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エマ・ストーンに脱帽『哀れなるものたち』

いやぁ凄い映画でした。

ウィレム・デフォーもマーク・ラファロも凄かったんですが、
エマ・ストーンがもう途轍もない。

昭和風に言うと「体当たり演技」ってことになるんでしょうが、
これがそうとは言えないのが、パワハラ暴言灰皿投げるようなアタマのいっちゃっている昭和脳な監督に無理やりやらされたんではなくて、
エマ・ストーン自身が持ち込んだ企画だというような話を聞いたり。
そして彼女はプロデュースにも名を連ねているんですよね。

なのでこの映画の演技は全て思惑通り、彼女の描いた世界、そしてベラ・バクスターを具現化するための必然だったんでしょう。

まだ産まれる前の胎児を取り出して脳を母親に移植した、いわば本来の意味での人間とはいえないモンスターとして生を得たベラが、赤ん坊から幼児、そして少女から大人のとして知性を得るまでが描かれていくのですが、
エマ・ストーン、アンタは怪物ですか?
というような圧巻の演技を見せてくれます。

もうそれだけでお腹いっぱいなんですが、
142分という長尺の映画にも関わらずエンドクレジットが終わり客電が点灯するまで座席に座っていたのなんて久しぶりです。
それくらい、圧倒されてしまいました。

レーティングはR18+なので、もちろん子供は見れないんですが、高校生くらいであれば見て欲しいな、というような内容でした。
R15+の編集版とか出してくれないかな。

モチーフとして肉体性というのも1つあるから仕方ないところでしょうが、少し性描写が多過ぎますよね。
エロティックを表現するための性描写ではないので、全然イヤらしく感じることは意外にもなかったですが、やっぱり気まずさはあります。
1人で観に行ったのでよかったですが、配信が来ても家族がいたらちょっと観にくいですよね。
あそこまであからさまにしつこく描く必要があったのかなぁ、というのはありますが。

肉体性という点では、ダンスシーンが素晴らしいです。
本来ダンスというのは頭ではなく、身体が音に反応して勝手に動き出すもの、という事実を表現しています。
子供が音楽に反応して手足を動かして踊りだすという、まさにその感じ。

まだ上映はじまったばかりなので詳細は書かないでおきますが、見どころはとにかく他にも盛り沢山です。

まず映像が美しい。
リアルさよりも世界観を追求するために、明らかに書き割りの風景も多いんですが、それがまた独特の印象で。
セットも衣装もとにかく凝りまくっていますし。
ヨーロッパの監督さんだなぁ、という感じがあちこちに。

広角レンズを多用した風景ショットや、時折出てくる魚眼レンズを通してファインダー越しに覗いたようなカメラアングルは何か意味があるのだろうか?とずっと考えていたんですが、
後で知ったところによると監督のヨルゴス・ランティモスのそもそもの作風らしいですね。独特だなぁ。
監督作品を観ている人からしたら、この映画のあちこちにヨルゴス印が刻まれているんでしょうね。

監督作品でよく名前が出てくるのが『ロブスター』ですが、これは一度観ようとして冒頭で止めてしまったことがあったんです。
それはその時のムードと映画世界の設定がちょっとキツくて合わないなと思ったからで。でも、もう一度観直してみるか。
または『聖なる鹿殺し』も『女王陛下のお気に入り』へ行ってみるか。
まずはエマ・ストーン繋がりで『女王陛下の・・』からにしようか。

そういえば、『ロブスター』のさらに前のまだ英語で映画を撮影する前の作品に『籠の中の乙女』という作品がありますが、そのテーマが今作にも少し受け継がれているんではないかなと。

世の中の汚らわしきものの影響から守るため、子供たちを外界から完全に隔離して育てていた父親。ところが、とある女性の出現によって、一家は少しずつ崩壊への道をたどっていく。

ほら、そんな感じありますよね。
U-Nextで配信されているようなのでこちらを先に観てみよう。

もうとにかく全く退屈しない142分ですが、とても風変わりな映画であることも事実だし、R18+だし、観る人を限定するところはあるかもしれないが、ここで描かれていることはとても普遍的で皆がよく考えるべきテーマだと思いますし、
やっぱり若いうちに観て欲しいなと思いました。

そして、1回観ても分からないとことも多いですし、何度も見返すに足る映画かなと。

最後にタイトルの『哀れなるものたち』、Poor Thingsとは何なのか?
それは人間ではないのか。
「ものたち」は「者」ではなくてThingsだから「物」なのだけど、
肉体としての人間なのだろうか。
脳を取ってしまえば単なる臓器と器に他ならないけれど、
Poorなのは精神=脳ではないのか。
脳も臓器の一つだと思えばThingなのか。
難しいな。

あまり核心に触れた感想とか書けてないですが、いったん今日はここまで。

<了>

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