『クラゲはたいしたことないらしい』

私服に着替えて

タイムカードをガション

ロッカーを後にする

通路の自販機で

ブラックコーヒーをチャリン

朝日が眩しい

駅までの道すがら

イルカショー目当ての

家族連れやカップルとすれ違う

俺は水族館の警備をしているけど

ほぼ夜勤専門だから

イルカショーは見たことがなくて

暗闇でライトアップされて

幻想的なクラゲの水槽も

営業時間外は

本当にただの真っ暗な空間

休みの日に遊びに来てみようか

考えたこともあったが

しかし何が悲しくて勤務先に

他の現場に移ったら

来てみてもいいかな

そういえばここのチケット

割と高いはず

手が出ないって

そんなことを思って後日

俺の時給より

イルカの時給のほうが

もしかしてイイんですかね

なんて冗談を

先輩に話してみたら

イルカはスターだぞ

スターが時給雇われなもんかとのこと

じゃあ正社員ですかね契約社員ですかね

と聞いてみたら

多分フリーランスだって

なんだイルカも不安定じゃんって

ちょっとだけ勝ち誇ってしまった俺

ちなみに先輩曰く

クラゲはたいしたことないらしい

でも根拠がわかんねえから

クラゲに謝ったほうがいいよ