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『わたしってやっぱりもってるよね』


「あぁもしもしハヅキちゃん?ボンジュール」

「もしもし、ぼんじゅーる」

「今月も良い子にしてたかな?」

「うん、こんげつもいいこにしてたよ」

「それならパパは安心だ」

「ぱぱあんしんうれしい!」

「じゃあまた来月電話するからね」

「うん!」

「良い子でいるんだよオゥルヴォワァ」

「おーるぼわ」


月に一度パパから電話があって

小さい頃のわたしは

それがすごくすごく楽しみで




パパは顔も見たことないんだけど

ママが言うにはとってもイケメンで

お仕事で世界中を飛び回ってるから

なかなかおうちに帰って来られないって


よく知らない言葉で挨拶されるから

ママになぁにってきいてみたら

フランス語だよって言われて

それからわたしは

パパからの電話を

フランスでんわって呼んでたんだ


フランスでんわは

わたしが高校を卒業するまで

律儀に毎月かかってきていた


ママが言うにはわたしたちの生活費も

充分すぎるくらいに

送られてきていたって


そしてわたしが高校を卒業して

新しい道に進むっていうその春に

ママから真相を聞いたの


その頃にはわたしもうすうす

事情は察していたのだけど


パパは世界的に有名な俳優さんで

ママとはその昔

秘密の関係にあって


だからわたしも秘密の存在




高校を卒業したわたしは

モデル事務所へエントリーして


それなりに努力もしたつもりだけど

運も重なってデビュー直後に

世界中からオファーをいただける

そんな存在になることができたの


わたしってやっぱりもってるよね


パパがいるはずのフランスに

いまは住んでいる


パパを探すつもりは

さらさらないけどね


でもわたしパパの子なんだって

しみじみ思うのは


産んだ直後に彼と別れて

まともに抱いたこともない

幼い息子の存在


妙なパパとの縁よね

フレンチコネクションって

こころのなかでひそかに呼んでる


元彼とのことや息子のことは

これまでもこれからも公にできないけど


でも息子が物心ついたら

わたしがパパにしてもらったように

月に一回くらいは

連絡してあげようかな


昔と違っていまはL1NEとかあるから

電話じゃなくても

いつでもカンタンに連絡できるもんね


--


あの野郎ぉ…

ぜったい許さない


わたしは元彼を

ぜったい許さないよ


あいつったら

わたしと息子のL1NEのやりとりを

スクショして

週刊誌に売りやがった

わざわざフランスまで記者が来たよ


そういえばお金がないとか言ってたね

たんまり養育費は送ってるのに


ほんっと最低な奴


あんな奴にハマりすぎずにわたし

早々にいまの旦那とくっついて

ほんっと正解だったわ


わたしってやっぱりもってるよね
















































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