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『「Nが吹聴しているように、』


ゴルフなんてやりたくないのに

上司に半ば無理やり


クラブは貸すし

家まで迎えに行く

もちろん全部タダでって


なぜだか俺は気に入られている

仕事でも目をかけてもらってるから

無碍にもできない


机を並べている同期のNは

出世欲があるのかなんなのか


ゴルフだって

好きかどうかはさておき

やる気があるみたい


だけど上司には

声を掛けてもらえないようで


俺はNから妬まれて

昼飯で同席したと思えば

どんな汚い手口を使ったんだと

詰問の嵐が吹いた


いや知らんよ

ていう話


Nはがんばって上司に取り入ろうと

ゴマをすりすりしているようだけど

いっぽう俺は何も

媚びを売っていないし


面倒だから

代われるものなら

代わってやりたいよ


Nは泣きだして

田舎からがんばって上京して

実家も貧しいからバイトで学費を賄い

それでそれで

稼ぎがいいとされているウチの会社に

なんとか就職して


そしたら

ぬくぬく都会育ちのボンボン同期

つまり俺のこと

そんなやつが

上司に気に入られて

自分はゾンザイに扱われていると


俺は俺で

存在を否定されたような心持ち

ハッキリ言って

良い気分ではなかったので

その場は切り上げた


その後も

事あるごとに

Nは俺への妬みを

ぶちまけてくる


しまいにNは

他の同僚へ

俺の悪評をばら撒く始末


それはそれは

とても幼稚な内容で


俺の足首と二の腕に

タトゥーが入っているとか

そんな噂だった


ところがこれが…

噂じゃないんだよなぁ


実際に俺は

学生時代の若気の至りで

足首と二の腕に

タトゥーを入れていた


なんで知ってんの

怖いわ


まぁしかし考え方を変えてみると

これは使えると思って

さっそく上司に独白したわけ


「Nが吹聴しているように、私にはタトゥーが…」


上司は驚く様子もなく

俺の目を見てこう言葉を返してきた


「うん知ってる!そんなとこも含めてスキ」


キモすぎて

鳥肌が立った


今すぐ人事部に通報して

処分をしてもらおうと

俺は決意した


--


ところで

上司の性別や年代は

いっさい記述していませんが

読者のあなたは

どんな上司を

想像しましたか?







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