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ゆとりのゲーム感想「リズム天国」


【はじめに】


「ゲームって何で面白い?」

ある日の自宅のポストに「GAME ON」というイベントのパンフが挟まれていた。

私が中学から高校に入る直前だった気がする。そのパンフは私にとってとても魅力的で心が揺さぶられるものだった。真ん中には当時話題であった「VRゴーグル」をつけてゲームの新世界を体験しているであろう女性と下の方にはいくつかゲームの写真が載ってあった。
衝撃だったのが、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」、「パラッパラッパー」、「PONG」といったイマドキでないレトロゲームの写真が使われていたのだ。
「これはただのゲームイベントではない」
もうすでにレトロゲームの虜になっていた当時の私は何か尋常ではないほどのワクワクをこのパンフから感じ取った。

そして、下に書いてあったイベントのコピー。

「ゲームって何で面白い?」

私はゲームの神様から問われているような気がした。
お前にとってゲームは何だ。
なぜ、そこまでしてゲームに心血を注ぐのか。
ゲームの何処がそんなに魅力的なのか。

それからゲームのことを考えたりゲームをしている時はその問いが頭の中で反芻するようになった。高校に上がると一時的にレトロゲームから離れてしまったが、それでもゲームは好きだったし、ゲームの面白さを自分の中で噛み砕いて自身に説明してあげたかった。

・・・そして!行き着いた!自分の考え!

「ボタンを押すことの快感」

プレイヤー全員に当てはまる正解ではないが、自分の中ではこれだ。ボタンを押してそれが気持ちいいゲームが私にとって"面白いゲーム"である。この考えが変わることもあるが、今の所はこれである。

そのボタンを押す快感にほぼ特化したであろうゲーム「リズム天国」をクリアしたので感想を述べる。

(ちなみに↑のイベントは行けなかった。友達と行く予定だったのだが、当日ドタキャンされてしまいそのショックで行く気力が湧かなかった。パンフ自体は今でも大事に保管している。)

【ゲーム概要】

「リズム天国」は2006年に任天堂から発売されたゲームボーイアドバンス用ソフトである。2006年というと既にDSが発売されており、本作は任天堂が出した最後のGBAソフトである。

開発も任天堂なのだが、本作の目玉はやはり、かの有名な音楽プロデューサー「つんく♂」が全面的に関わっている所だろう。何しろ、つんく♂が自ら企画書を出したのだから驚きだ。音ゲー自体は当時の時点で、一つのジャンルとして確立されていたが、すでに弾幕のようなノーツを只管捌くだけのゲームとなっていた。これでは真に音楽を楽しんでいないじゃないか!と感じたのか、つんく♂は誰でも音楽にノれて楽しめる本作を提案したそう。任天堂もこのアイデアを快く思い、すぐに開発に取り組んだみたいだ。

以下に、本作の続編である「リズム天国ゴールド」についてのインタビューの記事を貼っておく。本作の開発の経緯についても触れられているので、気になった人は見て欲しい。

前置きが長くなってしまったが、本作についての説明をする。本作はリズムゲームであり、名の通り"リズムに乗る"をコンセプトに遊ぶミニゲーム集となっている。ミニゲームの数は40種類+オマケ。ミニゲームというと、同ハードの「メイドインワリオ」を連想させるが、同じ開発チームが作っている。

遊び方は簡単。

リズムに合わせてAボタンか十字キーを押すだけである。

それ以外のボタンはほぼ使わないものと考えて良い。この単純さが老若男女問わずに楽しめる魅力となっている。もちろん、キモとなる音楽はほぼ全てといっていいぐらい良曲が詰まっている。

ミニゲーム「空手家」
リズムに合わせて障害物をぶっ飛ばす。

ミニゲームの内容はというと、「ネコが何も無い部屋で手を叩く」といったものや、「玉ねぎのヒゲを抜く」という感じで中々カオスだが、気持ち悪いや意味が分からないといった感想が出てこないのは任天堂のセンスが良いからだろう。ゲーム性が単純からなのか、あの手この手で楽しませようとしているのがゲーム全体から伝わってくる。任天堂というと万人が楽しめる作品を作っているイメージが強いと思うが、作品の中では常人には理解できない小ネタやドン引きしてしまうブラックなネタを仕込んだりと中々カオスだったりする。本作はそんな任天堂がギュッと詰め込まれており、ある意味任天堂の集大成とも言えるだろう。


ミニゲーム「リズム脱毛」
玉ねぎに生えたムダ毛をリズム良く抜く

ミニゲームは、一つが1〜2分で終わるものが殆ど。最後にプレイによるリズム感の判定が行われるのだが、「やりなおし」、「平凡」、「ハイレベル」の3つに分かれており、「平凡」、「ハイレベル」だとクリアで次のステージが解放する。しかも、この判定も凝っていて、「やりなおし」でももう少しで平凡に届きそうなスコアだと「でも、ラストはバッチリキメてた!イイトコあるよ!」みたいな判定があったりしてプレイヤーの成長を感じさせるサプライズもある。細かい演出だけど、嬉しいよな。こういうの。また、どうしてもクリア出来ないゲームがあっても大丈夫。メニューでマスターの所にいけば、クリア判定を貰えて次に進めることが出来る。

判定画面。
同じ文言でも微妙に惜しかったのが分かる面白い演出

ステージを進めると、リミックスステージが解放されて、一応ボス的なステージに挑戦できる。そこでは、今まで遊んだミニゲームの操作を応用して新しい曲を遊べる。ここが結構すごくて、つんく♂が張り切ってる感じがビンビン伝わってくる。やってもらわないと分からないと思うが、もうノリノリで音楽を作っているつんく♂の顔が浮かぶんだよ。中にはボーカル曲が入っていたり(GBAなのにだよ?)と気合いの入れようが凄い。同じやつを少し変えただけの手抜きと思えるかもしれんが、違う!音で遊びながら自分がリズムにノってリズム天国の世界に完全に入り込み、もはや自身で音楽を作り出してる感覚すら覚えるのだ。

←が通常、→がリミックスver
操作は一緒だが、雰囲気が違うので
新鮮な気持ちで楽しめる

他にも「ハイレベル」を達成するとコインが貰えて、コインを貯めることによってオマケのゲームが遊べたり、遊ぶことによって「パーフェクトイベント」というイベントに挑戦できたりする。簡単な操作と1ゲームが短いことからの敷居の低い手軽さと何度も遊びたくなるリワードの調整が上手い、任天堂らしいゲームである。

【感想】

本作をプレイしたのは初めてだが、それ以外のシリーズはプレイ済み。私はDSの「ゴールド」とWiiの「みんなの」をめちゃくちゃやってた。私がレトロゲームにハマった理由として世代であるDSとWiiが嫌いだったことがあるが、このシリーズだけは大好きだった。ボタンを押す、画面をタッチするのがこんなに楽しいなんて!と当時感動したもんだ。親にゲームを取り上げられても自分で歌いながら、テーブルを爪でタッチするぐらいだったから親は恐怖だっただろう。そのぐらい好きだった。

今作も自分の中では大当たり。初代ということもあって多少粗い部分もあったが、根幹の「リズムにノってボタンを押す快感」は充分に味わうことが出来た。特にGBAの性能でボーカル曲が入ってるのはやっぱ衝撃だよな。

褒めすぎてもアレなので、個人的に不満な所。まず、チュートリアルが雑い。後の作品では全てのミニゲームにチュートリアルがあるのだが、今作はいきなり始まるものや全然出来てないのに本番に入ったりするのもある。さすがにチュートリアル無しのやつは、すぐに理解出来るやつなのでぶっつけでもいけるが、もう少し練習したいのに、と思っても本番に入るとかがあってもどかしい気持ちになった。チュートリアルは自分のタイミングで中断できるようにして欲しい。

次に、これは全シリーズに言える所だが、全てのミニゲームのお手本プレイを見せて欲しい。ミニゲームの中にはリズムの取りづらいものがあって、何回やってもクリアできない所があったりした。先述したように、クリア判定を貰えば先に進めるのだが、問題はハイレベルに挑戦したい時。これは自力でやるしかないのに、正解のリズムが分からなくてYouTubeでパーフェクトのを参考にしなければならなかった。GBAの性能でお手本プレイを入れられるかは分からないが、今後、新作が出てくる時は合格の基準となるプレイを見せてくれるようにしてもらいたい。

【まとめ】


全体を通して言うと、最後に急に終わったことで微妙に感動できなかった以外は概ね満足である。本当に好きなシリーズなので、再開して欲しいものである。私のゲームの軸となっている「ボタンを押す快感」は今作をプレイすることで分かってもらえるはずだ。







(本作をプレイするには実機で遊ぶしかないようだ。本作をまだプレイしていないレトロゲーマーはプレイしてみてはどうだろうか。)


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