紺野

文芸サークル伽藍堂で書いておりました

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  • はやく生まれ直したい

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やむを得ない外出をした

昨日、知人が亡くなったとの知らせが来た。一度おなじ舞台で一緒にお芝居をした人。葬儀もできないこの情勢、今朝一番にお線香だけ上げてきた。行動としてはそれだけになる。ご遺族にもお会いできなくて、初めて包んだ香典は持ち帰ってきてしまった。 思ったよりなんともないけど、一緒に歌った劇中歌を聴いたらちょっとこみ上げてきた。もう出棺されてしまっただろうに、どうにも遅い。音楽の助けを借りなきゃ故人を悼むことすらままならないのがまだ子供すぎる証左なのだろう。知人を初めて亡くした、という自分

    • MELOGAPPAに泣く

      表現の手段を持っている人間は強い。私は彼らが羨ましくてたまらない。 MELOGAPPA『娘の1歳の誕生日をラップで祝ってみたい』という動画を観てみてほしい。眩しくて愛おしくて、私は何度も繰り返し観た。友人たちが1バースずつ担当して一つのオリジナルソングを作る文化をまねた、メンバーのさくまさんによる娘へのバースデーソングである。 多彩な友人たちのリリックすべてに娘への愛情があふれている。「生まれてきてくれて、大きくなってくれて、本当にありがとう」が最初から最後まで詰まっている

      • なんだったっけな

        かなしい。 通勤に歩いているとき、布団に潜り込んだとき、手元の画面から目が離せないままお風呂をずるずると渋っているとき、日に何回も頭に浮かぶ。つらくはない。つらいのかもしれない。けれど、かなしい、の方がしっくりと馴染む。悲しい、でもない。漢字表記から受ける印象ほど涙にくれてはいない。もっとぼんやりとして、なんとなく、冗談めかしてコミカルですらあるような、そんなかなしさ。これは何だ。 しんどい、ばかりが頭に浮かぶ時期も確かあった。今はそうではない。脳髄が痺れている気がする。

        • はやく生まれ直したい その2

          前回の投稿からずいぶんと間が空いた。この間わたしは無事に卒論を書き上げ、おそらくは卒業要件を埋め終えた。そこにかぶさるようにして新生活の準備がなだれ込み、四方八方からせっつかれながら最後のアルバイトも終えた。ずいぶんと状況が変わった。ようやく少し落ち着いて溜め込んだ日記を書いていく過程で、続き物にしていたnoteの記事を思い出した。 8月から全く進めていない。さすがにそろそろ、簡単にでもまとめておかねばならない。 激情との折り合いについては今も試行錯誤しているので。 正

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        • はやく生まれ直したい
          2本

        記事

          Q.あなたは神を信じますか?

          A.特定の神を信仰しているわけではありませんが、神の存在は求めています。 カルト宗教にハマりそうな問答からこんにちは。また寄り道をして己の開示を進めます。 こんな応答をしたが最後、「そんなあなたにご紹介したいのがこちら!」とばかりに勧誘への道が開けてしまう。別にどこかの教団に属したいわけでも、他人の作った教義に従いたいわけでもないのだけれど、自分の中で信仰心は存在感が大きい。 先日、上野の東京国立博物館に行った。目的は最近熱を上げている刀剣鑑賞。大包平だの三日月宗近だの

          Q.あなたは神を信じますか?

          今私の願い事が叶うならば

          診断書が欲しい。正直もうどんなものでもいい。体の状態を正しく診た結果であればなおいい。容赦が欲しい。 高校生の頃から時々考えるようになった。私の将来を明るく見積もった両親は、私を田舎の中学校から首都圏の高校にやることにした。高校生に一人暮らしはさせられまい。会社を動かせない父親を残して、母と引っ越してきたのが今から6年前。 高校生の娘のために世帯を分ける、という溺愛っぷりである。当然、期待されるものは大きい。官僚でも弁護士でも何にでもなればいいさ。実際に掛けられた言葉であっ

          今私の願い事が叶うならば

          はやく生まれ直したい

          とある舞台の映像を観て、私はそれに熱狂してしまった。あまりに輝いて見えたので、一ファンとして見守るどころではなかった。同じように生きている人間とも信じられず、それでいて激しく嫉妬した。 さほど歳の変わらない若い役者が、あれだけの大舞台に立って、数万のファンに夢を見せている。自分がそのような人生を志向しているわけでもないのに、劣等感で気が狂いそうになった。 素晴らしいパフォーマンスで身を立てて、たくさんの人に求められている。人ひとり輝かせるためにきらびやかな衣装が仕立てられ、

          はやく生まれ直したい