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学校のオンライン化を進めるための7つのステップ


学校閉鎖に伴い、これまでのような「学校で生徒が教室の中で一斉に先生の授業を受ける」という状態から、「生徒が在宅でオンラインで授業を受ける」状態への急速な転換が必要になっています。その転換にはいくつかの重要なステップが存在し、徹底的な準備が求められます。

学校のオンライン化は、授業のオンライン化のみに限りませんが、本記事では、実際に多くの学校での授業のオンライン化に携わってきた経験に基づき、どのような準備をしていくと授業オンライン化を成功できるのかについて、7つのステップに分けてご紹介していければと思います。

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ステップ1: 授業を開始するタイミングを決める

ツールの導入や先生方がツールの使い方を学ぶより先に、まずは「いつ授業を開始する必要があるのか」を明確にする必要があります。2週間でやらなければいけないのか、1ヶ月でやるべきなのかによって月次、週次、日次でやること、その速度は変わってきます。オンライン授業化を一つのプロジェクトと捉え、しっかりと管理していくことが重要です。休校対応で慌ただしい中、下記のように数多くのステップが存在するため、迅速な意思決定が求められます。


ステップ2: 授業開始日における理想状態を決める

授業の開始タイミングが決まった次にやるべきなのは、「授業開始日にどのような状態になっていたいか」を決めることです。例えば、ライブ授業を一斉に配信して生徒と同時に繋がれる状態にしたいのか、それとも録画された動画形式で配信し、決まった時間に生徒に各自で見てもらうようにするのか。もしくは、それらを組み合わせ、ホームルームの時間だけはライブで顔を合わせることにし、それ以外は一旦は録画動画配信にするのか。一言で「オンライン授業化を進める」と言っても、その方法はたくさんあります。学校の通信環境、生徒の端末所持率/通信環境などを考慮して決めていくことになります。


ステップ3: 用いるツールを決める

授業開始日にどのように授業配信を行うかが決まれば、次はそれに適したツールを決める必要があります。例えばライブ配信であれば、ライブ配信専用のソフトウェアをリストアップし、その中から機能性・値段・セキュリティ、などを考慮した上で選択します。

ライブ配信の時間割の保護者・生徒へのコミュニケーションにも数多くのツールが存在します。これらのツールは、ただ時間割の連絡がわりに使うだけではなく、保護者との間のオンライン連絡帳としても機能します。

まだ、ライブ配信を録画したビデオや、それに付随する課題を配信するツールもあります。生徒は先生が課した期限・課題範囲に従い、ビデオを見たり、オンラインでの課題に取り組み、提出をします。授業・課題・採点をすべてオンラインで完結できるのがこれらツールの特徴です。

とはいえ、学校によって「どのような授業にしていきたいか」「どのような課題を出すか」は異なります。その方針によってツールは柔軟に決めていくこととなります。


ステップ4: 授業ビデオのストックを作る (ビデオ形式の配信の場合)

ビデオ形式の配信を決めた場合に最も気をつけなければいけない点は、授業ビデオのストックがなくなってしまうことです。学期が始まり様々な業務が増えてくると、時間を確保して授業ビデオを作ることが難しくなります。「明日の授業を今日撮影しなければ」という自転車操業のような状態に陥ってしまうと、授業の質にも負の影響を与えかねません。授業開始日より前に、ある程度の授業ビデオのストックを持ち、余裕を持って継続的にストックを増やしていくことが理想です。

また、先生によっては、何度か授業ビデオを作ったことがある方もいらっしゃれば、これまで一度も作ったことがないという方もいらっしゃると思います。初めての先生にとって、一本目のビデオはなかなか時間のかかるものです。時間に余裕を持って、まずはいくつかビデオを試験的に作成してみることが重要です。これまでサポートさせていただいた先生方は、一度撮ることに慣れてしまえば、そこから先は効率的にどんどん素敵な授業ビデオを作成されています。

ライブ授業の場合も同様に、事前に計画的に準備することが必要です。特に、これまでのような板書形式ではなく、パワーポイントなどの画面共有を行いながら授業することも多くなると思いますので、それらの資料、授業に付随した課題のストックは多く持っておきたいものです。


ステップ5: 先生方へのツールトレーニング

ステップ3で使うツールを決めたら、ステップ4・5は同時並行でも問題ありません。ステップ5では先生方にツールの使い方のトレーニングを受けていただきます。例えばライブ配信の場合、まずオンラインミーティングの設定方法を覚えていただき、また生徒を招待するやり方を学んでいただきます。授業開始までのフローを学んでいただいた後に、次は先生だけが画面に映った状態にするやり方や、私語や個人間でのチャットを制限する設定などを覚えていただきます。

各社ツールは直感的に操作ができるように工夫されていますので、そこまで身構えなくて良いものの、優れた授業にしていくためにはしっかりとしたトレーニングが必要です。コミュニケーション・課題配信のツールも同様に、どのように授業や課題を配信するのか、採点はどのように行うのか、などをロールプレイを通じて学んでいただきます。初めて使うツールに不安はつきものですが、一度使ってみると「意外に簡単に使えるし、便利だな」という感覚を持っていただけることと思います。

また、ただ「ツールを使える」状態から、「ツールを使いこなして最高の授業体験を提供する」状態に高めていくために、継続的にトレーニングをしていく必要がありますし、私たちもベストプラクティスや多くの事例をご紹介していければと思っております。


ステップ6: 生徒・保護者様向けにツールの使い方や授業の方針をお伝えする

当然ではありますが、学校教育は先生が授業を提供して一段落ではなく、受け手となる生徒・保護者様がいらっしゃいます。特に導入時には、生徒・保護者様との丁寧なコミュニケーションが必須です。専用ソフトをインストールしていただいたり、必要なパスワードを入力していただいたりする必要があるからです。先生がツールの使い方を覚えるだけではなく、生徒・保護者様にも使い方をしっかり理解していただくことで、スムーズな授業運営が可能になります。

その際に、登録方法から授業の受講の仕方、課題の提出方法などをまとめた資料を生徒・保護者様に共有することによって、できる限り学校への問い合わせを少なくすることも可能です。


ステップ7: 生徒・保護者様の声を聞き、改善を続ける

ステップ6まで完了し、ひとまずオンラインで授業を配信することができるようになりました。しかし、単なるビデオ配信だと生徒がなかなか集中できなかったり、在宅勤務をされている保護者様の場合、子どものケアを一日中することが難しかったりと、様々なご意見やご要望をいただくことと思います。保護者が一緒に授業を見て、改善ポイントを指摘されることもあるかもしれません。そうした声に耳を傾けながら、よりよいオンライン授業の提供に向けて改善をし続けることが重要です。


まとめ

一口に「オンライン授業を導入する」と言っても、その準備は多岐に渡ります。また、学校での先生の管掌によっても気になる点・注意すべき点は違います。例えば、校長先生や副校長先生、教務主任の先生といった学校全体を統括されている方においては、セキュリティ面などが気になると思います。学年主任・担任の先生においては、生徒が皆平等な環境で授業を受けることができているのか、また日々の授業運営はスムーズに行えるのかなどが気になることと思います。

学校全体で、One Teamとして協力し合いながら授業のオンライン化を進めていくことによって、この感染拡大下における学校閉鎖の中でも、「教育を継続」していくことができると信じております。

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「学校のオンライン移行ガイドブック」 目次

*記事は随時追加していきます。

中国/韓国の休校事情とそれに伴うオンライン教育の活用
学校のオンライン化に必要なツールのご紹介
学校のオンライン化を進めるための7つのステップ
保護者目線での学校のオンライン化
生徒目線での学校のオンライン化 (小学生 / 中高生)
各国の休校措置の現状と出口戦略
After/withコロナの学習塾業界 (寄稿記事)
オンラインでも自主学習を成り立たせるには(寄稿記事)
・After/withコロナ時代の教育(分析編)
・After/withコロナ時代の教育(想い編)
よくある質問集
・その他
     - アメリカ/イギリスの休校事情とそれに伴うオンライン教育の活用
     - 学校のオンライン化において想定される問題と対策
     - 各国政府/文科省の動き
     - ケーススタディ/オンライン移行事例のご紹介
     - インタビュー
     - 日本での休校事情(*定期アップデート)
     - その他各国での休校事情(*定期アップデート)
     - 学校閉鎖が長期化へ向けての準備 (学校、生徒・親、塾)
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