『いっぽうワタクシ田中は』
「ふたりとも11月は、行くの?」
きょうの昼休み
こんな係長からの問いかけに
「はい!もちろんそのつもりです」
新入社員の弥生さんが
ハキハキと答えて
「やっぱり行くよねぇ!」
「はい!だって三年ぶりの開催ですから」
僕には卯月係長の問いかけが
何を指しているのかわからず
恐る恐る
逆質問をしてみた
そしたら
「田中くん、11月の祭を忘れるなんて!」
「田中先輩…しっかりしてください!」
まつり?
係長どころか
弥生さんにまで
いじられる始末
ほんとうになんのことだか
わからなかったので
僕はさっそく
”11月 まつり”で
ググってみたけど
日本中で
いろいろなまつりが
行われているみたいで
どれのことだか
検討もつかない
「田中くんさぁ、もしかして…」
「田中先輩…もしかして…」
係長と弥生さんがふたりして
僕へ疑いのまなざしを向ける
「叶えたこと、ないだろ!?」
「叶えたこと…ないんですか!?」
叶えるってなんなんだよ!
声に出して言いたかったが
多勢に無勢
上司と新入社員相手
そういうわけにいかなかった
「弥生さん、田中くんはきっと…」
「そう…みたいですね…」
「田中くん、君は…」
「先輩…神様じゃないんですね!?」
仕事から帰宅して
改めて入念に調べてみると
11月に島根県の出雲大社で
日本中の神様が一同に会する
まつりがあるようだ
卯月係長と弥生さんはどうやら
八百万いるという
神様たちの
そのメンバーらしい
いっぽうワタクシ田中は
神様でもなんでもない
一般人です
ですからすいませんが
なんにも叶えて
あげられません
ところでどうして
卯月係長と弥生さんは
神様なのに
会社員をやっているんだ?
僕が神様だったらぜったいに
働いたりしないけどね
(あとがき)
今回もひと言お題から「神じゃない者」を取り上げさせていただきました。お題くださったももまろさん、書きごたえのあるお題たいへん嬉しいです。
ありがとうございました。
ちなみにトップの画像は私が実際に撮った出雲大社の大しめ縄です。すんごい迫力。