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もはやボウイの最新作『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』

昼休み時間+2時間有休を取って公開日初日に観に行ってきた。

IMAXシアターで観たので、本当に迫力のある素晴らしい音と映像を体験した2時間だった!

これは単なるドキュメンタリーではない。
もはやデヴィッド・ボウイの最新作と言ってもいいくらいだ。

映画は1995年のアルバム「Outside」収録の「Hallo Spaceboy」の4つ打ちテクノミックスでド派手に始まり、一気に引き込まれる。

そして、デヴィッド・ボウイ彼自身の語りが始まり、
ジギー・スターダストとしての初期からラストを飾ったBLACK STARまでのキャリアが総括される。

もちろん2時間の尺で多作だったボウイのキャリア全てがカバーできる訳でもないのだけど、
ティン・マシン時代がすっぽり抜けていたのが(その時代のショットはあったのかなぁ。。ちょっと分からなかった)、そういうことなのかなぁと少しだけ思った。

最初の方で(おそらく)1973年 ハマースミスオデオンでのライブで、
「The Jean Genie」とビートルズの「Love Me Do」のカバーを演奏しているシーンがあるのだが、なんとミック・ロンソンと一緒にギターを弾いているジェフ・ベックの勇姿が!!
多分、こちらの映像と同じもの。


そんな感じで音楽は基本的に全編ライブ映像なので、普段レコードやCDで聴いているアレンジと違うので大変よい!
そして、ライブ演奏のサウンドも大変迫力があり、IMAX効果でさらに数倍増しなのだけど、
日本でも大ヒットした『ボヘミアン・ラプソディ』の音響を担当したポール・マッセイなど素晴らしいスタッフがサウンドエンジニアをしている。
まるでライブを観に行っているかのような臨場感。
『ボヘミアン・ラプソディ』も最後のライブシーンが素晴らしかったですからね!

ボウイはアルバムごとにスタイルを変えたことでも有名だけど、そのために一箇所に定住するのではなく、常に旅をしながら刺激を受け新しいものをクリエイトしようとする姿が描かれている。
ボウイは日本を愛していたことでも知られている通り、日本でのショットもいくつか出てくる。
とても有名な「阪急電車の前で撮影されたモノクロの写真」
も出てきて、阪急電車には「梅田」という行き先表示もあって、大阪出身の僕は(全く関係ないんだけど)何故か誇らしくなったりして。

そしてこの映画では、音楽家としてのボウイだけではなく、画家、舞踏家、役者など自身を表現するためには手段を問わないアーティストとしての一面もあったのだということがとてもよく分かる。
実現はしなかったようだが、もし個展が開かれたとしたら出展したであろう西ベルリン滞在時に描いた市井の人々の肖像画が出てくるが、どれも独特のタッチでとても魅力的な作品ばかりだった。
ボウイのアート集とか出版されないのかな。

僕が青春時代にリアルタイムで聴いたのはやはり80年代の「Let's Dance」以降のボウイだけど、この映画でもその時のスタジアムライブの演奏も出てくる。
中年に差し掛かり、これも一種のミドルエイジ・クライシスなのか、もはやこれまでのように自分の趣味志向を全面に出して新しいものをクリエイトするのではなく、大衆が好むであろう「普通の」音楽をエンターテイナーに徹して演ってみてもいんじゃないか、と取り組んだ結果が超のつくほどの大ヒット。万人のスーパースターとなったボウイ。
しかし、それはそれで新しい苦悩の種を産んだのだろう。

ボウイは「たまたま」(というと語弊があるのかもだけど)大ヒットを出してしまったが、実際は前衛的でエクスペリメンタルな決してメインストリーム志向ではなかったんだな、ということも垣間見えて興味深かった。

ボウイといえば、この映画ではあまりフューチャーされなかったが、
CATVのA&Eで放送された特別番組『Live by Request A&E 2002』のボウイがとても好きだ。
視聴者からのリクエストを電話で受けるやり取りがあるのだが、(おそらく)素のボウイだと思われる、彼のとてもチャーミングな一面が見れて本当に良い。
時間があれば是非全編観て欲しいのだが、例えばこのシーン。
Georgeという5才の少年が「Ashes to Ashes」をリクエストするシーンだけど、なんて素敵な笑顔なんだろう。


いや、いくら書いても言い尽くせない。
そんなボウイの魅力がたっぷりとつまった、
「デヴィッド・ボウイ財団唯一の公式認定ドキュメンタリー」である本作。

きっとボウイもこういうカタチで作品としてまとめてもらうことを想定して自身のモノローグや映像アーカイブを山のように残していたんだろうな。
そしてこんな素晴らしい映像作品が作られて、とても喜んでいるんじゃないか、きっとそうに違いない。そんな素晴らしい×100000な作品でした。
もう1回観に行こうかな、そしてBlu-Rayが出たら絶対買おう!

<了>

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