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日本でコレクティブ・インパクトを次々と起こしていくには? from "Japan Collective Impact Session" in 渋谷(ジャパン コレクティブ インパクト セッション in 渋谷) 〜組織の壁を越えた社会課題解決のアプローチとは?〜

Plug and Play Shibuyaで開催されたコレクティブインパクトに関するイベントのレポートです。

前半戦のまとめはこちら

後半戦はパネルが2本で、1本目のファシリテーターは日比谷さん(コネクタ/株式会社フューチャーセッションズ  Project30 エバンジェリスト)。

日比谷尚武
Sansan コネクタEightエヴァンジェリスト
1999年慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、NTTソフトウェアに入社。2003年株式会社KBMJへと転職し、取締役として開発マネジメント・営業・企画・マネジメント全般を担う。2009年からSansanに参画。マーケティング・広報機能の立ち上げに従事。現在はSansan コネクタ/名刺総研所長/Eightエヴァンジェリストとして活動中。株式会社PRTable 社外取締役、公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会 広報委員、一般社団法人 at Will Work 理事も兼務 〜”未来を変える” プロジェクトより抜粋〜

1.コレクティブインパクト実現の“土台”となるものは?
2.どうしたら「次々と起こせる」か?

という議題について豪華なパネラーの皆さんが話されていました。

最初は駒崎 弘樹 氏(認定NPO法人フローレンス 代表理事)で、

認定NPO法人フローレンス(病児保育・障害児保育や子育て支援・保育)の代表理事でもある駒崎さんは、その中で子どもの貧困や虐待に対して課題感をもち、「子ども宅食」を立ち上げた。また、新公益連盟(NPOや社会起業家のコミュニティ)を作り、全国100団体が集まる場を運営していて、ここでのテーマが「コレクティブインパクト」となっている。

続いて、佐々木 健介 氏(NPO法人ETIC. ソーシャルイノベーション事業部 MG)は2002年から社会起業家の支援に取り組んでおり、プレーヤーが増える一方、問題の設定や先行する団体と新規参入者との組み合わせ方に課題を感じているので、コレクティブインパクト(課題の構造化・データによる共通の理解)をやっていこうと模索しているとのこと。

家入 一真 氏(株式会社CAMPFIRE 代表取締役社長)は、2011年からクラウドファウンディングのCAMPFIREを立ち上げ、その後都知事選出馬やBASE・シェアハウスのリバ邸の立ち上げなどがあり一度抜けていたが、2年前に戻っている。「コレクティブインパクト」という言葉をきちんと理解したのは最近ではあるが、日本のクラウドファウンディングは震災のタイミングで出てきており社会的な活動に対する使われ方によって認知が広がっていることもあり、そういったイメージを持ってもらっている。しかし、本当に社会課題に向き合えているのか?クラウドファウンディングの本質とは?ということへの疑問があり、社内外で再定義しなおしたり、GoodMorningFAAVOなどでの取り組みを開始したりしている。

Q1:コレクティブインパクトを実現するための土台となるものは①弱いつながり②当事者同士の志と相互の事情理解③ディレクションや推進を担う人の存在なのではないか?

日比谷さん:子ども宅食の始まりであった「①弱いつながり」はどういったものでしたか?

駒崎さん:「子ども宅食」は文京区やキッズドアさんなどと共に行なっている。キッズドアの渡辺さんとは新公益連盟で、文京区長とはイクメン区長と呼ばれているためイクメンコミュニティで仲良くさせていただいていたので、プロジェクトが始まるときに個別で話せる関係性があった。事前に人となりや志が分かる程度の相互認知がセクターを超えてあることが大きいかもしれない。

日比谷さん:先ほど起業家とソーシャルセクターとの間にまだ隔たりがあるのではないかという話がありましたが、そのあたりいかがでしょう?

家入さん:まさにETIC.さんがやられている活動がそこになるんだと思いますが、新公益連盟で泊まり込みの合宿があって、それ自体が楽しかった。スタートアップ界隈では長年いて、顔見知りも多くて居心地もいいが、一歩外に出て違う文脈やセクターからの人と話すと知らないことが多いということに気づかされた。誰がどんな思いでどんなことをやっているのか知らなかったし、知りたかった。実際知り合って繋がって、起業系とソーシャル系両方に属してみると、より断絶を感じる。

スタートアップ系のイベントで話されていることとソーシャル界隈で話されていることには実は近いのではないかと思うことも多いし、個別に接点を持つとお互いが興味を持つケースも多いのに、「やっぱりわからない」という感じで隔たりがある。イベントを共同開催するとか混ざり合う場がもっと作れたらいいのではないかと感じていて、それを自分が担うべきなのではないかという使命感も感じる。

日比谷さん:続いて議論したいのが「②当事者同士の志と相互の事情理解」双方のやりたいことと制約や課題を相互に共有することが大事なのではないかということです。データの話がありましたが、いかがですか?

健介さん:いま、若者の就労問題に関連して現場で活動しているNPO8団体と支援をやっているんですが、その中で課題解決に向けて行政や企業との協働が必要だという話になった。お互い良くしたいという思いは同じだが、前提としている考えや立場が異なっているため、いざ一緒に取り組もうとすると共通理解が全然なくて自分たちのできることの提案や意見を出すだけで話が噛み合わないという状況になった。面倒ではあるが先に共通理解を作ることが後々の活動の促進になるよねと話をして、対話の時間を設けた。

ちゃんと課題が可視化されて共通理解を持てるようになってからは、NPOから見た視点とか行政からの視点ということにならないので、どこセクターからアプローチしても共通の目標に紐づいた意味のある活動ができるようになった。①構造の可視化②因果関係の把握ができた結果としてのデータになるといいのではないかという学びになった。

日比谷さん:逆にいうと課題の分析や共有がないままに取り組んでしまうこともあるということでしょうか?

健介さん:それぞれが見ている所の状況の理解とそれに対する取り組みが正しかったとしても、全体を示していないことによって根本的原因ではないところで対処療法的なアプローチになってしまっていることがある。「困っている人がいるからこうしよう」というソリューションありきな動きをする前に全体の構造から捉えることができたらこういったケースは減らせるのではないかと。

日比谷さん:では、こういった活動を次々と起こしていったり、拡大したり、横展開していくにはどうしていったらいいでしょうか?

駒崎さん:まずは「できるんだ」という事例を作ることが重要で、子ども宅食もそうですが、今までの行政のやり方と異なるやり方を「ありえない」と言われたとしてもまずやることによって効果がわかり、追加で区のこれまでの上限額を超えたサポートを受けていくことができるようになったりした。また、事例を作ってできることを見せていくことによって、全国の他エリアから「うちもやりたい」という声が実際に上がってきている。

事例を作って、事例を共有して、「やってみよう」というサイクルを作ることが大切なのではないか。

健介さん:事例を積み重ねていくときに、実証済みなものはどんどん事例を作っていけばいいし、どうやったらいいのかわからないという課題に関してはクロスセクター(NPO/企業/行政の垣根を超えて)で①どういうことが起きていて②自分たちがどこまでできて、どこができていないのか③何をやっていくべきなのかという対話の場を設けて一緒に議論を進めてアクションにしていく必要があるのでは。

家入さん:「僕らのやるべきことはとにかくモデルを作ること」とよく社内でも話している。テクノロジー・インターネットの本質は「民主化」であり、クラウドファウンディングの本質は「資金集めの民主化」だと捉えている。

本来自分たちの身近にあった物事や力が、時代の流れによって距離ができてしまった。それを個人の手元にもう一度戻していくのが民主化だと考えている。最近だと「古民家を改修してゲストハウスにしたい!カフェにしたい!」という人は多いが、地銀がそれに対して融資してもらえることは少ない。じゃあバイトして貯めるかというと時間がかかる。インターネットを使った新しい資金集めができるようになったのがクラウドファウンディング。プロジェクトの件数や集められる合計金額はどんどん大きくなってきているが、その一つひとつを捉えていくと、5万円で個展したいとか10万円でフリーペーパー作りたいという小さな声の集まり。そういった一つひとつが周りに伝播して、声を上げて動いてみようという人が増えていく。そのさきで誰もが声を上げられる世界になっていったらいいのではないか。そのためにモデルを一つずつ作っていこうとしている。

日比谷さん:リソースの課題、課題の理解を促すために、規制やルールのアレンジ、経済的なインパクトや持続性を生み出すための話などたくさん話したいことがあるのですが、時間が限られているので最後の質問へ。

日比谷さん:これからコテクティブインパクト的な活動をしようとしている人にメッセージを。

駒崎さん:子ども宅食について、企業の皆さん食品寄付を求めています。行政の方で自分たちの地域でやりたいという場合はお声掛けください。

健介さん:課題の可視化をしていくことが原動力になると考えていて、そのキーとなる情報を持っている行政の皆さんから現場の状況を知っているNPOや企業に対して対話する際に提供してもらえると、データを見ながら今後の活動が再構築していけるので、是非お願いします。

家入さん:若い起業家70社くらいに投資をしていて、そのとき高校生大学生の彼らに「今僕たちが日本で活動する意味は、社会課題や地域課題、生きづらさに関する問題に直接あるいは間接でも向き合って解決に向かっていくように取り組んでいくことにある。起業かもしれないし今いるNPOや企業の中でかもしれないし、色々な一歩の踏み出し方はあるので起業すれば良いわけではないものの、一人ひとりがその課題や取り組むべきものに向き合って考えて行動すること自体が大切。」と伝えている。

折角ここに来ている皆さんにはまず今日の話を持ち帰ってもらって、何ができるのか、今日から始めてもらえたら。

日比谷さん:3人の話をキッカケに、子ども宅食や社会起業家支援、CAMPFIREといった活動をチェックしてもらったり、話しかけてみたりと次のアクションに繋げていっていただけたら。

豪華なメンバーなのに40分未満という短さでしたが、コレクティブインパクトを実際に仕掛けている皆さんのリアルな声や提案は今後活動しようと参加している人たちに具体的なヒントになることが多く、とても濃ゆいセッションでした。

濃ゆくて面白い活動が渋谷で沢山の起きているのは、こういったハブになる人や組織が点在しているからなんだなと実感しました。

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シビックテックのCode for Japanで働きながら、小児発達領域の大学院生をしながら、たまにデザインチームを組んで遊んでいます。いただいたサポートは研究や開発の費用に充てさせていただきます。