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『赤面人形』


その人形は

助平な言動を耳にしたり

破廉恥な行動を目にしたりすると

顔を真っ赤にするという機能があり


ある新婚夫婦が知人から

結婚祝いの品として

その人形を貰い受けた


ふつうそんなものを貰ったら

怒るのが相場かもしれないが


めずらしもの好きのこの夫婦

おもしろそうだといって

寝室のベッドの淵に

腰かけさせたんだとか


どんなふうに

赤面するんだろう


期待に胸や色々な箇所を

膨らませる夫婦




さて期待の夜が更けた


ところがここで若夫婦

重要なことに気づく


なぜなら彼らにとって

寝室はまさに眠るためだけの部屋


男女の営みは

むしろリビングや風呂

あるいはマンションの非常階段など

そういった場所で行うのを

常としていた


その晩は気分の赴くまま

玄関先でコトを楽しんだ夫婦


赤面人形の存在などすっかり忘れ

シャワーを浴びて

リビングに戻る


あぁそうだ

せっかくもらった赤面人形

これじゃあ意味がない


リビングにでも

置いておこうか


明日はぜひここで


なんてことを話し合っていたら


いつしか会話から

二回戦目の様相を呈して




夫婦は互いに見つめ合いつつも

赤面人形のほうをチラチラと


ところがどんなに卑猥でも

いっこうに顔を赤らめることはなく


そのままコトが済んでしまった


不良品なのか?

あるいはこの程度では

赤面人形の求める刺激には

足りなかったのか?


疑問に思った夫婦は

人形を贈ってくれた知り合いに

連絡を入れてみた


1コールですぐに電話に出る相手

なぜかその電話口の息遣いは荒くて


赤面人形の顔をよく見れば

耳にはマイクのような

目はカメラのような


なるほどな


ふつうならそこで

激怒するところだが


めずらしもの好きのこの夫婦

まあそういうのも悪くないよ

減るもんじゃないし

むしろ喜んでもらいたいねって


これからもよろしくって

電話口で知人に伝えたものの


分かってやられたら

それはそれで萎えるって

知人が言うもんだから


これはいったい

どうしたものかって

悩んじゃう羽目になったってさ

なにそれ