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モノも人も一点もの:再利用を通じた地域づくり@ポートランド(オレゴン州)

起業家都市シアトルと全米一暮らしやすい街と言われるポートランドに社会起業家の皆さんと行って来ました。その時、見聞きしたものをちょこちょこまとめていきます。今回は、ポートランドのリビルディング・センター(Rebuilding Center)のお話。

リビルディング・センターは、お洒落な街並みが見られるポートランドの中でも、独立系のセンスのいい店が立ち並ぶミシシッピ通りのど真ん中にある。

1990年代の後半に、NPOとして立ち上げられたこの組織は、モノの再利用を通じた地域づくりを目指していて、次のようなミッション&ヴィジョンを掲げている。

再利用を通じ、公平でレジリエントかつサステイナブルなコミュニティを構築することによって材料に違いを生み出す。
全ての人々やモノ、特に社会のお荷物と捉えられたり、社会から疎外されがちな人やモノをコミュニティの財産として、敬意を払い、高く評価しようというビジョンに基づいて活動する。

リビルディング・センターの中に一歩足を踏み入れると、その精神があちこちに見られる。

例えば、この引き出したち。タンスか何かの一部であろうが、大きさや形もマチマチ。通常で考えれば、速攻粗大ゴミになる存在だが、壁に棚として取り付けるアイディアが紹介されいて、これが結構いい味を出している。

泊まったハイセンスなエアビーのキッチンの棚も、よく見たら、引き出しだった。チェックアウト時にオーナーに偶然会ったら、自分たちで内装をやったというから、もしかしたら、リビルディング・センターのものを使っていたのかも。

さらに、このエアビーでは、一見、無価値なものが価値あるオブジェになっていたり。何だかわかる?

そう、棚の上にある飾りはピアノの鍵盤の中身。

「役立たず」の烙印を押されがちなものに日を当てるという意味では、人に対して注がれる視線も同じだ。肌の色が違う人、かつて刑務所に入っていた人、障害のある人、移民、難民、ホームレスなどあらゆる人に門戸を開いていて、職業訓練の機会や働き口を提供している。

街の中心地にこうした場所があることは大きい。あらゆる人を排除しないとなると、バックグラウンドが様々な人々がそこにいるわけで、「怖い」「危ない」という声があってもおかしくない。しかし、しっかり地域の一部になっているリビルディング・センターは、その存在自体が、どんな状態であっても「社会から支えられる」「再生のチャンスがある」というメッセージの発信になっていると感じる。

人の手を通って使われたモノは、たとえ大量生産であったとしても、同じものは2つとない。「難民」「移民」「犯罪者」「障害者」と括ってしまうと顔が見えなくなってしまう人間も、当然2人と同じ人はいない。リビルディング・センターは、経済効率の中では見捨てられがちな「一点もの性を大切にする場所」であり、その精神がアートの街であるミシシッピ通りの表情の1つとなっていると感じられた。

<あとがき>

この旅で一緒になった巻組代表の渡邊享子さんは、自身のFBの中でこんなことを言っている。

できるだけ無価値なものをさがして、価値化して生活の付加価値になる「アート」に投資する。原資が無価値なら無価値なほどわくわくして、生活の価値があがるとさらにわくわくする。

これって、リビルディング・センターの在り様と通じる!彼女は、ヴィンテージのことを「再現不可能性」と定義しているけど、一見、無価値な物に出会ったとき、その「再現不可能性」や「一点もの性」に思いを馳せることを習慣化してみたら、生活はもっと豊かになる気がするなあ。

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