『送別会にて』
嫌われている
俺は上司から
とても嫌われている
と思っている
俺の挨拶だけ無視をされる
なんてのはまぁ良い
俺の提出した書類だけ
いやにケチをつけてくるし
承認も遅い
だから仕事に影響がある
俺が嫌われるだけなら
別にかまわない
ただつまりは俺の部下まで
そのあおりを受けるということ
「正解は”うさぎ”でしたー!Aテーブルのみなさんおつかれさまでした!ではお次、Bテーブル参りましょう」
きょうの夕方だってなんなんだ
あしたの朝までに
膨大なデータをまとめろって
とてもじゃないけど処理しきれない量
この送別会が終わったら
俺は会社に戻って
それでたぶん徹夜になる
酒なんか飲んでられないよな
「山田さん、ほら、行きますよ!」
あ
Bテーブルの出番か
ったくめんどうだな
「課長ぜひおねがいしますよ!私たちで当てるので!」
えなに?
なにすればいいの?
「ちょっと課長なに見てたんですか、尻文字ですよ」
え尻
「やったことないんですか?お尻で文字書いて当てるクイズ」
あぁそれか
コーラで乾杯してからずっと
上司からの理不尽な扱いのことで
思い詰めていたものだから
ゲームのことなどまったく
見えていなかった
「それではBテーブルの山田課長、お尻で書いていただく文字をこのボックスから引いてください」
さっさと終わらせよう
俺は箱のなかに手を伸ばし
一枚の紙を引く
「ご自身がご覧になったら、司会の私だけにお見せください…」
「…あぁなるほど、これは難しい…山田課長にBテーブルメンバーのみなさんがんばってください!」
こんなもん尻文字で
どうやって書けって
しかも皮肉なことに
ソフトドリンクってな
やっぱり俺だけ
嫌われているに違いないよ