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『働かない技術』(新井健一著)を読んで、キャリア教育の必要性に気づかされた話

教員の働き方改革に関するヒントがあるかなと思い、手に取った『働かない技術』。表紙の挿絵もかわいい感じで、気軽に手に取れた。読み進めていくと、理解が難しくなってきたころに、「SCENE」というコラムのような現場の事例が時々盛り込まれていて、話の内容が落とし込みやすかった。
ただ、働き方改革!効率的な働き方!というよりも、キャリアの築き方などの話が丁寧に行われていたように感じた。

VUCAの時代でも日本企業は新卒一括採用を続ける

この話が最も興味深かった。
日本企業が一括採用を辞めない理由は、3つあるそうだ。
1つ目は労働力人口の減少。多くの若者を確保するために一括採用は必要。
2つ目は日本企業の強みの維持。日本企業の強みは、集団・組織であることによって発揮されるので、まだ価値観や社会に染まっていない若者の採用は必要。
3つ目は若者側の自己責任の重圧緩和。学生から、社会に出るときに最初から、個人で生涯キャリアを自己管理することになると学生個人にとってはすごいプレッシャーになる。若者が自分の生涯キャリアを構想する「義務」と「自己責任」を背負うプレッシャーを軽くしてあげるためにも新卒一括採用は行われ続ける。

ここで、著者の投げかけた問いが印象的だった。
「じゃあ新人に『義務』と『自己責任』を教えるのは誰?」

企業では、企業人としての「権利」と「自由」は教え込まれるので、現在もその2つに目が行きがちである。でも、終身雇用も年功序列も当たり前ではなくなっているこれからの時代において、「主体的で自律的なキャリア形成」が大事だと言われているし…どうやって「義務」と「自己責任」を学べというのか。

カギとなるのは「キャリア教育」

そこで思ったのが、「やっぱりキャリア教育ってめっちゃ大事だな」ということである。

住んでいる地域によって振り分けられた義務教育を終えて、何となく偏差値で選んだ高校や大学に進学し、内定がもらえた企業に就職。そのまま年功序列で給料や職位が上がっていって…という誰もが階段を上れる幻想を妄信してはいけないと新井氏も述べている。「今こそ『あり方』を学ぶことがたいせつである」と。

この「あり方」については、つい先日中学2年生に向けて、「自分の『ありたい姿』ってどんな姿?」というテーマでワークショップを実施したばかりである。初めて自分で自分の進路を選択していくという時期を間近に控えた生徒たちが、「どうありたいのか」「どんな人生にしたいのか」を考える経験を通して、自分の大事にしているものや価値観に触れる機会となった。

就活で自己分析はするけれど…

社会に出てから考えればいいと思われるかもしれないが、それでは遅い。というか、経験不足である。よく大学生が就職活動で自己PRなどをする際に、就活本に書かれているような通り一遍のことしか書けないというような話を耳にするが、自己理解を深める経験をしてきていないのであれば、仕方のないことだと思う。様々な経験は積んできているはずなのだが、それが自分の物(啓発的経験)にはなっていないのだろう。

「自分には、こんな強み(長所)があります。それは、このような経験があったからです。その経験で自分はこのような感情を抱き、自分はこういう信念(価値観)をもっていると気づきました。御社の~という社風において、自分の強みは~場面で活かせると考えます」くらいのことであれば、中学生くらいからスキルを身につけておくことで難なく作成できるのではないだろうか。

また、12歳ごろから自分の内面と向き合って生活するのと、22歳で初めて自分の内面と向き合うのとでは、意識レベルが違ってくるので、行動も変わってくることが予想される。

まとめ

「働かない技術」を読んで、私が感じたことは「どのような働き方をするのか、自分のキャリアの築き方に対して『義務』と『自己責任』を背負えるようにすることが大事。そのためにも教育課程ではキャリア教育を行い、社会に出てからも自己研鑽を重ね、自分のキャリアを自分で管理できるようにしとくべき。」ということである。

となると「働く技術」というタイトルでも良かったような気もしているが、もしそうだったら私は手に取っていなかったかもと思うと、してやられた感もあったりする。


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