見出し画像

大手出版社から本を発売しても、状況は変わらなかったという話

書くことを仕事にすることの現実を知ってほしい

最近出会った中でとても多いのが「小説家になりたい」「本を書きたい」というような、書くことを仕事にしたいという方です。

こうして書くことを副業としていて、しかも自分が好きなジャンルのことを書いている訳ですからそれは自然なことだと思います。

不思議なもんで、こういうのって引き寄せるんですよ。なんなんでしょうね。「スタンド使い同士ひかれあう」みたいな。私のスタンドは多分ものすごくグロいかあまり役に立たないやつのどちらかだと思いますが…

さておき。

書くことを仕事にすることの現実って何度か話していますけど、とにかく厳しいんですよ。それは記事にも書いての通り、好きなジャンルって競争激しいし、単価安いし、もう実力者が居座っているし…。

そうなってくるともう好きじゃないところに参入するしかなくて、結果として好きなことがしたかったのにそうじゃないことを書いている、みたいな本末転倒を招く結果になるということがその時の趣旨でした。

やりたいことを仕事にしたい、それが書くことっていうのは結構多くの方が辿り着く先で、それ自体は全く否定しないですけど、こういう現実を目の当たりにするとやっぱり話したくなるし、それを知ったうえでこの道を目指してほしいなぁと感じるんですよ。

本を出版した後のことを語る人は少ない

でね。

じゃあ、好きなジャンルでウェブとかラジオ・TV辺りで少ないながらも仕事を獲得して、少しずつ知名度を高めたとして、果たしてその先に何が待ち受けているかということについて話したいと思います。

具体的には、昨年私が大手出版社である光文社から「スポーツとしての相撲論」という新書を出版したわけですけど、その後ライター西尾の仕事の状況って何か変わったのか?というのが大事な点です。

皆さんの中で、本を出版するってどんなイメージですかね?

少なくとも出会った方の中ではかなりステージの高いことで、本を出版することそのものを目標としている方もかなり居るという印象です。

一昔であればともかく、最近ではkindleで出版することも可能ですし、そうやって自分で書いたということを一つのステータスにしているという方も多いんですよね。

やってみればわかりますけど、相当労力使うんですよ。何しろ100000字前後書きますからね。しかも、ブログなんかと違って、その本の構成を考えてこの100000字を埋めなければならないから、好きなことを書いているだけではダメなんです。

ある意味子供の頃の読書感想文みたいな、原稿用紙に必要な字数を埋めていくみたいな感じの作業でもあるんです。まぁそれはそもそも本を書くことの難易度が高いっていう話ではあるんですけど。

本を書くっていうのはそれくらいブログ記事を書くこととは異なる競技だということです。ブログ記事の3000字って短距離走みたいなもんですけど、本の100000字って本当にマラソンというか、ウルトラマラソンでもない。これって、際限なく続く上にやみくもに走ればいいわけではないので本当に難しい。

本を書くのはそもそも難しいっていう話ではあるんですけど、でも最近では変な話、やろうと思えば誰でも出来ちゃう。Kindleとか自費出版した方のその後の話っていうのは聞くことが出来るとは思うんですけど、でも案外この話って自分から本を出版する形で動いた方からすら聞かないんですよね。

これ、どうしてなんだろう。

本を書いた先に素敵な未来が待ち受けていたら、そのことって話したくなる筈じゃないですか?本を書いたことを実績としてプロフィールに掲載している方がとても多いのに。

大手出版社から昨年本を出したが状況はそう変わらない

もう結論から言っちゃうと、そんなに状況って劇的に変わらないんですよ。

いやね、実は結構期待していたんです。というのも初めての本の出版ですし、出版社も大手でした。どこの本屋行っても「スポーツとしての相撲論」ってあるんですよ。地元の登戸にもあって、感激したのは私が塾帰りにいつも行ってた住吉書房っていう30年くらいやってるどこにでもあるような小さな本屋にすら陳列されていたらしいんですよ。

それくらい流通していて、光文社もプロモーションしてくれて、週刊新潮にも文春オンラインにもVISAの月次の冊子にも書籍紹介されて、FM YokohamaやSBSラジオにもこの本がきっかけで出演して。

SNS界隈でも話題になっていたんですよ。ハッシュタグ付けて感想書いたらノベルティプレゼントします!っていうキャンペーンを打って戦略的に話題に出してもらうように計算はしたんですけどね。

やることはやったし、話題にも出た。
まぁまぁ売れた。

それでも、自分の状況は変わらないんですよ。

1年経って、本を出版したことって自分のキャリアの重要な部分にはなりました。ライターとして本の出版実績が無かったことって引っかかっている部分だったんですよ。だからその大きな壁を越えたことも、その1行が加わったことも、大事な出来事ではありました。

多分、その自分の越えたかった壁を破れたことと、越えた先にあるものに期待しすぎちゃったと思うんです。

というのも、私の相撲ライターとしてのキャリアで残された大きな仕事は本の出版だけだったんですよ。出来たらいいなぁと思っていたNumberでの執筆も、ラジオ出演も、新聞のコラム執筆も、テレビ番組の監修も、ヤフー公式コメンテーターも、描いていたものは全部できた。

仕事の話は来るけど、でも狭い世界だから来てもたまになんですよ。だからこそ本を書いてみて最後のピースが埋まって、自分に足りなかったものが埋まった後の世界を見てみたいっていう想いが強かったんです。

去年は出版直後だったから本の出版をきっかけにした仕事っていただけていましたけど、2022年にそれが過去のものになって、出版前に状況が戻ったような感じです。

なるほどなぁ。
こんな感じなんだ。

結構落胆もありました。あと、最後の目標が達成されたことによっていよいよ相撲の世界で登るべき山が見当たらなくなったというのも結構頭の痛いところでした。2冊目の本を書いても多分状況同じでしょうし、前にも話しましたが言うほど金にはならないですしね。

だから、もし本を書くことを目標にしていたり、本を書くことで劇的に状況が変わるという期待をされている方が居るとしたら、私みたいな事例もあることを覚えておいてほしいです。

勿論ベストセラーになったり、SNS界隈で業界の壁を越えてバズったりするとそれは違うと思いますが、世の中の大半の本って人知れず出版されて、知ってる人は読んでくれて、そこで完結する。

本を書いて何かが大きく変わるのはレアケースというのは自信をもって言えます。

本を書いた後に何をするかが大事

私がnoteを書き始めたのは、実は「スポーツとしての相撲論」を書いた先を見たかったからというのが大きな理由です。

相撲のことは今も好きですし、これはライフワークとして続けていきたい。狭い世界でなかなか難しいことがある業界なのは間違いなくて、だからこそ私みたいな外部の人間が言いたい放題出来るというのが貴重で。

この位置で記事が書けることは本当に嬉しいし、これからも続けていきたい。でも、まだ何か出来ると思うし、次の山もあると思うんです。そして、今の自分ならその山を見つけて登れちゃいそうな気はするんです。

有難いことに、本を出版して劇的に状況が変わらなかったからこそ、そのことに気づけました。社会人としての経験も、ライターとしての活動も、そしてオチのある話についても、オールジャンルで書いているのは、相撲について書き始めてから皆さんにお見せしていなかった部分で、恐らく価値があるものだと思ったんです。

だから今、久しぶりに相撲以外について書いてみて、今までとは違う反響があって、オーディオブログの方からスカウトを頂くような新たな展開まで出てきて、やってみるものだと思いました。

繰り返しになりますが、本を出版しても殆どの場合は劇的に状況が変わることはありません。だから、その後が大事です。そこを最終目標とするか、その経験があるから出来る何かを探すのかはその人次第ですが、その山を登れたら違う山も登れるとは思うんです。

本を書くだけで終わるのは、本当に勿体ないことなんですよ。

■Voicy様に西尾のnote記事をアップ頂きました!

なんと西尾のブログを朗読いただいています。2回目も本日アップされました。

ちなみに全4回ですので、あと2回私の記事が掲載されます。

■挨拶・自己紹介・雑談用の記事も作りました。

今回の記事の感想とは別で西尾と話したい!という時はこちらをご利用下さい!

■今日の記事のコーナー

「実は私xxなんです」をここまで分析して、自分のトピックを選ぶって凄いなぁと思います。そして結論としてこれを選ぶというのがまた面白い。

この記事が参加している募集

#スキしてみて

526,418件

#ライターの仕事

7,354件

よろしければサポートお願いいたします! 皆様のために今後使わせていただきます!