手っ取り早く「都市伝説」と説明しているが、実は震災を意識した作品になっている。「大陥没」が起きて泣く泣く田舎から都会に引っ越した家族の葛藤の物語なのだ。実生活において、私の息子が高架下に落下した鳩のヒナを拾ってきた(本当なら、親鳥が落ちたヒナにも餌を運ぶため、そのまま放っておかないといけない)ことがあり、まだ頭に産毛が残っているヒナを成鳥になるまで世話して自然に帰した経験が色濃く反映されている。造語も盛りだくさんだし、社会に適応できない主人公の夫の末路を含め珍妙な幻想小説としても楽しんでいただけると思う。

思うところがあり、本の表紙(内容に変更なし!)を新しくしてみた。初版の表紙からがらりと変えて、私好みのものにした。ぜひ手に取って読んでいただきたい。『赤いドレスをめぐる、あなたと私の狂想曲』については、この小説が最終候補へ上がれながった原因(新人賞を獲るための重要な点なのだ!)を私自身推測できているのだが、読んでいただいた方とぜひ答え合わせしてみたい。新人賞に挑む方たちとそういう話ができるのは「小説とは何か、何を書くべきか」という大きなテーマにも繋がると思う。

なお、今年3月には某文芸誌の新人賞に小説を応募した。こちらも渾身の作であり、結果を楽しみに待っている。まだまだ書く。書かなきゃと思えるうちはいつまでも書く。私から小説を奪われたらもう生きられないくらい、小説が好きでたまらない。そうなんです、たぶん狂ってる。


万条由衣


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