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心を許せる相手

いままで通っていた美容院に行かなかった。2ヶ月に一度、必ず通っていた。そこしか、美容院はないと思っていた。いつも、おまかせでカットしていたくらい信頼していた気がする。
なんかモヤモヤする出来事が重なり、気分転換がうまく出来なくて、寝てばかりいた。映画を観ても、美味しいものを食べても、すっきりしない。
そうだ、美容院に行こう。いつもの美容院じゃなくて、違うとこに行こう。そう思って予約した。
知人の美容師に初めて行った。
彼は、一人で美容院を経営している。同じフォトグラファーとしても活動している仲間だ。髪を切りに行ったのに、違うことでポンポンと会話が弾む。その流れで、前からやりたかった髪型を話した。不思議な感じがした。
「ハンサムショートにしてみたい」彼は笑いながら、「似合うよ、やってみようよ」そう言いながら、髪を切っていく。すごく真剣に美容師さんに変身した彼は、ポツリポツリと話す。家族のこと、写真のこと、そして髪型の確認。なんとなく、心地よかった。深い意味はない。同級生に会った感じで、変な遠慮もなく、馴染んだ空気感でリラックスしていた。
ハンサムショートが完成すると、彼は笑いながら言った。「ほら、似合うでしょ?」なんか、じーんとした。
ほんとは、私、誰かと話したかったんだろうな。認めてほしかったんだろうな。意味もなく泣きそうになった。
彼は最後に言った。店に入ってきたときに暗い顔してた。なんとなく、話を聞いてほしそうだったよ。また、来なよ。
なんか、救われた気がした日曜日。いや、救われたんだよ。職場の狭い環境の中でもがいてたけど、もっと周りを見たら違う世界と仲間がいるってことに。私は、明日からまた低空飛行でも緩めに笑顔で過ごせるような気持ちになっていた。たぶん、職場の人間関係は深めなくてもいいと思う。もっと、大事なものがある。そんな気がしてる。

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