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病院受診の時に気をつけたこと〜時間を有効に〜

息子が2歳で自閉症傾向と診断され、そこからは2か月に一度くらいの割合で医師からの診察を受けるようになった。
その頃は今よりもっとわからないことばかりで、私の頭はいつも混乱していた。
今日はその頃有効だった受診の時の記録について書いてみようと思う。

私が主治医のA先生に訊きたいことはいつも満載で、先生は30分の枠では足りないから、我が家の診察の時間はそっと2コマ枠にしていたというのは後で聞いた話で、先生も私の質問の多さに苦労されていたんだろうなと今になって思う。

だって、発達障害はこれまで自分の人生に全く関係してこなかった事柄で、でもそれによって息子が辛い想いをしているのではと思ったら、何でも知ってできることをしたい、そう思うのが親心ではないだろうか。
私は今でもあの頃の自分を思い出す時、無鉄砲だったいろいろなエピソードを半分呆れ、残りの半分はとても尊い経験として振り返っている。

毎回の受診時、私はA先生に山ほど質問した。
じっとしていられない息子をその間遊ばせてくれていた看護師さんも大変だったろうなと思う。
どれも、その時その時本当に困っていたことばかりで、訊いておかなくちゃ!という内容ばかりだった。
そしてその一つ一つは先生が簡単に説明できないような内容で、かつ対策がすぐに上げられることばかりでもなく、いつも時間が絶対的に足りなかった。

そんなある日、A先生がこう言った。

「お母さん、これから、できたら、コウちゃんの困りごと、質問したいこと、事前に私に送ってもらえませんか」

私はてっきり先生は私の鼻息の荒さに疲弊していると思っていた。
でもそう言ってもらえて、まだまだいろんなことを一緒に考えてくださる気持ちなんだな、と、とても嬉しかった。

それからの私は受診の前には必ず資料を作成した。
内容はこんな感じ。

◇こうちゃんができるようになったこと
◇こうちゃんが今困っていること・できないままのこと
◇全体を通して前回の受診から動きのあったこと
 (人との関わり、家での暮らしぶりなど)

これをA4一枚程度にして作成した。
毎回、A先生にメールすることと、それを先生の分と自分の分で印刷して持っていくことも忘れなかった。
先生はお忙しいから、もしかしたら印刷もできないかもしれない。
いろんな意味で時間を有効にしたかった。

この、「資料作成→受診」という流れは、私にとってはとても有効だった。
まず、受診前に自分の頭を整理できる。
少しずつ回を重ねていくごとに、前回のできなかったこと、そこからのできるようになったこと、困りごと、が時系列で見えるようになってくる。

作成した資料は、受診時に手元に置いて、それぞれの困りごとの横にコメントを入れていく。
そうすることで、帰ってきてからの振り返りもしやすかった。
そして先生への質問と、それに対していただいだアドバイスを、大元の資料に追加して資料を完成させる。

私はこうして出来上がった受診時の記録を、毎回、保育園の先生方や療育のアドバイスをくださっていた保健師さんにお渡しした。
息子の困りごとは、母親だけの困りごとでは決してなく、息子に関わる全ての人に共通だったから、資料はとても重宝された。

「お母さん、資料、こちらでもファイリングしてます。 内容も、みんなで目を通して、どうするとコウちゃんに一番いいかを考えていきますね」

保育園の先生もそう言ってくれた。
受診の前には園の先生方に訊ねてきて欲しいこともリサーチして、それも織り込んだ。

この資料作りは、息子の成長のペースに合わせてだんだん頻度こそ減ったものの、今もまだ細々と続いている。
今は、資料をお渡しする先が、保育園ではなく学校の先生に代わり、それから放課後デイサービスの先生方や、家に来てくださるヘルパーさんも加わった。

今も残るその資料、膨大な量である。

あの頃、A先生が提案してくれて、本当によかった。
限られた短い診療時間を有効に使えたし、しっかりポイントを絞って質問ができた。
そして、受診前に私の資料に目を通してくれていたA先生は、いつも的確な言葉、時には資料やグッズ、研修会の案内なども用意して対応してくれていた。

医師だから何を訊いてもすぐに答えてくれるだろう、と親は思いがちだけど、やはり先生の方にも時間が必要である。
それは、一般的にはこうだけど、この子の今の状況についてはどうかな?と考える時間。
そして、たくさんの引き出しの中から、どの引き出しのどのエピソードを紹介すると一番効果的かな、と考える時間。

ある時A先生がこう言った。

「私たち医師はね、ジェネラリストなんです。
いろんな引き出しや情報はジェネラリストとしての私たちの方がたくさん持ってます。
だけど、どれがお子さんにとって一番かはわからない。
だから、お子さんというスペシャルな存在にうまく沿う形でどうしたら物事が進むかを選択するのは、それはもうスペシャリストであるお父さん、お母さんの考えが一番確かなんです」

先生の言葉を借りれば、先生(ジェネラリスト)からたくさんのアドバイスをもらって、いろんな意見を統合した上で自分の意見を親(スペシャリスト)の立場から発信する。
自分では意図していなかったものの、私はこの受診記録を通してそういう流れをスムーズに作ることができていたのかもしれない。


当時の病院にはもう通っていないけれど、A先生には今でも時々近況の報告もする。
診察の時間はとても貴重で大事にしてはいたけれど、時々は泣いて話が続かないこともあったし、ただただ背中をトントンと叩いてなぐさめてもらったこともあった。

A先生はもう息子の主治医ではないけれど、息子は今度は、てんかんのことでA先生のご主人である「おと先生」にお世話になっている。
こうなってくるともう、A先生にとって息子の経過を知ることは、親戚の子の成長を知るくらいの域に達してしまっているかもしれない…笑。

(おと先生とのエピソードはこちらです。よかったらご覧ください)


もうすぐ息子はてんかんの精密検査で遠方の病院にしばし入院することになっている。
思春期ど真ん中で、てんかんも発症して、心も体も不安定なこうちゃん。
けれどきっとまたいい出会いに恵まれて、たくさん光がさしてくる。
そう願う。


最近ではピンポイントで療育関係者の方に情報を共有させてもらうことも増えました。
これは作業療法の先生に教わったことをまとめた資料です。
いつか私がおばあさんになったら、こんな資料こそが私の生きた証になるのかなぁ…なんて。

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