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『漢文のルール』(鈴木健一)

忙しい先生のための作品紹介。第15弾は…

鈴木健一ほか『漢文のルール』(笠間書院 2018)
対応する教材    文法(漢文) 『論語』「矛盾」「五十歩百歩」「推敲」
ページ数      184ページ
原作・史実の忠実度 ★★★☆☆
読みやすさ     ★★★☆☆
図・絵の多さ    ★☆☆☆☆
レベル       ★★★☆☆

作品内容

 漢文を読む上で必要な基礎を一冊でまとめた一冊。前半は返り点や句形などの文法や漢詩について、後半は『論語』や故事成語といった漢文常識について解説されています。参考書ではないので、受験に必要な知識が網羅されているわけではありませんが、「漢文の表現や内容を読解するハードルを下げる」とあるとおり、漢文を勉強する足がかりとなる本です。気になる章を読むだけでも、良い刺激が得られるのではないでしょうか。

おすすめポイント 素朴疑問がすっきり 漢文の理屈がわかる!

 本書の一番のポイントは、漢文学習者が抱きがちな疑問に答えてくれることです。「置き字は読まないのに何故存在するのか」「返読文字は何故返るのか」「疑問形と反語形はどう見分ければよいのか」など、「とにかく覚える」で済まされがちな疑問に向き合っています。そのため、丸暗記ではなく、原理や理由を理解した上で覚えることができます。
 もう一つのポイントは、漢文常識の解説が載っていることです。第8章では『論語』の有名な箇所をいくつか紹介することで孔子の思想を解説し、第9章では「矛盾」「五十歩百歩」「推敲」を例に挙げ、故事成語の元になった故事の内容や、故事成語として成立するまでの過程について解説されています。そのため、文法のみならず、文学史や思想といった側面からも、漢文学習の基礎を学ぶことができます。

授業で使うとしたら

 文法そのものの解説は、正直なところ参考書の方が体系的でわかりやすいかもしれません。しかし、上で挙げたような文法的な「なぜ」に答えている箇所は生徒にも薦めやすいでしょう。例えば返読文字では、物の存在を表すときの漢文特有の表現「存現文」という概念を用いたり、助動詞と述語の語順から説明したりするなど、日本語と漢文の言語の違いに注目して解説しています。ここまでを本格的に授業で説明するのは難しいかもしれませんが、同じような疑問を持った生徒に、必要に応じて提示することで、生徒の好奇心を刺激し、モチベーションを上げることにつながるのではないでしょうか。

【目次】
第一章 返り点、一二点、上下店から始めよう
第二章 置き字を見分けるには?
第三章 返読文字に注意しよう
第四章 再読文字とは何か
第五章 否定形のさまざま
第六章 疑問形と反語形はどう区別するか?
第七章 漢詩のルール
第八章 知っておきたい『論語』のことば
第九章 楽しい故事成語の世界
第十章 中国の地名とその特色

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