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『「現代を象徴するような、多様的な』
「事件当日の○月○日午後11時頃。K村Y美さんあなたは、被害者Sさんの自宅アパート前にて、仕事から帰宅するSさんを待ち構え、自分以外に女がいるんじゃないかと問い詰めた。これには目撃情報もありますし、アパート入口の防犯カメラにも映っていた。間違いありませんね?」
「はい…間違いありません…」
「その後、人目をはばかったSさんが自室に促した。室内では更なる口論が繰り広げられ、やがてカッとなったあなたは、キッチンにあった包丁でSさんを刺殺した。これも事実に相違ないですか?」
「それは…」
「勇気のいることです。時間を差し上げましょう」
「…」
「ちなみに、証拠は動きませんよ」
「あの、いいですか…?」
「もちろんどうぞ」
「包丁には私の指紋か何か…ついていましたか…?」
「ほほぉ…さすがですねえ…」
「指紋、あったんですか?」
「この事件は突発的に見えて実に計画的です。あなたはあの晩、一切指紋を残さないように手袋をはめたまま室内で過ごしていました。よって包丁にも指紋は残っていませんでしたよ」
「それなら直接的な証拠は…」
「いいえK村さん、あなたは普段から基本的に料理をすることがない。事件の3日前にもSさん宅を訪れているがコンビニで夕食を買ってきている。その前は宅配で…つまりあなたがSさん宅の包丁を使うことはないですね?」
「なぜそんなことまで…」
「すべてお見通しですよ。だからあえてこうやって包丁と指紋のくだりを誘発して、証拠がないように思わせているのでしょう」
「…」
「いかがですか?」
「…」
「ラクになりましょう」
「…」
「さぁ、怖くはありませんよ」
「怖いのはこっちだわ!」
「!」
「ずっと、ずっと怖かったんだから!」
「お、落ち着いて…」
「他に女がいるのかと思ったらそうじゃなさそうだし、なんなの?なんなのいったい!」
「現代を象徴するような、多様的な痴情のもつれでしたね」
「他人事なの!?」
「そ、それは…」
「あんたがこそこそS君ちに侵入して、いやがらせで女モノの下着やコスメ置いたりして!今回の捜査だってあんたがS君に内緒で部屋につけた隠しカメラのおかげでしょ!?」
「め、面目ない…」
「ほんっと馬鹿みたい!S君があんたみたいなやつと恋愛関係にあったなんて…いや構わないけど、なんだか嫉妬して損した!」
「だって…好きで好きで…仕方なかったんだし…」
「好きな人の家に隠しカメラつけるとか、立派な犯罪だから!」
「そ、そこはひとつ…内密に…あぁ書記のキミ!ここは記録不要だ」
「もう逮捕でもなんでもしてよ!そのかわりあんたもね!」
「下着もコスメもいやがらせじゃなくてアタシの趣味だし!」
「知らんてば!」
「きゅうん」