人間の神秘、卵巣のう腫だった話

まったくえばれないが、数年に1度「救急車に乗ったことがあるか」という話題になり、「ある」と言うと、結構驚かれる。

たしかに、日常生活で乗ることはまずないし、それが2回で、どちらも当事者としてのことなんて、この歳では珍しいようだ。

これは社会人5年目頃の話。
朝はなんともなかったのに、いつものように普通に家を出て電車に乗り込むと、なんだかとってもお腹が痛い。

急遽隣の駅で下車し、駅員に伝えようとするも、とても混雑していてなかなかできず。
しかたなく、くの字のまま最寄り駅に電車で引き返した。

どうにもこうにもできず、徒歩8分の距離をタクシーで戻り、母が救急車を呼んだ。
すぐにきてくださった救急隊員のかたに、お腹が痛いと伝えると、位置的に婦人系もありうると、病院に詳細を伝えてくださった。

結果、緊急手術。
病名は、卵巣のう腫茎捻転というものだった。

難しい。

この茎捻転が厄介。

これは、卵巣に腫瘍ができて、それがある程度の大きさになると、その腫瘍の重みで卵巣が回転して血がとまってしまい、死にそうな痛さが襲ってくるという病、だったような気がする。
※個人の記憶です。

たしかにお腹が痛いシーンは思い出してみればわりとあったのだが、食べすぎ等、思い当たる節もいろいろあったりと、気にしていなかった。

とにかく、痛い。
ありえないくらい痛いのである。 
医療関係者の友人にこの話をすると「それめっちゃ痛いやつでしょ😫😫😫うわー」と言われた。
なんかわかんないけど、ちょっとうれしい。

婦人科検診で見ていただいた先生にも「それは大変でしたね😫痛いですよねあれは😫」と言ってくださった。

おじさん先生に、わたしのあの痛みがわかるのか、とやや斜めになりながらも、とりあえず痛いことについてお墨付きをもらえたという点ではなんかよかった。
(ひねくれている)

救急車でもわめき、手術室があくまでも時間がかかりわめく。

全身麻酔オーケーの紙は弟がサインし、手術。
数を数えてくださいと言われ、10秒以内に記憶がなくなった。

ここでなぜ弟かと言えば、救急車に付き添ってきた母がパートに出掛けるため、急遽大学生の弟が召喚されたのだ。

パート。

目をあけると、ベッドの上で、手術は無事おわっていた。

腫瘍は奇形腫といった類いで、からだのなかの脂肪や髪の毛から成るものということだった。

弟は摘出したそれを見せられたらしい。
ちょっと見たかった。

術後の経過などをみる関係で、1ヶ月くらい入院した。

その間、ほぼ毎日仕事帰りの父が見舞いに来てくれて、ますます母の株は下がった。(←引きずりまくる)

職場の大好きな上司(50代、男性)もいらしてくださり、その時流行っていた『謎解きはディナーのあとで』を持ってきてくださった。

その上司は本当に素敵なおじさまといった感じで、いまでも大好きであるが、このお見舞いの品にも非常にセンスを感じた。
その上司のおかげで「戻ったら馬車馬のごとく働きます…!!」と思えた。

また、別の日に友人が持ってきてくれた『女性自身』もとてもうれしかった。
時間があるため、普段は読み飛ばすような記事も隅々まで目を通すことができ、週刊誌って作るのが大変だろうなと、変なところに感心した。

時はたち、先週。
病院にいく度に手術歴は問われるため、非常に面倒くさい。
例にもれず、たまたま初診でとある婦人科へ行き、この経緯を担当の先生に話す。

この経緯を話さなければならないときに、必ず行われる会話。

「そうなんだ、どっちの卵巣?」

「それが、わすれてしまいました」

完。

卵巣はふたつある。
あんなにもがき苦しみ辛い思いをしたと散々言ってきたが、わたしはどちらの卵巣を手術したのか忘れてしまった。

そして、毎回婦人科へ行っては「あ、こっちだね」と教えてもらったのだ。

「まぁみればわかるから、みてみよう」

と、先生がおっしゃられて内診終了。 
これも台本通り。

「あのね、わかんなかった」

これはいつもとちがった。

だいたい手術をした方は、大きさとしては小さくなるわけで、一見すればわかるらしい。

しかしながら、卵巣はお医者さんがみてもわからない程度の大きさに回復していたのだ。 

手術後に当時の先生にも言われたのは「卵巣はすべて取り除かなくて良さそうで、一部を摘出しますので、妊娠などには問題ありませんよ。人間のからだってすごくて、卵巣は少し残しておくと元に戻る力があるんですよ」
(※人や程度にもよると思います。)

なんと…

人間のからだってすごい!!と思った。
手術をする際も、その点が気になっていた両親も安心していた。

とりあえずわたしがいますべきことは、手術をした病院に問い合わせて、どちらの卵巣を手術したかを確認することであるが、これはとても幸せなことであるとしみじみと感じる。

いまはとても元気で、年に一度、念のため検査に行く程度である。

このような話をすると、意外に「わたしも実は…」などと相談されることも多く、自己満足ではあるが、この経験もいつか誰かの役に立てばよいなと思っていま書いている。

とにかく気になったら病院に行くことが大事なのかなと改めて思う。 

そして間違いなく言えることは、パートは休むべきです。←

※すべて、個人の経験です。

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