見出し画像

パンデミック禍でも前向きに、そしてやはり笑いも欲しい ーイギリス2020年、各リテイラーのクリスマス・アドをまとめてみました




先日、2020年の英大型デパートメント・ストア、ジョンルイスのクリスマス・アドを紹介したが、今回はその他、主要リテイラーのクリスマス・アドをまとめて紹介しよう。


このオレンジのロゴでお気づきの方も多いかと思うが、こちらは英スーパーマーケット「センズベリー」のアド。クリスマスに家に帰る、という娘からの電話。「お母さんのロースト料理が待ちきれないわ」という娘に「おいおい、私のグレイビー(ソース)はどうなんだ?」という父。グレイビー・ソングという作り詩を歌い始める。心がほっかりして、クリスマスが待ち遠しくなるアド。



ご存じ、ブリトニー・スピアーズの「Oops!...I did it again」をサウンドトラックにした英大型スーパー・マーケット「テスコ」のアドは、「naughty list(ノーティ・リスト)」 に関する内容。「ノーティ・リスト」とは、今年一年、いたずらや悪いことをしたり、やるべきことをやらなかったりした場合にはクリスマスプレゼントはナシ!というもの。妹の髪をおかしく切ってしまった女の子や20秒間の手洗いをしなかった男性、学校閉鎖の家庭学習にて子供に算数や物理を教えなかった母親などが懺悔するが、今年に関しては、コロナ・パンデミックの影響で皆が大変な思いをしたので「ノーティ・リスト」はナシ、みんなプレゼントをもらうのに値するよ、というメッセージだが、トイレット・ロールの買い占めはダメだろ。


こちらは、ドイツ系ディスカウント・スーパーマーケット「Aldi(アルディ)」。アルディのトレードマークの一つである「Kevin the Carrot (人参のケビン)」が5年連続で登場。クリスマスを自宅で過ごすために、家に帰ろうとするケビンだが、パラシュートが雪に覆われた未知の地へと着陸してしまう。自宅では、子供達が父親ケビンの帰りを首を長くして待っている。その後ケビンはハリネズミとサンタクロースの力を借りて、家族の待つ自宅へと無事に戻る。そしてテーブルにはおいしそうなアルディのクリスマスディナーが。「ホームアローン」のサウンドトラックや「ET」のイメージを取り入れているが、見逃してはいけないのが、「ケビンのいないクリスマスなんて...」というナレーションとともに映し出された自宅の窓。コロナ・パンデミックで前線で働いているNHS(国民医療サービス)スタッフに感謝の意を表すレインボーの絵が。まさに2020年を振り返るクリスマス・アドとなっている。


ドイツ系ディスカウント・スーパーマーケットであるLidl(リドル)のクリスマス・アド。クリスマスは家族みんなでリドル商品でお祝いしよう、という内容で、特筆すべきドラマはない...かと思いきや、美しい歌声に乗せた歌詞は、「味が良ければ、人参なんてかわいいキャラクターである必要はないんだよ」と歌っており、フォークでぶすりと刺される人参は、ライバルスーパー・マーケット、アルディ(前述)の「Kevin the Carrot (人参のケビン)」ではないか!?リドルの広報担当は、「安くても質の良い商品を提供することーそれは皆が素晴らしいクリスマスを過ごすことにつながります。それにあたって、何か楽しいこともやってみたという訳です」と述べている。余談だが、男性の着ているLidlのクリスマス・ジャンパーは£8.99 (約1400円)で購入可能。


マクドナルド2020のクリスマス・アド。母親に対してなかなか素直になれないティーネージャーのトムと彼を喜ばそうとする母親を描いたこの90秒のドラマには、12,14歳の息子を持つ母親としてはもう共感しかない。反抗期のの息子と本当は心の中で繋がっているという設定に毎回ぐすんと泣いてしまう。最後に出てくる#ReindeerReadyキャンペーンについて。このアドに使用されている 'Forever Young'という曲(オリジナルは1984年のAlphaville)は、シンガーソングライターのBecky Hill のカバーで再リリースされており、1ダウンロードにつき、10ペンスがフードバンク団体「FareShare」へと寄付される



コカ・コーラの2020年クリスマス・アドは、なんと、あの「ジョジョ・ラビット」 「Thor: Ragnarok」の監督でもあるタイカ・ワイティティの作品。油田掘削設備で働く父親は仕事に出かける際、娘より「サンタさんへ」という手紙を預かる。仕事の途中で、その手紙をサンタに届けるべく海に出るが救命ボートが故障し、そこへ巨大クジラにあおられ海へ転覆。それでも手紙を手に北極へと命懸けの旅を続ける。やっとの思いでたどり着いたサンタ・クロースの家には「クリスマスのため閉店」のサインが...。途方に暮れているところにやってきたのが、コカ・コーラの "Holidays are coming"でアイコニックなあの大型トラック。手紙を渡すことができないまま、トラックで家まで連れて帰ってもらうのだが、そこでその手紙を開いてみると「サンタさんへ、クリスマスには、お父さんが帰ってきますように」と書かれていた。ドアから父親を迎える娘。そう、彼女はサンタから一番欲しかったプレゼントをもらったのだ。最後のメッセージは “This Christmas, give something only you can give (今年のクリスマスは、自分だけが与えられるものを贈ろう)”ーそして、トラックの運転手はサンタクロースというのが良い。



号泣です。「The Show Must Go On(それでもショーは開催されます)」というタイトルのアマゾンのクリスマス・アド。バレエ・スクールにて主役に抜擢されたバレリーナの少女は、公演にむけて、昼夜を問わず、場所を選ばず、連日連夜、練習を続ける。しかし、コロナ・パンデミックにより、公演はキャンセル。落ち込む彼女のために妹はなんとかショーを開催できないかと考え、隣人や友人たちに招待状を配り、協力を求める。そして、ショー当日、バレリーナの少女は舞台に立つ...。このアドのバレエダンサーはフランス出身のTaïs Vinolo。前回のジョン・ルイスのアドでも述べたが、アート業界はコロナパンデミックにより大きく痛手を受けた。公演できないパフォーマー達の苦痛を共有することにより、彼らが舞台に戻ってきた際には大きな拍手で迎えたいと思わせる、素晴らしいアド。

アマゾンのアドで大泣きした後は、こちらで笑って。

Plenty(プレンティ) はキッチン・ロールのブランド。メリー・メシ―(ぐちゃぐちゃな)・クリスマス、でもプレンティがあれば大丈夫、というメッセージ。

ウチの夫は以前広告代理店にいたことがあり、彼が言うには、広告業界は今年のクリスマス・アドが出た時点でもう来年のクリスマス・アドの制作にとりかかるらしいのだが、今年はコロナの襲来で何が起こるか分からない状態での広告制作は、気をもんだことだろう(コロナ前に上がった最初の案などはすでにボツ)となってしまったのだろう…。)

今年は、コロナ・パンデミックの影響で、いろいろなことが通常通りには運ばれなかったけれども、失ったもの、また、そこから気付いたことなどすべてを含めて、楽しい思い出深いクリスマスにしよう、というのが各社のメッセージといえるだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?