見出し画像

海外でサラリーマンして心得たこと 1: 母国語無しで働くのは0を目指す永遠にマイナスの挑戦

海外で海外資本の企業で働いて実感したこと、学んだこと、個人的悟りをシェアします。

まず1つ目が言語について。「割と話せる」はせいぜいレベル0に近いマイナスであって、ネイティブの中で自分の価値を発揮するのは相当しんどい


 日本でグローバルに働くのと、海外で働くのは大きく異なると思う。

 言語の面でいうと、日本では日本語をマスターしていることを前提に、プラスαでその他の言語ができることが強みになるが、
海外で働く上で日本語がネイティブであることに基本意味はない。
勿論これは海外で日本を相手にしたり日本のサービスを提供するビジネスである場合を除くが、日本をアイデンティティにしないビジネスの場合、日本人であることや日本語が話せることに価値はない。使わないのだから、そりゃそうだ。

 日本では英語やそのビジネスに使われる言語の能力があればあるほどプラスになるが、海外ではネイティブであることはプラスではなくあくまで0(基本ライン)である。
どんなに英語がネイティブでも、英語が共通語の場では0であって、出来ない分だけマイナスになるに過ぎない。
フランス語を割と話せるようになったからと言って、周りのフランス人はニュアンスやユーモア含めてフランス語を使いこなすことができるのだから、彼らと一緒に働く上で「割と話せる」はせいぜい0に近いマイナスなのである。

 だからこそ、日本でグローバルに働く人は多くても、海外で働いている日本人で完全に日本と関係ないビジネスをしている人は少ないのだろうし、それは本当に理にかなった選択であると思う。
日本を拠点にしているのなら、日本人であることや日本語を話せることがベースにあるので、それに加えて他の言語を使えることはプラスに転じる。
海外でも日本とのやり取りがあったり、日本を売りにするビジネスの場合には、日本語を話せたり日本を知っていることはプラスになるので、他の言語が多少できなくても自分の言語的能力を日本語で補完できる。
ただし、日本と関係ないことを海外でしているのなら、日本語で補完は無理だ。これまで培ってきた語彙力も、微妙なニュアンスも、印象の良い言い回しも、使うことは無い。
 言語というのは普段は意識をしていなくても、やっぱり自分のアイデンティティに強く影響を与えているものだと思う。それが丸ごと使えなくなった状態で、なのに同僚は母国語含めアイデンティティ完全体の状態で、その中で同等に肩を並べようとするのは、いやぁ、大変なことだ。本当に。


 母国語以外の言語をネイティブレベルにすることは非常に難しい。頑張って頑張って95%ネイティブになったとして、それでも0には到達しない。最高到達点が「不便しない、遜色ない」0なのである。
もし海外で、その国の言語やその会社の公用語がネイティブレベルではない日本人が、日本と関係ないビジネスに従事しようとしているなら、言語の面では非常にタフな挑戦をしようとしていることを覚悟した方が良い。

 
言語はあくまでツールであって、その職における自分の経験、スキル、センスで勝負できると思うこともあるだろうが、人とのコミュニケーションが必要であればあるだけ、意思の疎通での障害が本来の力を発揮することを阻害するのだということも忘れてはならない。
 何をすればいいか、何が求められているかが分かりさえすればそれに完全に合う成果物を出せる力があったとして、その「何」を汲み取るのに障害があると元も子もないのである。

 たとえリスニングでネイティブの話を8割理解できて、自分の言いたいことも8割表現できるスピーキング力があったとしても、相手から来た質問を返すたった1往復のキャッチボールで、単純計算で80%x 80% =64%の情報しか相手に伝わらないのだ。自分が質問を理解する時点で2割の情報が失われ、それをなんとか想像で補った上での自分の意見を表現するのにまた2割の情報が失われる。
 無論、聞き直したり、相手にゆっくり話してもらったり、その他工夫をしていくことになるが、大人数での会議や急ぎの場面、上手くいかないことは山ほど出てくる。
パッと口頭でのカジュアルな指示を一度聞くだけでそつなくこなしてしまう同僚と自分を比較して落ち込むこともあれば、自分の言いたい意見を伝えることができずにやるせなくて仕方ないこともある。

 日々自分の至らなさを感じることはあっても、プラスに感じることは無いし、努力の先の最高到達点が0であるという、厳しい挑戦をしようとしているのだと覚悟した方が良いと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?