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チームが壁を超えた瞬間。

#サッカーの忘れられないシーン  というと、
以前も書いた、エスパルスがJ1昇格を決めた試合、
2016年11月20日のJ2リーグ最終戦 vs徳島ヴォルティスをおいて、ほかにはありません。

このテーマだと、徳島戦のことをもう一回書きたいくらいですが(笑)、
前回の記事に思いの丈は詰め込んだので、今日は別の試合を。

最近は低迷続きの我らが清水エスパルスですが、
30年弱の歴史上、唯一J2で戦った2016シーズンは、
「戦国」J2を、シーズンのラストを9連勝で飾る怒涛の「まくり」で、
1シーズンでのJ1返り咲きを決めています。

ただ、ここまでに至る過程は決して順風満帆ではなく。
苦しいシーズンだった中でも、
実は転機となるタイミングがいくつかあったような気がしていて。

そのひとつを挙げるとすると、
私も生観戦していたこの試合は、徳島戦に次いで、このシーズン「忘れられない試合」になるんじゃないかと思います。

注目してほしいのが、1:25ごろからのシーン。

不動のエース、FW大前元紀が、クロスボールに競り合った際に、
相手選手に全体重で落下&エルボーされ、無念の負傷退場。
プロレスだってこんなひどいことはしないってくらい、悪意はないとはいえ悪質なプレーでした。

負傷直後から担架で運ばれていくまでの様子から、
既にただごとではないことはひしひしと伝わっていたのですが、
結局、肋骨骨折と肺挫傷という重傷。
3ヶ月にわたる長期離脱を余儀なくされています。

大前の負傷時点で1-0でリードしていたこの試合、
その後はゼルビアに何度となくゴールを脅かされるも、
80分過ぎに北川航也のゴールで加点、終了間際にPKで1点返されるもどうにか逃げ切り、白星を手にしました。

ただ、この試合、勝った後も勝利の高揚感はあまり感じた記憶がなく。
「1勝のためにあまりに大きな代償を払ったなあ…」と、
今後の戦いへの不安のほうが大きかったような気がします。

ただ、この「痛すぎるエースの離脱」が、
結果的にはチームとしての成熟度を高め、
1シーズンでのJ1復帰の足がかりを確かなものにしたように思います。


不動のスタメン、大前元紀が長期離脱した穴を埋めたのが、
当時高卒3年目、前年のJ2武者修行から復帰したばかりの金子翔太や、
ユースからトップ昇格して2年目だった北川航也。

金子はJ1復帰を決めた最終節の徳島戦、
大前に代わって途中出場すると、J1復帰を決める値千金のゴールを決め、
名実ともに「昇格の立役者」となります。
北川もその後清水のエースとして大活躍、ご存知の通り欧州行きを掴み取るまでになりました。


不動のエースが欠けるという、わかりやすすぎるチームのピンチ。
鄭大世と大前という、2トップが半ば固定された状況から、
スタメンの1枠が空いたことで、そこを自分が埋めるんだ!と、
若い選手の奮起が促されて、チーム全体としての力が底上げされた。

正直、あのタイミングで大前が負傷していなかったら、
鄭大世と大前の2トップはしばらく崩されなかっただろうし、
若手選手に与えられるチャンスは限られたものになっていた可能性が高い。

そうすると、シーズン終盤、勝ち星が伸ばせず苦しくなったときに、
停滞した状況を打開するような、若手選手の活躍は見られていたかどうか?
それこそ、あのJ1昇格を決める金子選手のゴールもなかったかもしれない。


選手の負傷自体は決して明るいニュースではないけれど、
あの負傷交代が、ひとつの壁を破り、チームとしてひとつ上の次元へ登っていく、直接的な契機になったように思います。

ピンチはチャンスなんて、そんな簡単に言うつもりはない。
ピンチはあくまでピンチだ。
でも、そのピンチにどう立ち向かうか次第では、結果的にそれがチャンスになることも十分ありうる。

そんなことを考えさせられたこの試合が、
私にとっての #サッカーの忘れられないシーン だな、と思います。

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