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BeHere/1942〜そこでリアルに起こった出来事に想いを寄せる

文藝2023年春号に掲載されていた古川日出男さんのテキストを読んで、つい先月までロサンゼルスで開催されていたある展覧会について書かれており、大変興味を持った。
日本人メディアアーティストの藤幡正樹さんによる「BeHere/1942」というものだ。
残念ながら現地へ赴くことも出来ず、JANM(Japanese American National Museum)公式サイトの情報と2本だけYoutubeにアップロードされていた関連動画でしかその様子は知り得ないが、わずかながら衝撃を受けたのでnoteに記録しておきたい。

「BeHere/1942」の1942は西暦1942年。
この年の5月9日土曜日を期限として、当時西海岸に在住していた約12万人もの日系アメリカ人はアメリカ政府により強制収容所へ送られることとなった。
当時の状況はプロの写真家たちによって記録されており、ドロシア・ラングとラッセル・リーの写真素材からキュレーションしたものを、写真媒体だけでなく、ビデオ映像やiPadとAR技術などの最新テクノロジーを駆使して当時の記録を次の世代への記憶へとつなげるため、80年後の2022年5月同日に西海岸でも多くの日系人が収容されたリトル東京内にあるJANMで開幕された。

第2次世界対戦中に起こったこの悲しい出来事は、山崎豊子の「二つの祖国」とそれを原作としたNHK大河ドラマ「山河燃ゆ」で知っていた程度だった。

松本幸四郎、西田敏行、沢田研二の3人のそれぞれ立場や思想の異なる日系アメリカ人を演じたドラマは、当時アメリカ現地でもそんな暗い影を落とす出来事があったのだということに驚き夢中になって毎週観ていた覚えがある。

今回、写真やビデオ映像の展示の多くはもちろん見ることが叶わないが、幸いにもiPadとARを使った屋外でのインスタレーション展示については、その模様が藤幡正樹さんの公式Youtubeチャンネルで観ることが出来た。


実際、小説やドラマで見知っていただけの情報も、80年の時を超えたとはいえ同じその場所でARで強制送還される直前の人々の様子を見せられると、想像を超えるリアルさで胸に迫ってくる。

家や財産の全てを処分させられて、スーツケース1つだけにこれまでの人生の全てをつめて、おそらく一張羅であろう精一杯の正装をして静かに収容所へのバスを待つ人々。
どのような想いで彼らはバスを待っていたのだろうか。

諦め、怒り、憤り、不安

おそらくそんな簡単な一言では言い表せない感情があったのだろうが、これまでの生活が国家権力の鶴の一声できれいさっぱりリセットされてしまうという事実、そして戦争という国家権力による暴力は決して許してはいけないということを改めて考えるための重要な教材の1つにはなるのではないだろうか。

もう1つUCLA公式チャンネルでのNeHere/1942展に関する4分弱のドキュメンタリー映像と合わせて観て欲しい。

(設定から字幕ー自動翻訳で日本語を選択すると日本語字幕が表示されます)


<了>

*カバー画像は"Japanese American National Museum"公式サイトです。


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