『さぼりうむぷらざ'88』
♪アタッシュケースに漫画を詰めて
♪二十四時間いつでもおいで
勇ましくも軽快なBGMが流れる
♪サボリーマァン
♪サボリーマァン
♪ジャパニーィズサボリーマァン
さぼりうむぷらざ'88は実に良い
モーレツ働きマンになれない
なるつもりもない
サボリーマンにとっての
このうえない憩いの場
漫画を詰めておいでと
BGMでは歌っているが
来てみれば実際に
漫画などは飽きるほど置いてあり
ジュースやコーヒーは飲み放題
公共施設なのにサービスが良すぎる
家に居ても家族がやかましい
邪魔者扱いされるだけ
会社には朝いったん顔を出して
外回りといってはココへ来て
夕方会社にちょっと寄って
それで帰宅する
そんな毎日
給料は入ってくる
そんなに必要ないのに
毎月しっかり振り込まれる
あぁ好景気さまさま
バブルって素晴らしい…
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閉館から月日は流れて
かつての賑わいは面影もなく
建物は朽ち果て
庭は雑草が生い茂っている
解体費用すら捻出されない
ハコもの行政の成れの果て
バブルとともに弾け飛んだ
夢の空間
さぼりうむぷらざ'88
廃墟マニアのある人物が侵入したところ
無数の白骨死体が発見された
その肩幅の広いスーツ姿から
当時から行方不明になっていた
サボリーマンたちと思われた
その姿はまるで
営業回りをサボって
居眠りをしているよう
不思議なことに捜索願いは
一件も出ていなかった
遺族たちは
バブル崩壊後の不景気のもと
行方知れずのまま死亡扱いになった
亭主の保険金で
つつましく暮らしてきたようだ
亭主白骨
留守のまま
行政によると
費用がかさむゆえ
警察とも協議のうえで
現場は放っておくことになったという