マガジンのカバー画像

公開予定じゃなかったもの

96
運営しているクリエイター

#短篇小説

中毒だって思ってる。

中毒だって思ってる。

わたしにとって書くと言うことは、精神安定剤だ。

こちらの世界で発散してるから、現実世界に持ち越さなくて済んでる。

これがあるから穏やかでいれる。

人に優しくできる。

中毒だって思ってる。

やめたらダメという。
やめたら壊れてしまうという。

暗示にも似たもの。

無意識にそれを恐れてるから、わたしは書くことをやめない。

それでもいい。

少なからずわ

もっとみる
寂しいって言葉は自分のための言葉

寂しいって言葉は自分のための言葉

転校することになった。

みんな寂しいって言ってる。

私は、どうだろう、

そんなに離れてるわけじゃない。

死別じゃない。

なら、会いに来てよ。
会いに来るから、そっちも会いに来てよ。

求めちゃうのは、弱さかな。
離れてしまう事実は私の事実だから。
私がみんなから離れるだけ。

さみしいなんて言ってやんない。

言葉は軽いなぁ。

さみしいって、ただの自

もっとみる
「出会ったのが、ここじゃなかったら、絶対知り合いになってないや。」

「出会ったのが、ここじゃなかったら、絶対知り合いになってないや。」

ちゃんと生きてる?

そんな手書きのメッセージで紹介されているのは、本棚に並べられた漫画だ。

ここの本棚に並んでいるものは、そのほとんどが店長のものらしい。

ジャンルはバラバラ。
少年・少女漫画、ちょっと目をはばかるような成人向けのものまで。
媒体も、漫画だけじゃなくて、小説、辞書、学術書、地図や絵や建築物の写真集、絵本etc.

内容に至っては、もはや何がなんやら。
ほとんどの世界の

もっとみる
綺麗になれ、綺麗になれ

綺麗になれ、綺麗になれ

 今日はなんかとても疲れた。理由はよくわからない。疲れがたまっていて身体がだるい。全身倦怠感。疲労困憊ってやつだ。
「なーにじじいみたいなこと考えてんだ、うちは」
ひとりごちる。今日はいつもより長めに浸かっとこ。そう思い立つと本棚からお気に入りの小説をとってお風呂場に向かった。

 お気に入りの小説は石田衣良さんの『美丘』。あらすじを読んで何の気なしに買ったんだけど、とても良かった。だから落ち込ん

もっとみる