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『実家が太い』


実家が太い


なんなら太すぎて

逆に不自由まである


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なんだか自分は友達とは違うって

気づき始めたのは小学校高学年から


親の意向で公立の学校に通ったから

その差は傍目から見て

歴然としていたと思う


友達が連れ立って下校するのを

羨みながら僕は

お迎えの車に乗って

(お察しの通り黒塗りの高級車)


そのまま帰宅して家庭教師


受験勉強と

ヴァイオリンと

体操と

日替わりで


小さいうちは

いろんな友達を作ってという

親の思いは

そんな生活だったから

けっきょくできずじまい


休み時間も

なんだか僕は孤立して

誰とも喋らなかった


たいていの場合

クラスではいじめがあって

幸いにもその

ターゲットにならなかったのが

せめてもの救いかな


しかし僕は

罪深い傍観者だったと思う


中学はいよいよ満を持して

名門の私立へ

エスカレーター式で大学まで


中学高校とだいぶ窮屈な生活を

強いられていたから

上京してようやく羽根を伸ばせると

思い込んでいた


ところがざんねんなことに

実家が太いせいで

自宅から東京まで

っていうか

大学のキャンパスの地下まで

ぶっといパイプが敷かれていて


黒塗りの高級車が300km/hで飛ばせば

45分で着いちゃうっていう

(ちなみにそこは私道なので)


とはいえサークルに入って

友人というものが

初めてできた


そんな矢先に言われたこと


「おまえいつも地下豪から出てくるよな」


それから僕のあだ名は

”投降兵”になって


小学生じゃないから

石を投げつけられることはないけど

なんだか卑屈になって

そのまま陰キャ生活を

送ってます


実家が太けりゃ

いいってもんじゃないよほんと




(あとがき)

すでにお察しと思いますが、「実家が太い」これを言いたかっただけなんです。ゆるしてください。





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