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「つなぐ」だけでも、生まれるものがある。

今日はこんな記事から。

どうしても「絵に描いた餅」になりがちな、自治体の総合戦略。
ろくに顧みられない「地方創生」計画のために、地方自治体の予算が都会のコンサルに流出するという冗談みたいな本当の話もままある中で、
いかに計画を実効性ある、意味あるものにするか、というだけでも、
この神山町の取り組みは一読の価値があると思いますが、
個人的に印象に残ったのは、別の部分で。

こうした数々の取り組みを、まちの人たちすべてが自分ごと化できているわけではありません。ですが町民に広く共有するための試みも行われ、手応えが得られたのが、町民向けの町内バスツアーでした。

杼谷さん「たとえば新しい店ができて報道されても、お孫さんから電話があった時に『おじいちゃんは行ったことないから知らんわ』となってしまう。そこでまずは知ってもらう、来てもらう機会をつくろうという話になりました。」

これが予想をこえて評判に。年配者が地区や同窓会の仲間同士で申し込み、町役場とつなぐ公社のスタッフが一日かけて案内します。新しくオープンした店や取り組みを見学し、活動者の話を聞いたり、みなで食事をしたり。

杼谷さん「これがね、伝わり方が全然違うんです。現場を見て、雰囲気を感じて、当事者から話を聞くと。

最初は『移住者が来て何をしよるんやら分からんから、自分の目で見に来た』というような人が多いんです。それが帰り際には、『わざわざ神山に来てくれてみんな一生懸命頑張っとる』『私らより余計に神山のことを思ってくれとるのがようわかった』と。

『また来たい』『自分たちができることはないか』と変わっていきます。」

田舎暮らしを始めて4年ほど経った実感として、
確かに「新しいもの」への温度感って、移住者ともともと地元にいた方で、どうしてもギャップは生まれてしまうものだと思っていて。

新しい取り組みがメディアやSNSで称賛されていて、
いざ現場へ行ってみると、盛り上がっているのは移住者や「ヨソモノ」ばかりで、旧来からそこに住んでいた人は無関心、みたいなことって、
結構あるあるだなあ、と思うんですよね。

その地域やコミュニティの中で根差して取り組みを進めていこうと思うと、
あれこれ根回しやら、各方面への様々な配慮やら、何かと取り組みのスピードは下がりがち。
ビジネス展開としてのスピード感が落ちるのを嫌って、
お店を出すにも地域の商店コミュニティと交わらないとか、
敢えてコミュニティと距離を置く人も時折見かけるし、
経営判断としてはそういうのもありなのでしょうが、
最終的には長続きしないケースが多いのだろうな、という肌感覚はあって、それだとお互いに不幸になってしまう。

そんなときに、この神山町の取り組みのように、
行政が「地域」と「移住者」をつなぐハブになる役割を果たせれば、
受け入れる地域にとっても、入ってくる移住者にとっても、そして両方を抱える行政にとっても、まさに「三方良し」だと思うんです。

そもそも、やり方やスピード感、考え方の違いはあっても、
その地域を良くしたい、という思いは、三者とも同じはずで。
小さな「違い」にとらわれてしまうと、その原点にある思いが同じことなんて簡単にかき消されてしまって、対立ばかりが表立ってしまうのは、本当にもったいない。

やっていることは、人と人を「つなぐ」こと、ただそれだけ。
でもその「つなぐ」ことだけでも、生まれてくるものがあるし、
良き「仲介者」「媒介者」がいる地域は、それだけでも良い地域になってくるのだろうと思います。

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