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2022夏アニメ感想まとめ

2022夏アニメの感想をランキング形式でまとめています。


<26位> 金装のヴェルメイユ~崖っぷち魔術師は最強の厄災と魔法世界を突き進む~

評価:B-

お気に入りキャラ:クリス・ウェストランド

視聴継続した作品の中では残念ながらワーストの評価を付けざるを得ない作品。視聴継続できたのも、他に見る作品が無い曜日に放送していたという一点に尽きる。一見、18禁要素も期待させるようなダイナマイトボディでアルトに迫るヴェルメイのセクシーさが大きな見所に思えるが、演出としての”羞恥心”や”照れ”という要素が希薄であり終盤を除きグッと来るものがなかった。内田真礼さんのヴェルメイの演技も最初は響くものがあったものの、変化に乏しくだんだん食傷気味になっていったのもマイナスポイント。物語やキャラの設定にしても、リアル中二時代の黒歴史ノートの設定をほぼそのまま具現化したような代物であり、よくぞこれが商業化に至ったなというのが率直な感想である。ただ、主人公周りの魅力が乏しかっただけで、生徒会メンバーや”魔導を極めし者プラチナスクエア”たちのキャラ付けやデザインは存外悪くなく、主軸をそちらに持っていった方が断然面白かったのでは。


<25位> ブッチギレ一番光れ

評価:B

お気に入りキャラ:アキラ
一人を残して全滅してしまった新選組の替え玉として、元・罪人の個性的なメンバーたちが京都の町を守る世直し幕末ストーリー。自分の感覚器とは相容れないことも多々あるトリガー作品味をどことなく感じる部分もあったのだが、これだけ素直に受け入れられているってことはやはり毛色が違う部分はあるのだろう。主人公の一番星の文字通りブッチぎった性格に乗せられる形で適度に熱くて見やすい作品ではあったのだが、自分のアニメ視聴に対する矜持である「今やっている作品を今見ることは今しかできない」を正に地で行く感じであり、後追いで視聴することはおそらくないだろうなというのが正直なところ。ラスボスが割とあっけなく散るなど終盤の展開も思いの外アッサリしており期待したカタルシスや爽快感にも欠け、本当に前述した”見やすさ”以外に見所を見出すことがなかなか難しく、惜しくもオリジナルアニメの難しさを再認識する形となってしまった。


<24位> 最近雇ったメイドが怪しい

評価:B

お気に入りキャラ:五条院つかさ

『ジャヒー様はくじけない!』の昆布わかめ先生によるショタ×メイドのハートフルコメディ。だが、言われなければ絶対に同じ作者だと気付かなかった自信がある。自分にショタ属性は無いし、ぶっちゃけショタによるNTRなどこの世で最も忌避するジャンルの一つですらあるのだが、こういう1対1の純愛(?)ものなら全く問題無し。サラッとリリスが褐色ヒロインなあたり、ジャヒー様も含め作者の性癖が垣間見える気がするが、つまりはそういうことであってこれに深い意味はきっと無いのだろう。早見沙織さんがショタボイスを担当するということで少し話題になっていたような気もするが、正直そこまでハマっているとは感じなかった。これだったら、いっそ無名の新人声優にチャンスを与えて欲しかったぐらい。むしろ一番の見所はすごく久しぶりに堀江由衣さんの少女ボイスを堪能できたなという点であり、どういう経緯でこういうキャスティングになったのかは是非知りたいものである。


<23位> はたらく魔王さま!!

評価:B+

お気に入りキャラ:クレスティア・ベル/鎌月鈴乃

ファン待望の2期…のはずなのだが、キャラデザは大幅に劣化してしまったような…。とりあえず、ちーちゃんが全然ちーちゃんじゃないんだよぉ…(錯乱)。これなら、むしろ鈴乃の方が魅力的に見えてしまう…(無慈悲)。現在のトレンドのデザインに変わってしまったというよりは、単純に「劣化」という言葉を使いたくなってしまうのがひたすらに悲しい。やはりこれは制作会社始めスタッフが総入替えになったことが原因なのか…。こうして初手で致命傷を引いていることもありどうしたって評価は渋くなりがちなのだが、アラス・ラムスという庇護対象を挟んで魔王とエミリアが疑似家族の体を成すようになったのはラブコメ的にはなかなか美味しい展開。ただ、それによってちーちゃんの蚊帳の外感が大幅に進行してしまったのは非常に残念。1期同様のピックアップのED映像然り、ちーちゃん大勝利エンドもあり得ると思っていたのだが、やはり正妻はエミリアなのか…(血涙)。


<22位> それでも歩は寄せてくる

評価:A-

お気に入りキャラ:香川凛

『からかい上手の高木さん』の山本先生による小さくて可愛い先輩と大きくて強面の後輩による将棋ラブコメ。なんか前期も同じような冒頭の紹介文を書いた覚えがあるけど、山本先生の引き出しマジパねぇな…。実際は同先生の他作品と比較するとちと弱いかなという感もあるのだが、先輩の小動物的な愛らしさはさすがという他ないし、桜子のなにげに独占欲が強いところもグッと来るし、後輩の凛の安定のツンデレ具合も刺さるしで女の子は皆とても魅力的。ただ、西片と比較すると男連中の個性はそこまでかなというところで、そこだけは微妙に惜しい。個人的にはやはりサブヒロインに目が行ってしまうのが常であり、特に主人公に横から恋慕するポジションの凛は美味しいの一言。合間の作品CMでは「彼氏役をやってもらいます」という強烈なシーンがピックアップされていたので非常に楽しみにしていたのだが、結局お目にかかれず。思わせぶりはよくないぜ…。


<21位> ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇

評価:A-

お気に入りキャラ:ヘスティア

原作勢としては、2期の「春姫救出編」までアニメ化してくれれば後は原作で十分なんだが…という思いもなくはないのだが、相変わらずJ.C.STAFFによる作画力がズバ抜けているので不満などはあるはずもない。「マリオ」や「ロックマン」を物語化することがエンタメに繋がるのかというそもそもの構造的問題を鑑みると、本作品の戦闘シーンを血沸き肉躍る想いで見ている人もそうはいないのでは…。そうなってくると、やはり本作品の一番の魅力はそのタイトルにも象徴される「出会い」(≒恋愛)の要素であるはずである。よって、優先度が低くとも必須ではある戦闘シーンを映像化することによるブーストには若干疑問符が残るため、”尺”や”映え”に縛られない原作小説で存分に物語を紡げば十分なのではというのが勝手ながらの持論である。ベルの成長速度のチート化の扱い含め、原作者にも迷いが生じているのではという想像が杞憂に終わればいいのだが…。


<20位> よふかしのうた

評価:A-

お気に入りキャラ:蘿蔔すずしろハツカ

『だがしかし』のコトヤマ先生による吸血鬼ラブ(?)コメディ。吸血鬼という異種族を取り扱う作品ではあるが、正直前作のほたるさんの方が吸血鬼以上に頭がぶっ飛んでた気がする。そういう自分が両者が同作者であったことを知ったのはかなり後からなのだが、こういうのって気付かないものなんだねぇ…(そういや同じ”目”じゃん…‼)。言い訳をさせてもらうなら、キャラデザのおっぱいの形が違和感アリアリなのが玉に瑕でなんか全部奇乳に見えるのよね。記憶が確かなら、ほたるさんの巨乳やサヤ師のちっぱいは存分に愛でていたはずなんだが…。さらに雨宮天さんの演技も一見ハマっているようでハマりきってない感じで、絶妙にツボを外してくるなというのが全体の感想である。そんな中、7話の吸血鬼勢揃いの場面が個人的な一番の見所だったのだが、ハツカが中でもお気に入り。実は○○○だったのには驚いたけど、盛大にこれはこれでアリなんだよなぁ…。


<19位> 彼女、お借りします

評価:A-

お気に入りキャラ:桜沢墨

「レンタル彼女(レンカノ)」という独自の舞台装置で人気を博したラブコメの2期。その設定含めて色々と破綻寸前だし相変わらず主人公のキャラには痛々しさといたたまれなさが付きまとうが、ヒロインズの可愛さだけで強引に乗り切ってしまうという視聴スタイルの人も多いのではなかろうか(少なくとも自分はそれ)。…というか、和也が普通にハーレム状態になってるし割と女たらしのクズ野郎にすら足を突っ込んでるのは絶対に気のせいではないだろう。正直、和也には千鶴という大本命がいるのだから、なぜ瑠夏をきっぱりと拒絶しないのかが謎すぎるし、麻美がいまだに和也に執着しているのも意味不明だし、どうやって収集を付けるのかがむしろ楽しみですらあるのだが、2期では物語の最終的なゴール地点が朧げながらも見えてきた予感。あと、最後に何度でも言わせてもらいたい。トムス・エンタテインメントは作品毎のモチベーションにムラがありすぎる…。

【ヒロインズ総評】

水原千鶴【推し順位4位】
安定のメインヒロインは雨宮ボイス。物語上の都合といえばそれまでなのだが、彼女がレンカノであることを家族に告白しようとした和也を否定したのは正に正妻ムーブ。美人かつ努力家という選ばれし人間感は存分に伝わってくるのだが、それが逆に「一般人」な和也のキャラとの親和性を損ねている感が未だに拭えない。

更科瑠夏【推し順位3位】
個人的には、彼女と麻実だけで話を作った方がよほど完成度は高かったと思われるぐらい完成度は高いキャラ。東山ボイスの天真爛漫で可愛い後輩から元気に迫られて節度を保てる和也には畏敬の念を抱かざるを得ないが、あのシーンは強烈だったね。でも、数多の先人作品曰くその行動は負けヒロインルート一直線だぜ…。

七海麻美【推し順位2位】
2期になって出番はめっきり減ったが、時たまフラリと登場しては磨き抜かれた悠木ボイス(黒)で重いボディブローを打ち込んでくる侮れない存在。実際のほどはともかく恋愛における「現実味」を感じさせてくれるとても素晴らしいキャラをしておられ、オタク目線からはある意味心が色々な意味で震えて涙と汗が止まらない。

桜沢墨【推し順位1位】
正直、ストーリー的には存在意義をあまり感じないキャラなのだが、可愛いものは可愛いから仕方ないね。…というわけで、登場シーンはいつも唐突で強引感が否めないのはご愛嬌。男にとって、自分を素直に肯定して健気に励ましてくれる女の子はどうしたってすごく愛おしい。願わくは、いつまでもそのままの君でいて欲しい。


<18位> シャドーハウス 2nd Season

評価:A-

お気に入りキャラ:バービー

1期では”シャドーと生き人形”という唯一無二の設定、顔が見えないシャドーたちの横顔や”すす”による感情表現というアニメーションの新たな可能性を高く評価していた。しかし、ストーリーが進行しいざ館の秘密の中核に迫ろうかという段階に差し掛かるとその辺りの個性が却って薄くなってしまい、良くも悪くも”普通”の作品になってしまった印象である。思うに、自分は本作品にミステリー的な謎解きを求めていたわけではなく、ケイトとエミリコの温かな交流とそれに影響される形で自らの生き人形との関係を見つめ直すシャドーたちのようなミクロの日常的描写が気に入っていたのだろう。そういう意味では、生き人形としては異色の表情を見せるバービーの過去が明らかになるなど、”星つき”たちのパーソナリティの描写が深まったことが一番の見所であった。少数派の意見だとは思うが、今後は益々ストーリー重視の作風になっていくであろうことが実に惜しまれる。


<17位> 組長娘と世話係

評価:A-

お気に入りキャラ:桜樹八重花

イケメン揃いの極道と愛らしい幼女という組み合わせは、女性ウケ狙いか男性ウケ狙いか若干のミスマッチを感じなくもないのだが、トータル的には絵面が綺麗なことは良いことだという結論に落ち着いた。極道ってこんな綺麗なものではないよねという野暮なツッコミはさておき、若頭と組長の一人娘の思わずニヤリとしてしまうような(霧島に対しての)ギャップ萌えを誘発するやり取りを見ると、やはり主軸は女性向けなんだなと思わされるが、これはこれで全く問題なし。とはいえ、自分の視聴スタイルとしてはもちろん八重花の愛らしさに全振りであり、存分にその人間関係に不器用な性格を愛でながら霧島と共にこの子を全力で守るという謎の使命感に駆られて視聴していた。極道ものの作品としては、『ヒナまつり』なんかも記憶に新しいけど、あのはっちゃけぶりは楽しかったなぁ…。男目線からはどうしてもああいう振り切ったギャグ展開を期待してしまいますな。


<16位> わらう アルスノトリア すんっ!

評価:A-

お気に入りキャラ:しょうアルベール

『リコリス・リコイル』と共に、今期のキャラデザで視聴者を釣る作品2選。そしてこちらには日常系要素も多分に含まれているので、その良キャラデザを存分にじっくりと愛でることができるという利点あり。『エロマンガ先生』(…あえて『俺妹』とは言わない。)と『リゼロ』の絵柄を足して2で割ったような絵柄と初見で個人的には評したが、案の定後者の原作挿絵を担当する大塚真一郎氏によるキャラクター原案であった模様(キャラデザは別の人)。ストーリーはなんてことのないほのぼのとしたティータイムと授業とちょっとした事件の繰り返しであるがそれでいい、いやむしろそれがいい。時折挟まれるまるで別作品のような意味深なシリアスパートの意味は今はどうでもいいのである。なにげにネーミングセンスも秀逸であり、「アル」という愛称をずっと「コハル」と聞き違えていた件。いや、「小アルベール」とかいう発想はなかったわ~(クレジット目に入らない勢)。


<15位> ラブオールプレー

評価:A

お気に入りキャラ:櫻井花

常に尺との戦いとなるスポーツ作品において、2クールで主人公の入学前からインターハイ優勝までをきちんと描き切ったことはなによりの評価点。その代償として試合描写の省略化も多かったが、重要な試合かそうでないかの線引きは概ね納得できるものであり見ていてもどかしさはほとんど感じなかった。試合描写や各キャラのバックボーンの掘下げなどは突き詰めればどこまでもいけるものだが、ことアニメ作品においては限られた尺との兼ね合いからどこまでそれを行うかというのは永遠の命題である。本作品においては、ストーリーのペース配分において”描き切る”を重視するという姿勢を終始貫いていたが、これは視聴者の求める正解の一つであったといえよう。各キャラがそれほど濃くなかったこともあり、結果的に視聴感としては塩分控えめなものになったが、爽やかでありながら時に涙と根性もありの青春スポーツ作品として満足のいく作品であった。


<14位> キングダム

評価:A

お気に入りキャラ:信

4期という長丁場になってくるとだんだん書くこともなくなってくるのだが、周りの作品との相対評価の指標になるという意味では引き続き執筆した方がいいのかしら…。今期のストーリーの中核である「あい国反乱編」において、遂に秦王・政と因縁の相手である相国・呂不韋りょふいとの完全決着となったのは、秦国の対外戦争の作中最大級の山場であろう「合従軍編」に比肩するほどの内政の山場であり、特に政と呂不韋の秘められた関係性とこれまでの経緯を踏まえた上で見ると、二人のよう・天備宮での最後の語らいの場面は非常に感慨深い名場面となる。当該場面において、政は呂不韋にのみでなく太后や周りの重臣たち、メタ的には読者(視聴者)にも同時に語り掛けており、その「中華統一」にかける断固とした信念と意思表示は、その正義の是非はともかくこれからの作品の指針を語る上でも必要不可欠なものとなっており、同時に原作者の代弁でもあったといえるだろう。


<13位> サマータイムレンダ

評価:A

お気に入りキャラ:小舟澪

まずはこのご時世の中、2クールかけて物語の最後までを描いてもらえたことに感謝。本来はこれが当たり前なら嬉しいのだが、作品としての”旬”や販売促進の観点からは尻切れトンボのアニメ化になってしまう作品が大半なのが現実である。本作品については、本格的なサスペンス作品としてもっと話題になっていてもおかしくないのになと思えるぐらい。ただ、同じループものとして『STEINS;GATE』と比較すると、ループする世界観の面白さと分かりやすさ、終盤に向けての盛り上がりとカタルシス、そして何よりもキャラの濃さという”オタ臭さ”による訴求力のいずれにおいても敵わなかったというのは確かだろう。こうした複雑になりがちなループ展開については、視聴者に”考察する気にさせる”ことが盛り上がりには何よりも重要になる。”タイパ”が重視されるこの時代において、本作品はその難易度設定を微妙に外していたのではないかというのが率直な感想である。


<12位> 継母の連れ子が元カノだった

評価:A

お気に入りキャラ:東頭ひがしらいさな

量産型のラノベ感丸出しのタイトルではあるがラブコメとしての芯はしっかりしており、思いの外完成度は高かった印象。序盤から、主人公を好きになる高校のクラスメイト辺りが出てくれば結女ゆめのジェラシー描写も含めてグッと面白くなると感じていたところ、正にそれを期待どおり…いやそれ以上に体現してくれたいさな嬢の存在は殊更に大きく、今期のヒロインの中でもトップクラスにお気に入り。全くあざとくなくてそれが逆にあざといナチュラルボーンな性格と友達でも良し恋人ならもっと良しな絶妙な距離感、そして暴力的なまでの胸部装甲リーサル・ウェポンは「オタクってこういう子好きだよね~」の具現化そのものであり、これに落ちない水斗の方がおかしいのである。一方、結女についてはビジュアル的にどうしても某アイドル作品のですわ口調のポンコツ生徒会長が頭をよぎるのだが、こちらの方が断然良き。ツリ目&パッツン前髪(真)じゃないのってやっぱり大きいんだよなぁ…。


<11位> 惑星ほしのさみだれ

評価:A+

お気に入りキャラ:白道八宵はくどうやよい

作画・演出面に多分に荒さは感じられるものの、”勢い”と”熱さ”は存分に感じられた個人的ダークホース。原作は10年以上前に連載終了しているようだが、何ならもっと前の作品だと言われても納得してしまえるほどいい意味での”古臭さ”が残っており、自分の好きな作品をがむしゃらに読んでいたあの頃の気持ちを久方ぶりに思い出した気がする。今は様々な方面から作品の評判がすぐに伝わってしまう時代であるので、原作ファンの怨嗟の声も然りというのは否定しないのだが、自分は”せっかくの”アニメ勢であるのだからこのままフラットな目線でストーリーの行く末を楽しみにしていきたい。夕日とさみだれの騎士と姫としての忠誠と絆、半月や師匠の”託すもの”としての想い、朝比奈家の家庭事情など時に涙腺を熱く刺激する展開はその中でも特筆すべきものであり、本作品の持つポテンシャルを確信させてくれる。放送終わったら、絶対に原作読まなきゃなぁ…。


<10位> リコリス・リコイル

評価:A+

お気に入りキャラ:錦木千束にしきぎちさと

まずはオリジナルアニメでこれだけの話題と実績を作ったことを素直に称えたい(近年ではそれこそ『よりもい』以来のヒット作では)。キャラデザが良すぎてキレキレのアクションシーンが逆にもったいないと思えるぐらい千束とたきなのビジュアルの完成度は図抜けており、話題としても二人の関係性の魅力が中心になっていたように思う。反面、「リコリス」という設定については疑問符が残り、本作品で命のやり取りを発生させたことがかえって足枷になっているようにも感じた。千束の”不殺の誓い”然り、そんな半端なことをするぐらいならシリアス成分は人間ドラマに絞り、二人の内面描写を掘り下げる方向性の方が個人的には好ましかった(そういう意味では、9話の展開と雰囲気はかなり理想的だった。)。本作品をキャラありきで語ることの是非はもちろんあろうが、「どこに魅力を感じたのか」を各々が最初に明言することが本作品の議論には不可欠な前提であろう。


<9位> Engage Kiss

評価:A+

お気に入りキャラ:夕桐アヤノ

「シリーズ構成・脚本:丸戸史明」のクレジットに違うことなく、ヒモ系主人公となんだかんだ尽くしてしまうツインヒロイン(+α)の関係性はコメディとシリアスのバランス感覚にも優れ、作品としての練度は一級品。特に、シュウがキサラの力を引き出す度にその記憶も彼女に奪われていくという設定は本作品のストーリーの根幹を成すギミックであり、それを効果的に利用した展開には毎度唸らされた(単に「忘れる」のではなく「奪われる」ことがポイント)。また、アヤノから滲み出る未練タラタラかつ愛してしまった男には抗えないメスっぷりは最高にエロエロで素晴らしく、さすがは丸戸先生の描く年上系ヒロインである。その他、個人的な見所は戦闘シーンにおけるシャロンの十八番である豪快な踵落としであり、ホントこのアクションってガン刺さりなんだよなぁ…。総じて、このご時世に同時に二つも質の高いオリジナルアニメを制作してくれたA-1 Picturesに天晴れである。


<8位> うたわれるもの 二人の白皇ハクオロ

評価:A+

お気に入りキャラ:クオン

『うたわれるもの』シリーズ最終章。「集大成」という言葉が相応しいこれまで積み立ててきたストーリーの総決算は見応えバツグン。くしくも、ハクの中の人の変更がストーリーと見事に合致してしまったのは繰り返し数奇な話である。「オシュトル=ハク」の件に関しては、作中キャラがちと鈍すぎるきらいはあるのだが(クオンは察している?)、メタ的にもその不自然さが緩和されていたともいえるかもしれない。戦術的な観点を絡めながらも各ヒロインの故郷を順々に訪れて徐々に陣営を強化していくシナリオは、いかにもゲームの論法だなと感じる部分もあるのだが、先の展開まで計算されているのが約束されている安心感は何物にも代えがたい。本作品の主軸はやはりハクとクオンの二人であり、序盤でクオンが敵対するかとなった時には心が痛みつつも物語の業と壮大さも同時に感じたのだが、結局はまた共に肩を並べることとなったのは嬉しくも複雑な気分である。


<7位> ようこそ実力至上主義の教室へ 2nd Season

評価:A+

お気に入りキャラ:軽井沢けい

堀北鈴音、櫛󠄁田桔梗に続く3人目(異論は認める)の本格派ヒロインとして軽井沢恵にスポットライトが当たり、もはや正妻の座まで見えてきた2期。原作からしてそうだったのだろうが、1クールのほとんどをそれに費やすのも随分思い切った構成であり、それが思いの外ハマっていたからなお驚きである。小生意気なクラスの中心人物でありながら”いじめられっ子属性”も併せ持つというキャラ付けは、竹達ボイスによるバフ効果も相まって嗜虐心と庇護欲を同時に唆り、非常に新鮮かつ魅力的。清隆の彼女に対する言動は正にマッチポンプもいいところだが、それがかえって本作品の実力至上主義の頭脳戦という作風にも絶妙にマッチングしており全く不快感がないのもある意味スゴい。清隆の文部両道での覚醒(というか本領発揮)には賛否両論がありそうだが、遂に表舞台で活躍するようになった姿を見てみたいという気持ちの方が断然強く、引き続き3期も待ち遠しい。


<6位> ラブライブ!スーパースター!!

評価:A+

お気に入りキャラ:唐可可タンクゥクゥ

きな子からの「かのん先輩」という呼称に象徴されるように、歴代作品では描かれなかった「その先」の世界。もうそれだけで特別感がハンパない。この辺りの展開については概ね予想通りではあったが、新規生は「3年目」も見据えて二人ずつ小出しにしてくるかと思っていた。正味なところ、”2期生を加入させた”という点だけでやりきった感出してないか?と言いたくなる場面は多々あり、既存メンバーとの絡みも踏まえた化学反応にはかなり物足りなさを感じている。これは、ポケモンのブースターの不遇理由と限りなく近いと個人的には分析しており、別記事で執筆してみたいと思案中。とはいえ、コンテンツとして積み上げてきた存在感とカリスマ性はやはり別格であり、”議論する気にさせること”そのものがとてつもない価値なのである。完走前の執筆にはなったが、2期のベスト曲はEDの「追いかける夢の先で」でほぼ確定。Aメロの歌い出しがとにかく気持ちいいのよ。

【2期生総評】

桜小路きな子
まさしく「後輩」という属性に全振りしたキャラ。逆に言えばそれが彼女の全てであり、もし「3期生」が加入するならその存在価値が揺らぐことが危惧されたが、おそらくメンバー増員はここで打ち止めか。化学反応という意味ではかのんとの先輩後輩の絡みは効果的であり、「その先」の象徴として非常に感慨深いものがあった。

米女よねめメイ
初期にやんちゃなキャラの片鱗が垣間見えた際に、れんによる熱い更生からの「一生あねさんに付いて行きます‼(恋にだけ敬語)」→「姐さんはやめてほしいって言ってるじゃないですか/// 」という流れが思い浮かんだのだが、逆に恋の方が醜態晒してるじゃねぇか…。千砂都は部長としてメイのタメ口を一回きちんと締めるべき。

若菜四季
すみれや恋とはまた違ったお色気枠…なのか?先輩方はすっかりイロモノ化してしまったので、彼女は正統派のまま突き進んでほしい。”四季メイ”については、最初から関係性ありきで描かれても面白くないし、何より既存メンバーと2期生との絡みを阻害する悪手だと思う。発明家みたいな設定も結局中途半端だったような…。

鬼塚夏美
2期生の中では、唯一「後輩」という属性に頼らずにそのキャラクターの魅力と新鮮さだけで勝負できるキャラ。故に、4人の中では一番お気に入り。スクールアイドルとマニーの関係性については歴代作品でもブラックボックスだった部分であり、すみれとのショウビジネスの経験を踏まえた絡みはもっと深めてもよかったのでは。

【”クゥすみ”についての私見】

私見の前提として、本作品における可可のすみれに対する一貫しての雑な扱いが度々問題視されることがあったが、これはむしろ人間関係の描写のリアリティを増長させる妙手であったとすら思っている。ここで言いたいのは、「それでも実は…」的なツンデレ論ではなく、可可は初手でショウビジネスの経験を鼻にかけてスクールアイドルを軽んじる発言をしたすみれのことを、今なお真の意味では許せていないということである。すみれとしては、可可の存在に救われた部分もあり彼女に親愛の情を持つに至ったようだが、可可がすみれに求めたのは自分への親愛の情ではなく、”スクールアイドル”としての実力の向上とその姿勢であるはずである。故に、可可がすみれを真の意味で認めるのは彼女を”スクールアイドルとして”眩しく感じた時となるはずであり、「大嫌いで…大好きです」も(少なくともあの時点では)盛大なあきらめと妥協の産物であったと言わざるを得ない。


<5位> シャインポスト

評価:A+

お気に入りキャラ:聖舞理王せいぶりお

散々手垢の付き尽くした駆け出しアイドルとマネージャー(≒P)のストーリーではあるが、作画のクオリティが信じられないぐらい高く驚きを隠せなかった。手描きであろうダンスシーンの作画ですら、おそらくコマ送りレベルでもデッサンが全く崩れていなかったのはもはや気持ち悪いの域。そのストーリーについても、安易にキャラ萌えに頼らずに各アイドルのバックグラウンドをしっかり描き、内面からガツンと感情移入させようとする姿勢は見事。この辺りは”総合プロジェクト”という要素が良い方向に働いたなという印象であり、”本格派”の作品として数多のアイドル作品群に新たな楔を打ち込める存在だと認識されたはずだ。一方、楽曲面については若干弱いかなという印象だったのだが、理王様センター曲の「Yellow Rose」は別格の一言。彼女の美声で”新規を惹き付ける”という作中の戦術とも完全に合致し、彼女の立ち位置を一変させる最高の一手だったといえるだろう。


<4位> カッコウの許嫁

評価:S-

お気に入りキャラ:海野さち

相変わらずの安定度合いは健在。令和のこの時代にこれだけベッタベタで古典的なお約束展開やイベントの数々を”真面目に”やってくれることには、やはりとてつもない価値がある。主人公の凪が真面目で勉強が得意な模範生(=非凡な存在)なのも実は重要なポイントで、もし真の意味での平凡主人公であったら魅力的なヒロインたちに好意を寄せられる様が一気にご都合主義的な”寒さ”として浮き彫りになっていたに違いない。このように、古典的でありながらもその裏にはラブコメとしての理論の蓄積と絶妙なバランス感覚が存在し、かつそうとは中々気付かせないのが本作品の非凡たる所以である。ストーリーの転機になりそうな”カッコウ”というキーワードの真の意味までは明らかにならなかったが、続きは原作で楽しむことにしたい。神懸かり的な出来映えだった前半OPからの後半OPの落差には盛大に肩を落としたが、両方中途半端になるよりは良かったか…。


<3位> アオアシ

評価:S-

お気に入りキャラ:一条花 海堂杏里

前期にも「本格派」という言葉を使ったが、その評価は益々確固たるものに。「サッカー」という競技においてはやはり得点シーンが一番の見せ場になることに疑いようはなく、葦人あしとの得点への拘りも当然の様に思えたが、福田監督による突如のFW失格の通告とDFへの転向は正に青天の霹靂。その現実を受け止めきれず一時は抜け殻のようになりながらも、SBサイドバックとして再度奮起する姿は物語として新鮮であり競技自体の描写としても理解が深まる実に”らしい”展開である。これまでも随所で描かれてきた葦人の尋常でない視野の広さと俯瞰能力、そしてそれに伴う「司令塔」としての素質も仄めかされており、この後の展開も待ち遠しくて仕方がない。二人のヒロインによる正妻戦争も本格化しつつあり、今期は葦人を”可愛い”と評した杏里がピックアップされる場面も多く、立場・性格共に対照的な二人は双方とも魅力的であり作品の評価をグッと押し上げているのも見逃せない。


<2位> 異世界迷宮でハーレムを

評価:S

お気に入りキャラ:ロクサーヌ

「男のロマン(黒)」をあくまでも紳士的に描くという点で極めて個人的需要とマッチングしており、単なる異世界ものとは完全に一線を画している。そしてなによりも”濡れ場”の描き方が実にけしからんクオリティであり、本番前のスキンシップから丁寧に描く情感・恥じらいの演出がひたすらに素晴らしく、ただ見せればいいというわけではないということを非常に良く分かっていらっしゃる(思わず敬語)。自分は数々のエロゲも嗜んできたが、最近はどんなにテキストのボリュームがあろうとも所詮は一枚絵のエロゲよりも、魅せ方の自由度と表現の幅と情感に優れるエロ漫画の方が琴線に触れるという結論となっており、後者をアニメーションにより正当進化させてくれたのが本作品なのである。”ただ規則正しく動いているのは止まっているのと変わらない”という事実をエロゲメーカー諸氏は深く認識していただき、本作品をそのお手本として制作に邁進していただきたい。


<1位> メイドインアビス 烈日の黄金郷

評価:S+

お気に入りキャラ:ファプタ

キ〇ガ〇…いや、既知外という言葉がこれほど相応しい作品も他にあるまい。その圧倒的な狂気の暴力はさらに凄みを増し、我々の眼前に戻ってきた。これまでも狂った展開はあれど、あくまでもそれは狂「人」によるあくなき冒険と探求心によるものだった。そう思えてしまうほど「成れ果て」たちの世界は根本的に何かが違う。しかし、それがこれだけの魅力を持ち我々を惹き付けるのは、そこに彼(女)らの”意志”が確かに存在するからであり、それは”悪意”という俗物とは一切無縁の純粋物であるからである。アビスの深層を目指す冒険、それ自体が作者によって「ワクワクする自殺」と言語化されたように、望まずにその場に来たものは誰一人としていない。その帰結としての”かたち”であるなら、ありのままにそれを受け入れ続ける彼(女)らの行く末を固唾を飲んで見守っていきたい。最後に…ナナチを選ぶかファプタを選ぶか、それが問題だ(俗物のあくなき探求心)。



<劇場版8位> おそ松さん~ヒピポ族と輝く果実~

評価:B-

お気に入りキャラ:十四松

それを食べると誰でもキラキラ輝けるという伝説の果実を求めての謎の島でのハチャメチャ騒動。劇場版であるならば、「いつもの」とは趣向を違えた”ハレ”の舞台を用意したくなるもの。しかし、自分が本作品に求めるのは『劇場版ドラえもん』のような冒険譚ではない。そういった意味で、前作の『えいがのおそ松さん』のように過去の世界の自分たちと改めて向き合うというような「いつもの」の延長線上かつ本質に切り込む特別感こそ求めていたものにより近かったといえるだろう。今回も色々と深読みすれば「ヒポポ族」もアンチニートとしての象徴とも読み取れるし、それを見て6つ子たちが自分たちの在り方を見つめ直すという構成に取れなくもないが、結局最後はハチャメチャでごまかしてしまうのであれば悪い意味での「いつもの」おそ松さんなのである。また劇場版があるらしいけど、十四松と彼女ちゃんのその後ぐらいやってくれないともう行かないかもなぁ…。


<劇場版7位> 劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編]僕は君を愛してる

評価:B

お気に入りキャラ:荻野目苹果りんご

総集編映画の後編。上映時間140分超という大ボリュームだが、後半クール分が丸々詰まっていると思えば納得か。TVシリーズから10年を経ての満を持しての劇場版ということで、後編ではいよいよ何か大きな仕掛けがあるのではという期待を持って鑑賞したのだが、前編に引き続きエピローグ後の設定を少しばかり構成に組み込み桃果の出番も若干増やした以外は純粋な総集編であり、正直肩透かし感は否めなかった。賛否両論は必至だろうが、本編では叶わなかった冠葉、晶馬、陽毬(と苹果)が今度こそ真の平穏を持って一緒に暮らすという大団円のラストも見てみたかった気はする。けして面白くなかったわけではないが、これならTVシリーズを見るだけで十分だったかなという想いは拭えず、より手短に作品を楽しめる以上の価値を見出しにくかったというのが本音。総集編映画にも何かTVシリーズとは違うものを求めてしまうのも、良し悪しではあるけどねぇ…。


<劇場版6位> 夏へのトンネル、さよならの出口

評価:A-

お気に入りキャラ:花城あんず

『君の名は。』のような圧倒的なスケールと映像美を求めなければ、純愛映画としては十分な出来。良い意味で「分相応」という言葉が相応しく、及第点を求めていた観客にそのまま過不足なく70点を献上してくれるバランス感覚が最大の評価点だろうか。クライマックスの盛り上がりにはやや欠けた印象はあるものの、これを息を飲む映像美と壮大なBGMで見せられてもかえって過剰演出になっていたに違いない。難点を挙げるとすれば、やはり主人公・ヒロイン共に本職の声優ではなかったことで、特に主人公の台詞にやや寒い部分があったことがそれに拍車を欠けており、思わず「う゛わ…」と身を引いてしまった場面もチラホラ。ヒロインの「漫画家志望」の設定も含め、作品全体に仮組み感というかプロトタイプのような雰囲気があったのも否めず、ここから練り上げたらさらに良くなりそうな雰囲気はあったが、これはこれでいいのかなとも思えてしまったのは幸か不幸か…。


<劇場版5位> 劇場版ツルネ ―はじまりの一射―

評価:A-

お気に入りキャラ:白菊乃愛のあ

TVシリーズ1期の内容に新規映像を追加して再編集した総集編映画。前々から思ってはいたのだが、公開発表時点でハッキリと「総集編」であると表示する義務を各制作会社には課していただけると非常にありがたい。PVやら追加情報なんやらで朧げに推測はできるようになるのだが、ムビチケが発売されたらとりあえず確保したくなる民としてはなおさらである。そして分かってはいたことだが、劇場でも女性客が中心となる「美形男子」たちの物語は、京アニクオリティをもってしても訴求力には欠けると言わざるを得ず、色んな意味で涼やかな気持ちで鑑賞することになった。2期発表に合わせての公開だったようだが、それよりも『Summer Pockets』のアニメ化を京アニが担当してくれるという発表であった方がどれほど嬉しかったか…。基本的に女性受けも良い作品が中心の制作会社ではあるが、ここらでコテコテの男性向け作品も久しぶりに見てみたいところである。


<劇場版4位> ONE PIECE FILM RED

評価:A+

お気に入りキャラ:―

尾田先生が総合プロデュースする「FILM」シリーズ最新作。今回は良くも悪くも「歌」に振り切った構成となっており、キーキャラクターの少女の名前も「ウタ」とド直球。よって、彼女の歌唱パートを担当する歌手のAdoの歌声が琴線に触れるかどうかに全てが委ねられていたといえるだろう。『ONE PIECE』の世界観に馴染んでいたかと言われれば疑問が残るが、自分の場合は劇場スクリーンならではの大音量と大迫力も相まって、その歌唱力を存分に堪能できた部類。ただ、その一方でシナリオ面はかなり強引かつ雑であり、メインストーリーとの時系列関係もよく分からず、伏線も何もあったものじゃない唐突なルフィとウタの幼馴染としての思い出シーンを見せられても感情移入にはほど遠く、盛大な後付け感は否めなかった。総じて、『ONE PIECE』の映画に何を求めるかで評価は割れるだろうが、熱いバトルに頼りすぎない新しい試みとしてはアリだったのではないだろうか。


<劇場版3位> 映画 バクテン!!

評価:S-

お気に入りキャラ:亘理わたり光太郎 栗駒あさを

想像以上に素晴らしかった劇場版。初日に鑑賞したら9割9分ぐらい女性客でびっくりした。自分は単純にスポ根ものとして男性キャラが多いのも当たり前に受け止めていたけど、そういう立ち位置の作品だったのね。内容としては、IHで惨敗した後のストーリーが主軸となっている構成は発想として斬新で実に秀逸だった。IHでの大失態、引退する先輩への申し訳なさ、志田監督の退任、新キャプテンとしての重責など亘理の心情は慮るに余りあるが、後輩からキツい言葉を受けながらも彼らしい「仁義」を貫き通して立ち直るまでの過程はすこぶる感動的であり、アオ高新体操部の「これから」に期待をしたくなる爽やかな締め括りであった(最後に特典イラストに収束する演出も◎)。こう考えると、美里はキャラとして本当に良く育ったなあとしみじみ。ちなみに、男性目線からは栗駒先輩の扱いが色んな意味で抑えられていたのはちと残念だったのだが、それは致し方なしか(笑)。


<劇場版2位> 雨を告げる漂流団地

評価:S

お気に入りキャラ:羽馬令依菜はばれいな

近年の作品ではついぞ響くことのなかった、まだ思春期を迎えていない本当の意味での「少年と少女」のひと夏の冒険成長譚サバイバル。祖父と孫、母と娘のような”縦”の家族愛はもとより、それらへの想いを共有した航祐こうすけ夏芽なつめのいわば”横”ともいうべき未熟ながらもだからこそ愛おしい心の繋がり、そして懐かしい過去への憧憬とそれとの別れが高レベルで融合し、何度涙腺を刺激されたか分からない。そこに効果的なスパイスとしてサブヒロインとしての絶妙な茶々入れを供給してくれる令依菜の存在が適度なオタク成分を供給してくれ、その観点からも抜かりがなかったのには脱帽。コンテンツ全体が”萌え”という絶対的な枷にどっぷりと浸かり、皆がそれがなければ満足できない心と体にされてしまっていてもなお、「少年と少女」に果敢に挑戦した制作陣には天晴れと言う他なく、どの世代にも自信を持ってオススメできる素晴らしい作品として存分に胸を張ってもらいたい。


<劇場版1位> 映画 ゆるキャン△

評価:S

お気に入りキャラ:各務原なでしこ

大人になったなでしこたちの物語。原作にはないオリジナル展開でここまで攻めた設定にしたのには正直驚いた。「いつまでも変わらない日常」が尊ばれる日常系作品において大人になった、いや大人になってしまったなでしこたち。暮らす場所、就いた仕事もバラバラで予定もなかなか合わずにゆるゆると疎遠になっていく日々の中、キャンプを通じてまたあの頃のように皆で集まって何かができた、そんな喜びが120分間に凝縮されている。「さみしいも、たのしい」を体現する本作品だからこそ可能だった「エモい」とか「尊い」という表現では語れない唯一無二の何か。その静かな感情の波が観客の心を大きく揺さぶったのは間違いない。複数回鑑賞すると「さみしい」と「たのしい」の比重がその度に変わるのも実に印象的。仲間とワイワイ観るのもいいけども、疲れた仕事帰りにポツンと一人で観る、そんな時間にこそ本作品の神髄が詰まっていると信じて止まない。

【大人になったなでしこたち】

各務原なでしこ
「私たち、すっかり大人になりましな~」というセリフが実に染みる。大きなリュックを背負って電車を乗り継ぎその健脚を大いに生かしていた彼女も自分の車を持つようになり、どこへでも行けるようになった。変わらないように見えて変わった、いや実はあの頃から何も変わっていないのかもしれない。そんな感情の一番の体現者。

志摩リン
とにもかくにも名古屋勤務のインパクトよ。地元オブ地元の日常光景がありのままに映し出されることがこんなにも嬉しいのが『ゆるキャン△』の偉大さか。就いた仕事も実に親近感アリアリすぎて…おっとこれ以上は(汗)。学生時代の「ひとり」と社会人としての「ひとり」。その違いを肌で感じられるのが彼女の彼女たる所以やね。

大垣千明
本劇場版の実質的な主人公。現時点で社会人として最も生き生きと活躍できているのは彼女で間違いない。その学生時代の悪ノリ根性を社会人としてのアクティビティに上手く転換できたのは実に素晴らしい。こういう人材が生きるには懐が深く理解ある上司ありきだとは思うけど、良い職場環境にも恵まれているようで何より。

犬山あおい
小学校の教師という職業選択は意外だったが、個人的に教師という職業には一目置いているのでたいしたもんだというのが率直な感想。劇中では千明との山梨コンビが現役だったのが実に良かったわね。色々なことが変わってしまったけど、巡り巡って変わらないものもある。そんな風に一息付けたことが何よりも嬉しい。

斉藤恵那
え、もしかして結婚してるん?それはちょっと攻めすぎでわ?いや、あり得るのは分かるけど…からの実家だったんか~い!で結構振り回された(笑)。おそらくあの方はパパなんだろうけど、旦那かもと思わせるミスリードはちょっと意地が悪いわ…。ビジュアル的には一番大人びた印象があるわね。ちくわが時の流れを感じさせる。

土岐綾乃
彼女とリンのバイク勢としての親交については3期に期待だと思うので、アニメ勢としてはイメージより仲良いなという印象も受けたわね。ダルそうな喋り口調もそのままで、黒沢ともよさんの演技やっぱええわ…。このメンバーでは一番モテそうというのが当時からの変わらない印象で、自分も密かにお気に入りのキャラである。

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