『「まぁ簡単にいえば、バールのようなもので…」』
「まぁ簡単にいえば、バールのようなもので…」
いまどきありえない
あまりに危ない試みだ
「夜中なら、だいじょぶだろ?」
二十年来の親友の呼びかけに
俺は困惑した
「まとまったカネが要るわけよ」
もちろんカネは欲しい
しかし
俺にはそんなこと…
「なにかあったときは、俺が責任を」
どう責任を取るというのだ
親友といえども
それはそれ
「それならせめて、後片付けだけでも」
俺は頑なに首を横に振った
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脱サラして
退職金をつぎ込んで
こだわりのワインと
気の利いたつまみのある
バールのようなものを
出したいと
親友は訴える
開業資金が
ちょっとだけ足りないのと
店番がひとりでは
不安だというので
俺に相談をもちかけてきたわけ
すまんが俺は
カネは貸せないし
昼間の仕事で
手一杯だ
バールのような店
せいぜいワンオペで
頑張ってくれ