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マルチバースに対抗出来るのはタイムループだ〜映画「MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」

最初はこの記事のタイトルを「インディーズ映画が熱い」としていたのだけど止めた。
そもそもパルコ配給の映画がインディーズ映画なのか、
パルコはメジャー配給なのか、
その辺りが微妙だったから。
ご存知の方教えて下さい。

映画館で予告編を観た時に気にはなっていたが、気がついた時には近場では終映していた。
その後もなかなか面白いという評判が聞こえてきて、やっと今回配信で観ることが出来た。

まず上映時間82分というのが素晴らしい。
(良い意味で)コンパクトにまとまっていて、小気味よい。
最近、やたらと長い映画が多すぎる。
「このシーンいる?」みたいな、なんでもやりたいことを打ち込んで観ました!みたいな監督のエゴに突き合わされているようなのも嫌だし、
上映時間を観ただけで躊躇する映画が本当に多い。

そして傑作!

ワンシチュエーションコメディと言っていいのかな?
舞台は小さなクリエティブ会社のオフィスの中だけでほとんどの話が進む。
ストーリーもどストレートにタイトル通り。
月曜から始まる1週間を何度も何度も繰り返すタイムループに入ってしまった。
1人、2人とその事実に気づきはじめ、やがて部長以外の部員6人全員がその事実を知る。
そして、このループの原因はどうやら部長が鍵を握っているようだ。
さて。。。という話。

月曜の朝にタイムループがリセットされて、また同じ1週間が繰り返される中、何とかこのループを止めるために四苦八苦するという内容なのだが、
いかんせん、ループ物はどうしても同じ事の繰り返しにならざるを得ないが、飽きさせないようなテンポよい編集と少しづつ起こる出来事のバリエーションが変わっていく、というかみんな繰り返しで学習していくので良い方向に改善していくのが、必然性を持って語られていく。

とにかく、ゲラゲラ笑っているうちに、
予想の斜め上を行く方向に話は転がっていき、
ここは何の会社だったっけ?トキワ荘か?みたいな展開になり、
やがて、会社って考えようによってはいいところだよな、
チームワークっていいな、
図らずもそんなことを思わせてくれ、
さらにこれまでの人生、これからの生き方についても考えさせてくれ、
そして最後はホロッと泣かせてくれる
そんな映画が今まであったのか。

演じる役者さんも皆さんとても良い。
有名どころは部長役のマキタスポーツさんと、最後のほうで少しだけカメオ出演的に出てくるしゅはまはるみくらいなのだけど、全然OK。
主演の円井わんさんも普通にいそうでお上手。
これから色んなところで見られるといいな。
マキタスポーツさん演じる部長、いい味出してます。
いや、いそうだな、こういう普段はなーんも考えてなさそうなお気楽な風を装っている人。
だけど、そういう人なりに色々あるんだよね。

そして、脚本と演出がまた素晴らしい。
企画・製作がCHOCOLATE Inc.で、監督の竹林亮さん、脚本の夏生さゆりさんも、CHOCOLATE Inc.所属の方のようで、
この会社はいわゆる様々なクリエティブを企画・制作される会社みたいなので、まさにこの映画の舞台となっているオフィスそのものなんだろう。

CHOCOLATE Inc.ではWebサイトを見る限り、本格的な劇場映画は今作が最初(*)のようで、そういう意味ではいわゆる映画製作会社ではないところが作った映画ということでも意味があるし、これからがとても楽しみ。

(*)2年前に「十四才の栞」というドキュメンタリー映画を制作されていて、こちらも胸アツの映画のようだが、残念ながら出演が一般の中学生なので、DVD/Blue-Rayや配信などではやらないらしいので残念。

今作の監督・脚本コンビでは3作目のクリエイションらしく、
1作目は同じくCHOCOLATE Inc.所属アーティスト"あさぎーにょ"さんのYoutubeチャンネル動画「もう、限界。無理。逃げ出したい」
これもネタはループ物で大変面白い。


2作目が劇団テレワークの配信お芝居「Bestfriend.com」でこちらもYoutubeで公開されているが、さっき見つけたばかりでまだ観ていない。


最近、映画業界ではマルチバースが大流行だけど、正直なんでもマルチバース設定はなんでもありになってしまう傾向があって、なんだかなぁという感が拭えない。
ループ物も一時期に流行って、食傷気味だったこともあるが、マルチバースと比べるとはるかに制限があるため、逆にアイデア次第で面白いものが出来るんじゃないかと思う。
これから、この監督・脚本コンビの竹林亮さん、夏生さゆりさんにはさらにループ物を探求してもらって、もっと面白い映画を作って欲しいと切にお願いしたい。



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