『Y子は憧れていた』
Y子は憧れていた
Y子は
コンビニはおろか
ガソリンスタンドさえもない
寒村に生まれ
そして村を出ることなく
そろそろ四十を迎える
親戚が多い
村のほとんどすべてが
縁者と言っても過言ではない
村の状況は
限界集落のそれだから
Y子より若い世代は
ほとんど都会へ旅立ち
年寄りばかりが残る
まともな病院がないこともあり
自宅で床に臥すのが当たり前
まともに治療もされず
そのうち衰弱して逝ってしまうのが
おおよそのところだった
Y子はほとほと
嫌気が差していた
思えば最後は
忘れもしない
小学校5年生の冬
いまは立派な村議会の
議員さんになった
幼馴染のS君に出したっけな
年賀状
それ以来
Y子は年賀状が出せない
来る年も
その次に来る年も
毎年喪中
喪中欠礼
あぁめでたい年賀状を
もう一度書いてみたい
親戚ばかり
年寄りだらけの
限界集落で