『文字通りスリープモードになり』

誰にも言っていないけど

私は人造人間

見た目はごく平凡な

日本人男性の顔と体つき

知能と運動神経は

中の中

ほんとうは食事はいらないし

恋愛にも興味がないのだけど

社会生活を円滑に

営めるように

消化機能や

生殖機能もついている

私のほんとうのエネルギーは

電気

１日３時間の充電で

２０時間以上は持つから

昼間の稼業はサラリーマン

会社から帰宅すると私は

文字通りスリープモードになり

充電しながら朝を迎える

タイマーで決まった時刻に

起動するようにできていて

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たいくつだ

だって恋愛も食事も

機能があるだけで

楽しめるようには

できていないんだから

能力も中の中とあれば

出世も見込めない

このまま私は

８０年の減価償却が終わり

廃品にされてしまうのか

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同僚の須永君を

自宅に呼んだ

須永君とは普段から

酒を酌み交わしたり

休日にゴルフに行ったりする仲

そんなに親しいのにそういえば

自宅に招いたことがないと思い

ちょっとした娯楽ついでに

誘ってみたというわけ

鍋でもつつきながら

仕事のうっぷんを晴らそうと

そういう計画

金曜の仕事が終わって

スーパーに寄り酒と食材を買う

無味無臭の寄せ鍋を腹に貯め

消毒がわりのビールを流し込み

須永君との話に花が咲いた

時計を気にしながら

ソワソワしはじめた須永君に

きょうは遠慮なく

うちに泊まっていけよと

その言葉に甘えるかと須永君

しめしめ

私は首の後ろの

スイッチを切った

須永君の驚く様を観たいから

いくつか隠しカメラを

仕掛けてある

須永君もうしわけない

これくらいの娯楽は

ゆるしてくれよな

朝６時には

きちんと起きるから