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もっと光を、ガムテープを!:発光の不思議②

ガムテープを使って光を出す方法を知っていますか?やると子どもにウケますよ。「ここが犯行現場です」って告げる鑑識、彼らが使っている光を出す方法を知っていますか?やると犯人に迫れますよ。(吉野賢一)

ガムテープで光を出す方法:使用するのは布ガムテープがお勧め。紙ガムテープでは難しい。20 cmほど切ったガムテープを、粘着面を内側にして貼り合わせる。それを持って押し入れなど真っ暗な所に行く。後は暗闇で貼り付いたガムテープを剥がすだけ。剥離される間、剥離面から出る一筋の青白い光を観察することができる。子どもが小学生のころ、実際にやってウケました。最近、笑神様(妻)にやってウケました。

摩擦発光:接触しあう2つの表面が相互に動く際、光学現象(摩擦発光)が見られることがある。上述したガムテープの青白い光(冷光)がこれ。暗闇で岩石や氷砂糖などの結晶をハンマーで叩き割っても同様の発光が観察できるらしい。これは破壊発光とも呼ばれるが、暗闇でハンマーを振るうのは危険なので試していない。誤ってハンマーが自分の指や他人の頭に当たり、指や頭が発光するか否かは不明。頭の場合、目から光(火)が出るかもしれない。ただし、観察できるのは叩かれた本人のみ。もちろん試す価値は無い。

ガムテープでレントゲン撮影:最も権威ある学術雑誌の一つであるNature。その雑誌の表紙に指のレントゲン写真が使われた(2008)。UCLAの物理学者のグループが、粘着テープを剥がしたときに出るエネルギーで撮ったレントゲン写真。ガムテープを剥がすときはX線を浴びちゃうので防護服が必要ということを示唆する!?この実験は真空中で行われた結果ですから心配無用。「真空中で粘着テープを剥がすと、X線領域にまで広がるエネルギーが放出され、それはレントゲン写真の撮影に十分使える強度だった」というびっくり仰天の報告。

医療への応用可能:上述した研究者は「もっとも安上がりなX線生成法だ」と言ったらしい。さすがNatureに掲載される研究はセンスがあるし、研究者の言うことにもセンスがある。発光(ルミネセンス)だけに。将来、病院で「はい、今からレントゲン撮りますね。ガムテープ剥がしますから動かないでくださいね」なんて言われるかも。問題は「真空中で剥がす」のみ。

ルミノール反応:血液などの触媒があると、ルミノール(化合物)と過酸化水素が反応して青白い光が出る。実際に見たことはないけれど、テレビや映画では現場にやってきた鑑識がよくやっている。ガムテープもそうだけど、ルミノール反応も冷光で熱は出ない。犯行現場で熱が出る反応を使ったら、その他の証拠品(DNAとか)が台無しになるし、現場が火事になって大ごと。現場の保全も、鑑識を放火犯にしないことも大切。

冷光の弱点:前回書いた生物発光も、摩擦発光(ガムテープ)や破壊発光(ハンマー)も、ルミノール反応も弱い光しか出せないのが弱点。周囲を照らせるくらい強い冷光が見つかれば・・・それは大発見。「もっと光を!」の叫びが聞こえたら、声の主はゲーテではなく冷光の研究者かも。

余談:高齢になると頭部が発光してくる場合がある(もちろん発光ではなく反射)。自分の後頭部を見て「この発光だけは弱い光のままでいて欲しい」と願うようになった。冷光か、ありがたい霊光でお願いします。「もっと光を!」とは叫びません。


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