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『善意が善意を呼び』


砂っぽい丘陵地帯を越えて

ようやく市街地が見えてきた


水をグイっと喉へ流し込んで

ペットボトルをくしゃっとする


陽気になってアクセルを踏み込む

助手席まで埋め尽くした荷物が揺れる


「こんなにたくさんサッカーボールを、どうするんだ」


迂闊だった

検問の存在を

すっかり失念していた


「ここを通すにはボールを全部切り裂いて置いていくか、あるいは…」


街の子供たちに

少しでも娯楽をとの思いから

サッカーボールを届けようと


しかし門番の兵士にそんな

”言い訳”は通用するわけもなく

何かの運び屋だと思い込まれている


「あるいは、まぁそのあれだ、あれ…」


そんな金はない

そもそもサッカーボールだって

善意が善意を呼び

ようやくかき集めた資金でなんとか


仕方がないので

街にいる仲間に連絡をとり

子供たちを

この検問所に集めることにした


まもなくそこは

即席のグラウンドとなり

街の子供たち

俺たちボランティア

それと

検問の兵士たち

3チームによる

対抗戦が始まった


兵隊さんもサッカーしたかったんだよ


そういう世界も

たまにはあるんだよね








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