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『「痛ぁぁい!」』


目を覚ましたら


一面の風景が

(といっても自分の部屋)

ぜんぶドットというか


立方体すなわちキューブの

集合体になってて


あの粗いブロックの…

そうマインクラフトみたいな


モノに触った感覚もまんまそれ


っていうか俺自身の身体もか?


やべえよやべえよ


とりあえずスマホを


ってもう解像度が粗すぎて

液晶画面はたった4色

アプリがどれだかわからない


適当に黄色いやつを押す

(指もアプリと同じ大きさ)


4ドットの画面

上の2つは黄色のまま

下の2つは白くなって…


ダメだこれ


けっきょくスマホは

使いものにならないってこと


外を見てみよう


カタカタと

カーテン(硬い)を開ける


あれ?

期待にそぐわず

部屋の外はこれまで通り

高解像度(っていうの?)


じゃあつまり

不便になったのは

俺ひとりってこと?


玄関のベルが鳴る


あ彼女きた


やべえよやべえよ


俺の身体どうなってんだろ


急いで鏡を見る

あぁやっぱ全身ドットじゃん

キューブの集合体じゃん


居留守を使ってもおかしいし

他者のチカラがあれば

なんとかなると思って

俺は玄関を開けた


彼女は取り立てて

リアクションもなく

ふだんと同じ態度だったから

(もしかして俺の思い違いか?)


そのまま

自分の身体と部屋の

異変には触れず


彼女が買ってきた酒を飲み

つまみを食べて

(手がドットだから不自由)


映画を一本観て

(テレビ画面の液晶はたった8分割)


そろそろお風呂入ってくるねと

彼女がいう


すっかり調子を取り戻した俺は


いつものように

少しあとから

彼女を追いかけて風呂場へ




「痛ぁぁい!」

「ご、ごめん…」

「俺君、なんかいつもと違うよぅ」

「そ、そうかな…?」

「硬いよ…硬すぎだって…」

「むぅ…」




やっぱり俺は

キューブの集合体のようだ


これからどうしよ…







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