電話越しの苦悩
相談員として働いていたとき、よくサービス利用や計画作成について電話で入ってくる。
電話での会話が苦手で、できれば直接会って相談したいんだけど・・・。
(と、僕は心の中で思っています)
「市役所からの手紙でサービス更新の紙が入っているんだけど」
「サービスを利用するには計画がいるって言われたんだけど」
と、なんだかちょっと相手は初めてだから不信感あり。
だって、これまでやってきたことと違うからね。
どうしたらいいのか、本人に説明している中でもちょっと違和感。
本人としては、一生懸命話しているつもりでも、相手との情報量が違うこともある。また、相手からの熱量も伝わりにくい。そして、相手との「話したつもり」が起こりやすい。
「申請について」と聞いたから、福祉サービスの利用と思っていたら、年金のことだったり、手帳のことだったり。
だから「次回は(できれば早く)直接会いましょう」となる。
また、連絡手段の一つに「携帯電話」がある。
「いつでも」「どこでも」「何度でも」が特徴だよね。便利と言えば便利、恐怖と言えば恐怖。
相談員の携帯電話の番号を教えることはあまりないけれど、相手からどうしても連絡を取る必要がある時や、緊急時の連絡先として把握しておくときには教えています。
だったら、相手の番号だけを教えてもらえればいい、と思うかもしれないけれど、相手側の設定で「電話帳に登録されている番号以外は通話できない」となっていると、相談員の番号も教える必要が出てきます。
でも、教えてしまうことでの問題もあった。
「困ったことがあったら、連絡ください」と伝えても、人によっては「気になったら、連絡してください」になり、「いつでも電話してもいい」となる。
さすがに夜中には電話は出れないし、1時間以上の電話はできないです。
通話の長さも人によっては様々ですが、長時間になってしまうこともありうる。もちろん、内容によっては長くならざるを得ないこともあります。
どうしても話さなければならないことを中心に話していても、相手は「今、聞いてもらわないといけない」という思いから、なんでも話そうとする。
だけど、相談員はたくさん聞いても「今やること」と「後やること」を考えていることがある。
電話で相談して「まず」できることは「確認」が中心。病院、市役所、関係事業所など。
すぐに対応してほしいから、電話をしているはずなんだけど、内容が整っていないから、間違ったことを伝えられることもあり。(本人の思い込みや、言い間違いで)
また、一方的に終わることもできてしまうのも電話の特徴です。
話はまだ終わっていないんだけど「もういい!!」と終わったり、急に「沈黙」状態になり、用事があるから(?)と終わったこともあり。その後で、掛け直してもつながらないこともありました。
お互いさまに都合の悪い話題が出てきたら、終わらせたいのは同じだね。
だからと言っても、相談員から切ることは、相手に悪いからあまりしないかな。
また、今の時代はSNSやメールなどでやりとりをすることも考えられるが、ちょっと福祉ではやりたくない。文字だけでは、本人の状態は電話以上に分からない。メッセージを送るとしても、日程調整はしたことがあるけどね。
「助けて」とメッセージが来ても、慣れないときにはびっくりしたけど、何回も続いてくると、落ち着いて対応できるようにはなってきた(はず)。
電話をかけるときに気をつけているのは、第一印象の「声」である。それも相手の性別が分からない状態で対応する。
僕の場合は、声が高いから電話では「女」と思われてしまうが、実際に会うと「男」でガックリさせてしまったこともある。
そして一言「優しい声だから、女性だと思った」と。
声だけ聞こえることは、対面しているときには見えていた『眼』が見えないことで、相手が本当に言いたいことが分からない。しかも、電話は一方的に話を「止めること」も「続けること」もできる。
時々、悩んでしまうのは
「もしかしたら、電話相手はウソを言っているかもしれない」
「今、話していることはそんなに重要ではないかもしれない」
ということ。
『気を引くために話しているのであって、本当の相談は・・・』
と思い、直接会いに行くと、思い過ごしなこともあるが、
「うわぁ、(問題が)ごちゃごちゃ~。」と
電話は一つの連絡手段であって、全てをカバーできるものではない。そして、電話は「怖い」。
声一つで相手の人生を変えるかもしれない。
すぐに会いに行けないことで、相手を「不安」にさせることも、
目の前にいなくて恥ずかしくて言えない「感謝」の言葉を伝えることもできる。
目の前で「泣く」ことができなくても、電話口ではできてしまう。
最初の一歩は重要だと思う。
その一歩が電話だとしても、
本人の思いを聞き逃してしまわないように、
この機会(出会い)を逃さないように、
本人の勇気を無駄にしないように、
相談員は電話の先の見えない相手に最大限の想像力で、誠意を伝えることで「見えない」ことに不自由を感じさせないようにしていきたいです。
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