『じゃがいもとたまねぎを育ててるって』
じゃがいもとたまねぎが
大量に届いた
会社を辞めて
田舎暮らしを始めた
S先輩から
カレーでもつくってください
って手紙が添えられてて
S先輩はニューヨーク生まれ
シンガポール育ち
仕事はずっと東京だったらしい
なかなかそういう方の移住って
うまくいかないともきく
ただS先輩の場合は
財源は充分に確保したうえで
スローライフを楽しんでいるらしい
なんたっていま
僕の住んでいるマンションは
S先輩がオーナーなわけで
僕が自炊しないこと
S先輩は知ってるはずなんだがな
じゃがいもとたまねぎは
実家に転送しよう
なんて思った矢先に
母親からの電話が鳴る
めずらしい
父親とふたりで遊びに来たって
もう最寄駅にいるって
マジかよ
まぁ予定もないからいいんだけど
じゃがいもとたまねぎの話をしたら
じゃあカレーを作ってあげると母親
かろうじて調理器具はあるから
スーパーで肉と人参とルウを買って
月並みな表現だけど
久々に食べた母親の味っていう
なんだか照れくさくも懐かしい
あしたもあさっても困らないほどに
大量のカレー
半分くらいは冷凍した
そうはいってもなお
じゃがいもとたまねぎは
余っているから
持って帰らないかと聞いたら
それまで黙ってた父親が
じつは自分も家庭菜園を始めたって
それでちょうど
じゃがいもとたまねぎを育ててるって
もとから田舎暮らしとはいえ
父親がそういう農業とか
畑仕事とかに興味があるなんて
微塵も感じたことがなかったから
とっても意外で
それで収穫のほうはどうなのって
きいてみたら
S先輩とは対照的に
うまくいかないんだそう
S先輩のところに
弟子入りしてみたらって
そんな冗談を言ってみたら
真に受けたみたいで
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それでいま父親
S先輩の自宅に寝泊まりして
農業学んでる
暇になった母親は
ひとりでのんびりと
東南アジア周遊するって
父親も母親もS先輩も
僕より歳上なのに
なんだか若々しいな
まぁいいやアニメ観よ…
あっコーラなくなってる…
そとは雨かぁ…