見出し画像

車椅子で役者をやるもの。(seen9新しい出会い)

それから、前職の法人を1年足らずで退職。事業所開所と慌ただしい日々が始まった。事業所を2年で黒字化をすると断言してしまっていたので必死に利用者様獲得に各福祉関係との顔つなぎにと動いた。人工肛門閉鎖の後遺症は思ったよりなく前職を退職したのを何度か後悔したが動き出したものは止められない。退職後、自分の色々な噂が耳に入ってきたりその状況を知人が心配してくれたりもあったが態度で表すしか出来なかった。成功させる事が心配や誤解や迷惑をかけた人達に返す事の出来るお礼だと必死に働いた。

そんな忙しい毎日の中、以前紹介された演劇関係者の方が舞台公演されると連絡があった。なかなかタイミングが合わずお会いする事もなかったその方の芝居を観に行く事にした。

芝居を辞めてから24年振りに観る舞台。久しぶりのその舞台は、当時抱えてる仕事やどうにもならない人間関係のトラブルなど全てのものを一瞬、その舞台の一瞬が忘れさせてくれた。

素晴らしい熱量の素晴らしい舞台。役者1人1人の真剣勝負。

「あぁ舞台ってやっぱすげぇ」

日常から非日常に誘う、沢山の観客の目の前で必死に戦う役者達。息遣い汗までもこちらに伝わる。

久しぶりの高揚感。忘れてた高揚感。やっぱ舞台はすげぇ。完璧がないからこそ必死に演じる役者、受付スタッフ、お客様を案内するスタッフ、ステージ反対側から舞台を支える音照オペレーター。吊るされた照明機材。いくら見ても見飽きなかった。

そうだ。ここが好きだった。この空間が大好きだった。

終演後、演者の方が見送りに出てこられて、その紹介された「はせなかりえ」さんと初めてご挨拶をさせて頂いた。その時は終演後と言う事で少し言葉を交わしただけであったが、この公演のすぐ後、また彼女から連絡があった。嬉しかった。気にかけてくださってた事が本当に嬉しかった。

画像1

次は彼女の管理する小屋で開催されるコンテンポラリーダンスの公演だった。

ダンス公演後、出演者の皆さん、はせなかさんらと談笑の中に混ぜて頂いた。

画像2

楽しかった。楽しくてどうしょうもなかった。この時はせなかさんと芝居について沢山話した。止まらなかった。こんなに芝居の話しを芝居をやっている人と話すのは車椅子になってから初めてだった。

だって、この世界は俺が戻ってこれる筈がないと自分で決めていた世界だったから。戻りたいと思っても戻れる筈がないと思っていた世界だったから。

帰り際、彼女から

「やろうよ、芝居。やれるって」

その時、出来ない、出来る筈がないと決めていた蓋が、開ける音がした。




車椅子の役者、演出家として活動していく事で観る側だけでなく演る側のバリアも崩していきたい。活動にご支援の程宜しくお願い致します‼️