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「書くこと」と福祉

 支援者や相談員での「記録」は、日々の支援や計画のために必要であり、書くことで、運営にも必要なものです。

 ただここでは、書いて伝えることについて書いていきますが、利用者にとっての「書くこと」の意味を考えてみたいと思います。

 様々な病気や後遺症、障がいで書けなくなってしまったということもあるかもしれませんが、そこも含めて書いていきます。

高齢者

 ある人は教師をされてきたり、ある人は書道の先生をされてきたり、ある人は…と、これまでの長い人生で、たくさんの文章や手紙を書いてきているので「書くこと」に抵抗がない。例え、認知症であっても忘れていません。視力が衰えてきたとしても、書く位置を手伝えば、筆順は正しく、揺れながらの字であったとしても、読めない字ではない。鉛筆で書くことは苦手だけど、筆で書くことは慣れている人もいるかもしれません。
 だからこそ、「きれいな字」「丁寧な字」であり、書くことを面倒なことだとは思ってしまわないようにしたいです。

 本人としては「丁寧に文字が書けなくなってしまった」ことについての落ち込みがある。「書きたいけれど、書けない」思いを受け止めていく。 

身体障がい者

 身体が思うように動かすことができずに、ペンを握ることができないこともあるとは思いますが、「書くこと」については自助具や補装具を使って支援することもできます。

 また、パソコンやIT技術の発展で、入力支援ソフトや、音声入力ソフトが増えてきたので、書くことによる表現の場が広がっています。
 では、どんな補装具があるのか、ということは、以下の「意思伝達装置導入ガイドライン」を参考にしてください。

重度障害者意思伝達装置としての基準は以下です。(抜粋)

【購入基準】
ひらがな等の文字綴り選択による文章の表示や発声、要求項目やシンボ
ル等の選択による伝言の表示や発声等を行うソフトウェアが組み込まれ
た専用機器及びプリンタとして構成されたもの。その他、障害に応じた
付属品を修理基準の中から加えて加算することができること。
【対象者】
重度の両上下肢及び音声・言語機能障害者であって、重度障害者用意思伝達装置によらなければ意思の伝達が困難な者。
難病患者等については、音声・言語機能障害及び神経・筋疾患である者。

 また、上記のような補装具や福祉用具がなくても、ヘルパーや支援員での「代筆」も考えられる。代筆者の癖もあるので、本人の思うような文章は書けないかもしれない。だけど、本人の発する「言葉の力」や「思い」をきちんと受け取った言葉は、本人のものとして表現する。

知的障がい者

 筆圧の強すぎる人も、弱すぎる人もいると思います。それと、文字の大きさや形が独特なことが多いです。「文字を書く」ことが好きと言うよりも、連絡ノートや日誌を「文字で埋める」ことが好きなのかもしれません。

 ただ、自分で文章を「考えて」書くというよりも、まねてしまうことが多くなってしまったり、毎日同じ文章が続いてしまい、支援が必要なこともあります。また、長い文章も書くことが苦手な人もいます。単語で書くこと(住所や氏名等)が慣れすぎてしまったことによる弊害かもしれませんね。

「書きたくない」人

 「書きたくない」ことに、共通しているのは「書くことを強要している」ときである。何でこんな文章を書かないといけないのか?と利用者に思わせてしまったら、なかなか進まない。支援員や相談員が「書く理由」を伝えていないと拒否をするのは当たり前です。
 また、福祉サービスを利用してから、書くことが増えてきたけれど、いきなり「書いて!」と言われても、訳が分からず、書き方も分からない中では、苦痛だったと思います。
 ちょっと話がずれてしまいますが、記録を書くことの重要性は分かっているけれど、「書くだけのことをしていない」「毎日同じことを書きたくない」時には書けないということもあるかもしれない。

「書くこと」の意味

 伝えたいことがあり、書くことで「自分の存在」を表現していくこともできて、夢中になってひたすら書き続けることもある。
 その一方で、書いていかないと自分の言いたいことや思いが伝わらないので、必死になる。

 そんな時、自分の思いを書く時にはnoteやSNSも一つの方法である。パソコンやスマホを持っていないと利用できないというデメリットはありますが、「伝える」=「分かってもらう」ことで、「本人の安心感」にもつながる。

 支援員や相談員は、改めて利用者の書いた文章を読み返して感じて欲しいと思います。書くことで伝わってくる本人の「思い」や「迷い」を感じ取ってほしいと思います。そして、書くことによって「他人を動かすことができる情熱」や、自分の命をすり減らしてまで伝えたい「思い」があることを感じ取ってほしいと思います。

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