やむを得ない外出をした

昨日、知人が亡くなったとの知らせが来た。一度おなじ舞台で一緒にお芝居をした人。葬儀もできないこの情勢、今朝一番にお線香だけ上げてきた。行動としてはそれだけになる。ご遺族にもお会いできなくて、初めて包んだ香典は持ち帰ってきてしまった。

思ったよりなんともないけど、一緒に歌った劇中歌を聴いたらちょっとこみ上げてきた。もう出棺されてしまっただろうに、どうにも遅い。音楽の助けを借りなきゃ故人を悼むことすらままならないのがまだ子供すぎる証左なのだろう。知人を初めて亡くした、という自分の身に起きた出来事でしかない。故人にとっては初めても何もないのに。

黒づくめの喪服は持っていなくて母に借りたのに、さすが親子というべきかしっくり来てしまった。肩幅だけが合わなくて窮屈だった。蒸し暑い初夏の気温の中で、ジャケットの下にじっとり汗をかいた。のどが渇いて水を飲んでいる自分はどうしようもなく命くさい。

黒が元来似合ってしまう私も、死んだら白装束なのでしょう? 黒はどこまでも生者のまとう色で、本当はいちばん生の側にあるのかもしれない。死を標榜して選ぶ色は白でなければならない。死にたがりの私はきっと長生きする。

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